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ま
ちかごろ
近年、地震だの火災、また山崩れ、洪水などが頻々として起るのは、全
かみ
く天より上役人を戒めたまふ処で、彼等上役人の中には、賄賂を取つたり、
道徳仁義を弁へざる身分で以つて大役を勤め、従来諸役年貢に百姓等を苦
しめ、其上にまだ過分の用金を申附ける事もある、今日の如き米価の騰貴
ちうおう
せし折から、上役人には一向に下々の者の難渋には頓着をしない、紂王長
夜の酒盛も同じ事、依つて蟄居の吾等、もはや堪忍なりがたく、天下の為
と存じ、此度有志の者と申合せ、不正なる役人と、大阪市中の金持の町人
共を誅戮に及び、右の者等の貯へて居る処の金品米穀を、分配して遣るか
ら、いつにても大阪市中に騒動の起つたと聞いたら、道の遠きを厭はず、
いろ/\
一刻も早く大阪へ向けて、馳せ来たれと云ふやうな事から、まだ/\種々
もつとも したゝ
正理至極の事を書認め、其但し書きに、此書附、小前の者へは、道場坊主、
或は医者等より篤と読み聞かせ申すべく候、もし庄屋年寄、眼前の禍ひを
おそ こふむり
畏れ、一己に隠し置き候はゞ、追つて屹度其罪を行ふべく候、蒙天命、致
ひのとゝり なにがし
天誅候、 天保八丁酉月日 、其月日の下の処へ 某として、宛名は、摂河
泉播村村庄屋年寄百姓、並に小前百姓共へ、と記しました、長文のものを
草しまして、一同の者に見せました、そこで一味徒党の人々は、逐一の此
檄文を読み終りまして、是れから此檄文を更に清書して、印刷をさせる事
に相成りました。
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石崎東国
『大塩平八郎伝』
その109
幸田成友『大塩平八郎』
その98
「大 塩 檄 文」
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