Я[大塩の乱 資料館]Я
2016.9.4

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』 その98

国府犀東(1873-1950)

(偉人史叢 8)裳華書房  1896

◇禁転載◇

社会主義実行者としての平八(7)

管理人註




















































破壊的手
段

然り而して天保の凶歉は、社会を駆つて平八が平等的眼孔の前に、物質的に、 社会の不平等を現出せり、業已に現実社会の不平等に嫌焉たらざる平八は、 現実社会の破綻に際会して、益不平等の悪むへく、慊ふへき現象を目撃せり、 ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・ 渠れ知行合一、信すれは直ちに之を行ひ、水火も避けず、雷霆も縮せざる猛 ・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 進邁前の平八は、此の危急の際に当り、一生を賭し、一身を抛つて、此の自 ・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・ 己理想と、一大衝突、一大矛盾をなせる、不平等の社会を破壊し、打摧せむ ・・・・ とはせり、不平等の社会、富は貧の窮を極はす、強は弱の急を救はず、貴は                    ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 賤の逼を顧みず、尊は卑の迫を憂とせず、人の窮、人の急、人の逼、人の迫 ・・・・・・・・・・ ・・・ ・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・ を以つて直ちに己の窮、己の急、己の道、己の過となせる平八は、豈に黙々 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ として此の不平等の自己理想に大に衝突し、大に矛盾せる現実社会の状態を ・・・・・・・・・・ 目撃するものならむや。居然此の平等なる、社会主義的観念を有せる平八は、 憤慂激昂、破壊的運動に向つて其の満腔の熱血を灑ぎ来れり、    ○   ○  ○ ○ ○  ○   ○ ○ ○  ○ ○ ○ ○ ○ ○  ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○  ○ ○ ○ ○   無生以害仁、夫生有滅仁太虚之徳、而万古不滅者也、舍万古不滅    ○    ○  ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○   ○  ○ ○ ○   者、而守有滅者惑也、故志士仁人、舍彼取此、誠有理哉、非常人   所知也、 平八は今や、生を顧みず、死を顧みず、此の不平等の社会を、暴力を以て破 壊せんとは企てたり。貧富の懸隔、強弱の不等、貴賎の雍塞、尊卑の絶、 此等物質的の不平等は、目前における危急の際には、確かに一つの大蠹害た           ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ りしに相違なきなり。平八は熱し狂し、以つて此の貧富と強弱と貴賤と尊卑 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ との間に横はる一大重関を一鉄拳摧破し呉れむと試みたり。而して其の破壊 的社会主義的運動は、一大烈火を鼓して、浪華の城市を焼き払いたり、 浪華は経済の中点、人唯物質的の利名快楽を知つて、亦た精神的の理義、名 分を知らず、唯黄白を是れ崇拝し、亦た其の他を知らす、富は益富、貧は益                       ・・・・・・・・・・・・ 貧、尊は益尊、卑は益卑、貴は益貴、賤は益賤、平時に於いて業已に現実に ・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・ ・・・・・・・ 物質的に、万般の現象、悉く平八の理想と衝突し、抵触す、平時に於ても平 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 八は毎ねに不平鬱勃に堪えざりしなり、特に当時社会に於ける門閥の箝制と ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・ 格式の検束とは、有形的に平等の観念と衝突し、抵触するもの、平八又た之 ・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・ を睹る、固より憤懣に耐えざりしに相違なし、平時に於いて、夙に此の如き ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・ 物質的有形的不平等の現象を現実に目前の社会に目撃して、鬱勃禁ぜざるも ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ のありし平八が、彼の危急非常の際に当り、特に大坂に於いて彼の破壊的大 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ 飛躍に出でしもの、固より怪むに足るものなし、


















極(すく)はす

















『洗心洞箚記』(本文)
その13



































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『大塩平八郎』目次/その97/その99

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