大虚は理
想なり
陽明の体
用論
良知及び
良知的発
用流行
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暫らく其の学説の主脳とする、五大綱目に就いて詳論せしめよ、
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(一)大虚は理想なり、而して之れが世界観は虚なり、仏家の「色即是空空
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即是色」と曰ひ、「五体皆空」と曰ひ、「生住壌空」と曰ひ、「我説 即是
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空 」と曰ひ、「有即空空即有」と曰ひ、「有空平等」と曰ふ、空の意義と
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異ならず、何れも空々寂々の義にはあらず、宇宙の本体霊心の実相を指すな
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り、宇宙は大なる虚なり、我は小なる虚なり、我即宇宙、宇宙即我、宇宙と
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我と共に虚なり、ヱーゴーとナンヱンゴーと其の体を同ふし、其の相を同ふ
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す、其の体や虚なり、其の相や虚なり、陸象山か「宇宙即自家分内事、自家
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即是宇宙分内事」と説き、陳眉公が「以 大虚 為 体、以 利済 為 用斯人也
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天乎」と語るもの皆な宇宙と霊心との本体と実相とを指して、同じく是虚と
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なすものなり、同じく是れ虚なり、故に宇宙即這心、這心即宇宙なるなり、
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陽明に至りては此の本体なる実相たる虚に記するに、彼の発用たる、機能た
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る良知を以てし、以て心地の体と用とを明白に説明せり、曰はく
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  聖人只是還 他良知的本色 、更不 著 些小意 在 、良知之虚、便是天之
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  太虚、良知之無、便是大虚之無形、日月風雷、山川民物、凡有 貌象形
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  色 、皆在 大虚無 形中 発用流行、未 嘗作 得天的障礙 、聖人只是順 
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  其良知之発用 、天地万物、倶在 我良知的発用流行中 、何嘗又有 一物
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  超 於良知之外 、能作 得障礙 、
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と、然らば則ち陽明は、宇宙の本体を以て大虚となし、霊心の実相を以つて
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良知となし、宇宙の本体たる大虚の発用を名けて大虚無形中発用流行と曰ひ、
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霊心の実相たる良知の機能を名けて、良知的、発用的流行と曰ふものなり、
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再言せば、本体実相より曰へは、大虚即良知、良知即大虚にして発用機能よ
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り曰へば、大虚無形中発用流行、即是良知的発用流行、良知的発用流行、即
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是大虚無形中発用流行なり、と曰ふものなり、而して平八は、其の洗心洞剳
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記に於いて、陽明先生亦明言 大虚 有乎の或問に答ふるに、語録に於ける此
の語を引証し且つ曰ふ、
 
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山田 準
『洗心洞箚記』(本文)
その165
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