Я[大塩の乱 資料館]Я
2016.8.10

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』 その86

国府犀東(1873-1950)

(偉人史叢 8)裳華書房  1896

◇禁転載◇

救民の幟影(7)

管理人註



































救民の幟
影は消失
せぬ

                       ・・ ・・ ・・ ・・ かゝる有る状なれば、近づくことも叶はず、たとへ鴻池、三井、岩城、平野 ・・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・ の諸富豪に闖入し、其の倉庫を毀ち、其の金穀を散するも、火の手は急なり、 ・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・ 剣光は閃けり、砲声鼓声は轟けり、孰れか敢へて近かづくものぞ、平八は怒 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ れる眼に涙を浮べ、民共何とて近かつかざると、一長嘆大息を発したり、 火勢は急なり、猛士は狂へり、狂へる猛士の一群は、今や淡路町に火を放つ て進む、奉行が率ゆる一隊の幕兵、こゝを阨して防かむと、筒先揃へて待ち 掛けたり、猛士隊は進み来れり、其の勢は当るべからず、幕兵沮みて退かむ とするとき、幕兵の中より躍り出でたる射術の達人坂本弦之助、こゝ一奮発 と狙をためて、猛士隊を見掛け、安田図書をば射て創けゝれば、猛士隊、軍 気俄然一変、旗色乱れむずる勢なれば、平八今は是れまでと、猛士の一群を さま/\諭して、潰散せしむ、而して平八も其の乱軍に混ぎれて、何地とも なく落ち延びたり、追蹟するを阨せむと猛士の剛者数人は、踏み留つて縦横 奮闘、各十数人を創け殺したり、幕兵死するもの此の時を尤も多しとなす、 ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 救民の幟影、今は見へずなりぬ、桐紋の旗章、今は消へ失せ畢りぬ、 而して猛焔は依然として猛勢を逞ふし、烈火は依然として烈威を縦まゝにす、 延焼凡そ五千余戸、半焼半壊合せて一万余戸、火翌二十日、黄昏に抵りて漸 く熄す、満目凄涼、四衛八街、蕩然として烏有に帰す、 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ かくて獅子の影だに見えず、雷霆は収まり、霹靂は蔵まり、噴火は熄めり、                                  ○ ○ 而して遠近猶ほ騒然、岸和田、尼崎城主、各兵を発して大坂城を守る、而か ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ も獅子は吼へず、雷霆は撃たず、霹靂は発せず、噴火は迸らず、     仲冬東郊見池蓮衰枯        大塩後素   万生翕闔迹無些。此説竊於釈老家義文前後妙。   更看水底未開花。     題宇治川先登図   慎独無論武与文。工夫徹処破千軍。何況同済心上戦。   知言寧奪済川動。

















(やく)
ふさがる


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