Я[大塩の乱 資料館]Я
2015.5.12

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『通俗洗心洞箚記』
その94

大塩中斎著 下中芳岳(1878-1961)訳

内外出版協会 1913

◇禁転載◇

下巻 (8)八 此の志を貫くのみ

管理人註

孔子不於魯衛、 遭宋桓司馬将要而 殺之、微服而過宋。 夫孔子之聖、而魯衛 不用、桓司馬殺之、 実不其何謂也。 然而推尋之人情、 則只羣小畏其是非 之公焉耳。故乃至 此矣。況吾輩学聖 人、一任良知、 以公是非狂者、 則其人禍殆有 測者焉。雖然徒怖 人禍、終昧是非之 心、固丈夫之所恥、 而何面目見聖人于 地下哉。故我亦従 吾志已矣。

 孔子は魯衛に悦ばれなんだ。宋の桓司馬は道に要して之を 殺さうとした。之を聞き知ッた孔子は、微服して宋を過ぎた。 孔子の聖、而も魯衛は用ひなんだ。桓司馬は之を殺さうとし た。実にその何の謂ひたるを知るに苦しむ。けれども、斯の                ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 如き人情を推尋し来るに、其はたゞ群小、其の是非の公を畏 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ・・・・・・・・・ るゝが故に比に至ッたといふに帰する。孔子の如き円満なる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・わし・・ 性格に於てすら群小の為めには此の厄がある。況して予の如 ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・たゞ きは、聖人の旨を学び、一に良知に任せて以て是非を公すこ ・・・・・・・・・・・・・  ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ と狂者にも似たるものがある、人禍の至る、殆んど測り知る ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ◎ ◎ ◎ ◎   ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ べからざるものがあるであらう。けれども、徒らに人禍を怖 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎   ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ れて終に是非の心を昧ますが如きは、固より丈夫の恥づる所、 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎   ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 若し斯の如き不節操を敢てして、何の面目あッてか聖人と地 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎   ◎ ◎   ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎   ◎ ◎ ◎ 下に見ゆることが出来よう。よし、人禍来らば来れ、如何な ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎   われ ◎ ◎ ◎ わし ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ る人禍来らうとも、予はたゞ予の信ずる所を敢行するばかり だ。

    実際、彼は最後まで彼の志を貫いた。彼はこゝに明言す る所を事実に現はした。彼は世の常の儒者の如き口説の 儒ではなかッた。

『洗心洞箚記』
(本文)その170

 


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