Я[大塩の乱 資料館]Я
2016.4.13

玄関へ

「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』 その14

国府犀東(1873-1950)

(偉人史叢 8)裳華書房  1896

◇禁転載◇

英雄老と英雄漢(3)

管理人註

















秋鷹に
繋かれ龍
馬桟豆に
伏す



























平八守重
に別る

両雄の挙止、宛然(骨動き肉飛はむする心地す)守重も守重なり、其の尊大 に搆へるもあまり倨慢なり、平八も平八なり、其の大胆不敵に振舞ふも、あ          ・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・・ まりに傲岸に過ぐ、倨慢なる待遇と、傲岸なる酬礼と、此の間両雄の風采気 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 格躍として人を襲ふものあるを覚ゆ                                  ・ 守重と曰ひ、平八と曰ふ、共に是れ一世の異才、一代の翹礎なり、而かも一 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ ・ つは旗を奪ひ将に擒にし、楼蘭を斬り匈奴を駆るの手を収めて、抂けて、簿 ・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 書堆裏に跼蹐し、一つは太虚を説き、良知を唱へ聖賢を以つて自ら任じ、天 ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 下に横行闊歩するの、鳶の如く鷹の如き肩を低れて空しく刀筆の末に齷齪た ・  ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ り、鳳凰に在り、鸞鶴樊に在り、秋鷹に繋がれ、龍馬桟豆に伏す、閲閥                                 ○ ○ ○ と格式との重関は、異才飛躍の途を杜塞し、翹楚奮進の前を遮断す、秋鶻霄 ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ を凌ぐ、搏たすむは止まず、猛虎嵎を負ふ、吼えすむは已ます、之を羅して ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ 鉄籠に投じ、之を捕へて鉄柵に入れ、搏たざらしめ、吼えざらしむ、渠れ豈 ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ に、煩悶懊悩の極竟に狂し、乱して鉄籠を裂き、鉄柵を劈いて大飛躍をなし、 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 大奮進をなすなきを知らむや、守重は、竟に轗軻不遇、其の驚悍豪宕の資を 抱きながら、空しく江州謫処の露と消へたりと雖ども、平八は懣憤激ミ、竟 に大飛躍をなし、大奮前をなし、為めに鉄籠をも、鉄柵をも、之を裂き、之 を劈きたり、両雄其の末路を同ふせずと雖ども、其の有為の資、用ふるに処 なくして、畢るに至つては、千古の遺憾なり、万秋の遺恨なり、 而して幾もなくして守重は、勤方不相応の廉を以つて、文政四年竟に小普          ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ 請入に貶せらる、是に於いて、平八郎は、千載の知己たる英雄と、涙を呑 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ むで別れざるべからざるに至れり、此の年平八齢二十八、     ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆     毎日之江上。此日雨。偶成     大塩後素  東崖三里不山。雲雨濠々咫尺間。忽喜塊西起。  明朝依旧見蒼顔。     常望北山登。一日如願踏其最高。偶得之  最高登尽世縁踈。眼大襟開指市閭。始信東山小魯興。  蜂蟻蛭是人居。

雄山閣編
「大塩平八郎」
その10

倨慢(きょまん)
傲慢

(とりこ)

堆裏(たいり)
うずたかく山
積みとなって
いる

跼蹐(きょくせき)
非常におそれ
るさま

齷齪(あくせく)

鸞鶴(らくかく)

(まがき)

桟豆(さんとう)

翹楚(ぎょうそ)
才能が衆にぬ
きんでてすぐ
れていること

秋鶻(はやぶさ)

(そら)

搏(う)たす

嵎(くま)
山の折れ曲がっ
たところ

劈(つんざ)いて

轗軻不遇
(かんかふぐう)
世に受け入れら
れず行き悩むさ
ま

豪宕(ごうとう)
豪放

謫処
(たくしょ)
罪を得て流さ
れた所



大塩中斎
「詩 集
 


『大塩平八郎』目次/その13/その15

「大塩の乱関係論文集」目次

玄関へ