Я[大塩の乱 資料館]Я
2011.4.20

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大塩の乱関係論文集目次


『大阪府誌 警察史』

その36

大阪府 1903 より


◇禁転載◇

死罪。  此の刑に行はるゝものを、左の三十余種とす。 一、地頭へ強訴の発起となりし者。 一、商物の代金を請取、其の品を渡さずして二重売せし者。    但、金子は拾両以上、雑物は代金に積りてす。 一、偽証文を以つて、金子を借り、又、之れを知りて貸しゝ者。 一、奉公人の請人となりて、誘き出だし、又は欠落せしめし者。 一、人家へ忍入り、又は、土蔵等を破りし盗人。 一、他に商買あるに、其の妻をして強ひて売淫せしめし者。 一、密通の男女。    但、其の夫、密通男女を殺すとも、密通の事、実紛なきに於いては    無構。 一、主人の妻に密通の手引をなしゝ者。 一、盗に入り、刃物にあらざるものにて、人に疵付けし者。 一、人を勾引せし者。 一、遺恨を以つて、放火すべき旨を張札し、又は捨文せし者。 一、騙りの公儀に対するか、又、予て巧みし事か、又、人と謀りし者。 一、似せ薬を売りし者は、引廻の上、本刑。 一、人に頼まれ放火せし者。 一、放火をなして、年を越え、露顕せし者。 一、主人、旧主人に切かゝり、打かゝりし者、若くは、地主を殺さんとし  て、手負はしゝ家守。 一、旧地主を殺しゝ家守は、引廻しの上、本刑。 一、非分なき実子、養子を殺しゝ親、又、弟妹、甥姪を殺しゝ者。    但、不図短慮にて殺しゝ者は、遠島。 一、自分の悪事を蔽はんがため、人を殺さんとして疵付け、若くは、詮議  したる人に遺恨を含みて、手負はしゝ者。    但、切殺しゝ者は、獄門。 一、車を引掛け、人を殺しゝ者。    但、其の前後に、引きし車にして、害せざりし者は、遠島。    又、荷主及び家主は、共に過料。 一、辻切せし者は、引廻しの上、本刑。 一、家焼失に際し、其の親類死せしを捨置、遁出だしゝ者。    但、兄姉、伯父、伯母をして、此に至らしめし者は、中追放。 一、乱心にて放火せし者の、乱心の証拠不分明なるもの。    但、乱心の証十分なるときは、親類へ預け、押込。 一、放火者、盗賊、殺人者、徒党をなし、人家へ押入りし者、追剥等の科  人を立退かせ、其の住所を隠匿せし者。 一、遠島者、島に於いて死罪以上の悪事をなし、又、島を逃げし者。    但、其の島に於いて、強取、また乱暴者は、島替。 一、入墨後、盗をなしゝ者。    但、盗以外の少悪事は重敲。 一、追放のもの、御構場へ立帰りし者。 一、牢抜せし者。    但、牢番人は中追放。 一、船荷物を窃取し、之れを売買せしものは、牢舎の上、本刑。 一、既婚者と姦通せしものは、男女共本刑。 一、兇徒聚嘯の造意者。    但、同意者は流刑。 一、官吏収賄。但三百両以上。 一、官吏の自己保管の物品を盗みし者 但三百両以上。         かぎ  死罪の仕方は、鎰役打役一同、牢屋へ出で、打役は牢鞘出口に立ち、鞘 内には、無腰の牢番同心二三人、下男八人にして、鎰役は鞘外へ廻り、鞘 内にては、牢番同心錠を外し、扉を開く。而して当番及び鎰役の「大牢何 所、無宿誰は居るか」と問ふや、牢屋名主は「居ります」と大声に呼び、 其の名差の囚人は、左右より相牢囚人両人にて手を取り、戸前より正面の 羽目へ押さへ付け、牢内役人、之れを取囲み、牢根太板を踏鳴らし、戸前 に押し出だす。而して此の囚人は、鞘内にて切縄を掛け、鞘外より、鎰役、 牢証文を以つて、肩書、年付、入日、掛り附等を改め、鞘口より打役繰出 で、下男は縄を取りて、改番所へ引居ゑ、鎰役は、二たび名前、肩書、其 の外、形の如く改め、打役一人、牢屋見廻りは、詰所前へ出で、使へ案 内す。使は改番所に出で、鎰役、出牢証文を以つて、名前其の他を改め て、使に渡し、使の、更に科の次第、書付を以つて読み聞かせば、直 ちに側に控へし非人、大勢にて取囲み、打役附添、牢前通りより切場                    うずみもん 口へ廻はし、目隠をなし、使其の外は、埋門より出でゝ、使場へ 着席す。而して囚人は、非人三人にて縄取引出で、当番鎰役、二たび 囚人の名前を聞き、直ちに切場の前の菰俵の上に於いて、草履を脱ぎ て座らしめ、手伝人足の腰の小刀を以つて、切縄の背結び目より、襟 の方へ上り、喉縄切捨て、着物を引下げ、肩を露はし、手を添へて首 を伸べさせ、手を引くと共に、町同心、首を打ち落し、其の死骸は取 捨にし様ものに申付く。


森鴎外「大塩平八郎」その17


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