Я[大塩の乱 資料館]Я
2016.4.7

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』 その10

国府犀東(1873-1950)

(偉人史叢 8)裳華書房  1896

◇禁転載◇

獅嬰孩時と幼年時代(3)

管理人註


実用的学
術を期す




















幾甸に於
ける余姚
学風の樹
立






























中井氏の
影響を受
く

渠が王陽明の知行合一説に感服して措かず、竟に之を禁じて自家立脚の地と                        ・・・・・・・・・・・ なすに至りたる者、又た怪むに足るものなきなり、渠れの強固なる意志は直 ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・ 覚的研究法に、尤も便なりしに相違なく、又た独断的演繹法に、尤も適せる ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ ことも、其の人となりに於いて、当然の結果なるが如し、 然れども、其の何人の門に入りて、教を承け道を講じ、又た其の如何にして 姚江の学を祖述するに至りたるかは、今之を知るに由なし、江戸は今や方さ に朱子学の中心点として、林信徴、尾藤良任、柴野邦彦等、覇府政治の名教 思想を維持しつゝあるなり、而して京坂の地方には、嘗て近江に中江藤樹あ              ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ り、備前に熊沢蕃山あり、余姚の学風は、夙に此の地方に樹立せられ、扶植 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ せられしなり、関東の儒と、関西の儒と、業已に画然たる大庭逕を有せしな り、関東に於ては、朱子学の一派、其の勢力を振ひつゝある外、但だ佐藤坦 の稍彩色を異にするを見るあるのみ、天下は滔々として、唯朱子学派の独り 擅にする所となり畢る、而かも関西に於ては、京師に皆川愿あり、大坂に中                          ・・・・・・・・・ 井竹山、中井履軒あり、共に醇乎たる朱子学派あらず、特に大坂の両中井に ・・・・  ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○  ・・・・・・ ・・・・・・・・・ 至つては、空理を軽じて実用を重むじ、自ら標幟して、我が学は朱子にあら ・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ず陸子にあらず、李王にあらず、陽明にあらずと言ひ、蔚然として別に一家 ・・・・・ をなしたり、然らば則はち両中井の学風は、固より朱子学派に属すべきもの            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ にあらざるべし、而して中井氏の懐徳書院が京坂地方道学の中心たりしの事 ・・・・・ ・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 実に賭るも、竹山、履軒の学風が、如何に関西に於ける人才の名教思想と問 ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ 学方針とに、強大なる影響を及ぼせしかの、一を味ふに於いて余あるべし、 而して竹山の歿せるは、文化元年、平八郎方さに十一歳の時にして、履軒の 逝けるは、文化十三年、平八郎方さに二十三歳の時に当る、然らば則はち、 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 平八郎たとへ中井の門に入らずとするも、渠れが大に中井氏の学風に支配さ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ れたるものあること固より疑を容るゝの余地なし、而して平八郎は、齢未だ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 二十ならずして早く、吏務に鞅掌するに至りたりと云へば、其の実用を主と ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ するの学風を励むで迎へたるべきこと、亦た明白なる事理に属す、平八郎は ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 蓋し、彼の如き境遇と、此の如き影響とを受けて、竟に余姚の学説を祖述し、 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 拡充するに至りたるならむか、

幸田成友
『大塩平八郎』
 その11











方(ま)さに

名教
儒教



幾甸
(きてん)

業已(すで)に

佐藤坦
佐藤一斎

稍(やや)

滔々
(とうとう)


(ほしいまま)

畢(おわ)る

皆川愿
皆川淇園

醇乎
(じゅんこ)
まじりけが
なく純粋な
さま

標幟
(ひょうじ)
しるし

蔚然
(うつぜん)
物事の盛ん
なさま





鞅掌
(おうしょう)
忙しく立ち
働いて暇の
ないこと

励(はげ)む


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