大不敬罪
の主張
千古の鉄
案
|
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ● ● ○ ○ ○ ○ ○
平八郎叛逆人と雖ども、駿河守か案には叛逆とは不 存候、平八郎は所謂
肝癪の甚しきものなり、与力を務る内、豪商を折き、小民を救ひ、奸僧
を沙汰し、邪教を吟味したる類、晴天れの吏と云ふべし、又学問も有用
の学にてなか\/黄吻書生の及ぶべきにあらず、某奉行在役中度々燕堂
へ招き、密事をも相談じ、又過失をも問答すること浅少からず、言語容
・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・
貌決して尋常の人にあらず、彼実に叛逆を謀らむには、争て大坂城に籠
・・・・・・・・
らさる事あるべき (大坂御手薄の事等年来大塩が苦心の事なりしとぞ)、
・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・
然るに御城へは入らずして、棒火矢を以つて焼払いたるは何ぞや。(中
略)此の事小なりと雖ども平八郎の人となりを知るに足れり、譬へば人
過ちあるとき、再三反復、之を忠告す、忠と云ふべし、再三忠告せる上
にて、其の用ゐざるとも、之を憤りて坐にあり合へる火鉢などを、其の
● ● ○ ○ ○ ○ ○
人の面へ投げば、不敬の至極なり、始めには其人を憂ふる余りに忠告し、
○ ○ ○ ○ ○
後には其面体へ疵を付けは、安んぞ其人を憂ふるにあらん、平八郎も始
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
は忠告すれども用ゐられざるを憤ほり、叛逆に均しき禍乱を企てしは此
○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
の類なり、されば余勘定奉行たりしとき、此議を主張し、何ぞ叛逆の科
◎ ◎ ◎ ● ● ● ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
を除き、大不敬に処したきものと建議せしも、其議用ゐられざるのみな
◎ ◎ ◎ ◎ ● ● ● ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
らず、某も叛逆人に身を持つやうに当路にては譏りたりとぞ、(中略)
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
平八郎を拷問し其罪に伏したるにもあらず、罪状を責むることもさる事
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
なれども、其人已に焚死黒焼になりたる平八郎に、此の如き罪状を与ふ
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
るは、公裁とは云ひ難し、人心の霊、愚婦愚夫まて、今に平八郎樣と称
するは、陰に其の徳を仰ぐにあらずや、されば駿河守、其事を仕置せん
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ● ● ○
には、平八郎年来の忠憤は却つてさること乍ら、憤激の余、其跡叛逆に
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ● ● ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
等しきことを仕出したるは、上をも畏れず、大不敬と云へる事にて裁判
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
せば、平八郎死せりと雖ども、甘んじて其罪を受け、又大坂の人心をも
○ ○ ○ ○ ○ ○
圧倒すべしと、密かに扼腕して語れり、 (東湖随筆)
|
桜庭経緯
「矢部駿州と大塩
平八郎」
安(いずく)んぞ
|