平八の理
想的国家
は陽明と
其の帰を
同ふす
平八の真
面目
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而して平八は陽明の此の理想的国家を以つて其の理想的国家となし、明らか
に平等の天分を認めたることは、
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心帰 乎太虚 、則太虚乃心也、然後当 知 道与 学之無 崖際 也、夫人之
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嘉言善行、即吾心中之善、而人之醜言悪行、亦吾心中之悪也、是故聖人
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不 能 外 視之 也、斉家治国平天下、無 一不 存 心中之善 、無 一不
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去 心中之悪 、道与 学無 崖際 可見 矣、
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と曰ふに於いて、其の一端を窺ふを得へし、道と学とは崖際なし、他と自と
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の別も物と我との差もなきなり、聖と凡と、賢と愚と、及び善と悪と、固よ
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り差別あるべき理なし、平八は明らかに平等の観念を基礎とすること、陽明
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と其の揆を一にするものなり、渠れ亦た一つの社会主義を抱くもの、此の平
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等の観念を抱ける平八、業已に陽明を祖述すとせば、其の理想的国家も亦た、
陽明と其の帰を同ふしたるに相違なし、平八も亦た平等なる天分を有せる、
平等なる社会のユートピアを搆成して、現実の社会をして、此のユートピア
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に近接せしめむと、其の全幅の力、其の畢生の精を竭くしたり、平八は確か
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に陽明と同一の期図、同一の志望を有したるものなり、
平八は業已に陽明と同一の期図、同一の志望を有し、平等の天分と、平等の
社会とを確信す、渠れは勇往直前、自らも此の方向に突進せむとし、又た人
を率ひ、社会を導いて、此の同一彼岸に達せしむとはなせり、渠れは此の期
図、此の志望の為めには、身命をも惜まざるなり、況むや禍福利害、栄枯得
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喪に於てをや、平八は但た此の方向に向つて、風発 氏A猛進し、邁前し、
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亦た顧慮するなく、躊躇するなきなり、平八の真面目こゝに在り、
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『洗心洞箚記』(本文)
その83
渠(か)
竭(つ)くし
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