Я[大塩の乱 資料館]Я
2016.7.27

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』 その82

国府犀東(1873-1950)

(偉人史叢 8)裳華書房  1896

◇禁転載◇

救民の幟影(3)

管理人註
















陰謀泄る




















































挙兵の議
決す

二月十八日夜三更、東町奉行に至つて変を告ぐるものあり、平八社中の平山 助次郎、吉見九郎右衛門の二人なりき、彼等は固より平八の教鞭を承け、豢 養を受くるもの、而かも生得怯懦なり、彼等は嘗つて平八の激ミ憤懣、或は 詭激兇暴の挙に出でむことを慮れり、而して平八は竟に決意したり、夙に疑 懼して弐心を抱ける彼れ二人、窃かに以為らく、平八事を挙くるも、願ふに 竟に成らざるべし、後日の災禍恐るべし、今に於いて早やく之を有司に自首 するに如かずと、乃はち馳せて之を東町奉行に訴ふ、而して此の夜東町奉行 所には、平八同志瀬田済之助、小泉淵次郎宿直たりしなり、奉行は此の陰謀 の密告を聞くや、愕き且つ怖れ、暫しは胆を冷やし、魂を碎ふして居たりし も、さて今夜の宿直に平八の同志もあれば、陰謀奉行の耳に入りしと聞こえ ては悪しかりなむ、速かに二人を殺して其の口を緘せしむるに如かずとて、 直様二人に撃手を向けたり、淵次郎は其の場に撃手の手に斃れたれども、済 之助一人は辛ふじて遁げ落ち、呼吸まだ/\に馳せ来り、此の由しか/゛\              ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・ と備さに平八に具申したり、之を聞きたる大胆不敵の平八、騒ぎも見せず落 ・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ち付き返へりて、然らば好し、躊躇もあるべからずと、直様其の意を決した ・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ り、既に意を決したる平八は、荒れたる夜叉や韋駄天の如く怒れる不動や摩 ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・ 利支天に似て、殺気帯ひたる血走しる眼に、天を睨して中斎黙坐、其の兵を ・・ ・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ 繕ひ、其の馬に秣がひ、詰旦の事、今や来れと、夜の明るを待ち搆へたり、 明くれば二月十九日、幕下の猛士、数百の同志、今日こそ聖像を奠する例日                           ・・・・・・・・ なれと、ひし/\天満川崎なる、洗心洞指して集り来る、中堂に環坐して意 ・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・ 気軒昂、斗牛を呑まむずる勢の猛士数百、群かる真中に座するは孰れそ、御 ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ 大将平八郎、威儀を正して四筵を睨一睨し、昨夜済之助爾々と告げたり、か くまで事の逼れるからは、一刻も容赦あるべからず、早速軍の準備仕らむ、 迅雷耳を掩ふに遑あらざる様、敵をして備をなすに暇なからしむこそ肝心な れ、去来諸共に戟提げて起たむと、声の下より寂として静まり返へる一座の 猛士、然らば直様準備に掛らんと、議一決して諸隊の部署も早や定まりぬ、





豢養
(かんよう)
動物を飼う












































(まぐさ)






詰旦
(きったん)
明日の朝、早朝




逼(せま)れる




幸田成友
『大塩平八郎』
その107


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