Я[大塩の乱 資料館]Я
2016.8.12

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』 その87

国府犀東(1873-1950)

(偉人史叢 8)裳華書房  1896

◇禁転載◇

焚死の人大辟の人(1)

管理人註














平八父子
の物色


















































平八父子
靱街の染
戸に潜む

  平八父子の物色○平八父子靱街の染戸に潜む○平八父子自焚死す○死後   の刑○叛逆の罪名○大不敬罪の主張○千古の鉄案 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ 獅子は今や見へずなりぬ、雷霆は収まれり、霹靂は蔵まれり、噴火は熄し畢 ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ りぬ、而して獅子に王たるものは何づこ、雷霆の主動者、霹靂の主宰者は何 ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ づこ、噴火の原動力は何づこ、奉行は今や平八の跡踪を物色して索めり、索 めて未だ之を獲す、一片の人相書は諸方に飛ばされたり、                      大塩平八郎   一 年齢四十五六歳  一 顔細長く色白き方   一 眉毛細く薄き方  一 眼細くつり候方    一 額開き月代青き方 一 耳鼻常体   一 丈常体、中肉   一 言舌爽かにて尖どき方    其節の着用鍬形甲着用 、黒き陣羽織、其余着用不分                       大塩格之助   一 年齢廿七歳斗   一 顔短く色黒き方   一 丈低き方     一 鼻眼常体   一 眉毛厚き方    一 歯上向、二枚折れ有之   一 言舌静かなる方   其節着用不分 かくて平八父子は物色されたり、物色されて未だ其の所を知るものなし、平 八父子は潜匿して靱油掛町の染戸見吉屋五郎兵衛の家に在り、而かも天知り 地知り、平八父子知り、見吉屋五郎兵衛知るの外、天地亦た知るものなく、         ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・ 覓め得る人なし、平八父子は一蹉尚ほ雄飛を思へども、一敗地に塗みれ、 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ 余燼亦た収拾すべきなく、厳明なる偵察眼の下には、たゞ見吉屋の奥なる三 ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 尺斗室の外、天地広しと雖ども、乾坤大なりと雖ども、亦た身を置き膝を容 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ るゝの地なきなり、軒溟渤を横きらむとする大双翼は、今やめられて縛 ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ せられて、掌大樊の裏に跼躋せしめらる英雄末路、斯の如きのみ、染戸の 後房、染戸の床頭、是れ我が天地、是れ我が乾坤、此の天地の外、此の乾坤 の外は、皆な敵国なり、敵彊なり、而かも此の敵国の人、敵地の人は挙げて 此の乾坤に於ける、此の天地に於ける消息を知らざるなり、偵卒は京摂は言 ふも更なり、畿甸を挙けて、否な六十六州を挙げて、綿密に施行さるゝなり、 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 而かも此の板戸一重を以つて隔つたる小天地、小乾坤には、其の鋭利なる緻 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ 密なる偵察眼は透らざるなり、徹せざるなり、或は僧となると伝へ或は仙と なると聞こゆ、而かも摩耶山にも、高野山にも、平八父子の影は見えず、其 の影の見えざるは理の当然、平八は一小房裡に板戸をさして眠るなり、平 八父子の所在明ならざる業已に三旬、人心猶洶々、







幸田成友
『大塩平八郎』
その149





索(もと)めり

物色
容姿によって人
を捜したりする
こと



「御触」(乱発生後)
その2 



































覓(もと)め






乾坤
天地


(おさ)め

(はんど)

跼躋
(きょうせい)





畿甸
(きでん)
王城付近の地







(と)さし


洶々
(きょうきょう)
どよめき騒ぐ
さま


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