Я[大塩の乱 資料館]Я
1999.11.28/2003.9.1修正

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大塩の乱関係論文集目次


「大 塩 乱」その4

『大阪市史 第2巻』(大阪市 1914、1927再版)より

◇禁転載◇



改行を適宜加えています。

一、挙兵の決心と準備 (4)


檄
文
の
印
刷


檄文は黄絹の袋に包み、「天より被下候村々小前のものニ至迄へ」と題し、本文は草書体にて平仮名を附し、西ノ内五枚続に印刷せり。
印刷は塾生英太郎八十次郎両人之に当り、板木の彫刻は去年十二月北久太郎町五丁目次郎兵衛なる者を大塩邸に招き、三四字又は五六字づゝ横に活字版の駒の如く彫刻せしめ、以て露顕を防ぎたり。

 

檄
文
の
趣
旨

檄文の趣旨は冒頭神君仁政を布きてより泰平持続すること二百四五十年、有司賄賂を授受し、百姓町人を虐げ、下民の怨気天に通じ、天変地異年として有らざる莫しといひ、次に前述の如く町奉行の秕政大阪町人の豪奢を指摘して剰す所なく、之に誅戮を加へ、其所蔵の金銀米銭を散布するを以て、摂・河・泉・播の窮民は大阪市中に騒動起ると聞かば、必ず奔来し、期に後れて悔を貽す勿れ、「我等一同心中ニ天下国家を簒盗いたし候慾念より起し候事には更無之、月日星辰之神鑑ニある事ニて、詰る所は湯武・漢高祖・明太祖民を弔、君を誅し、天討を執行候誠心而巳ニて、若し疑しく覚候ハヾ、我等之所業終ル処を爾等眼を開て看よと結べり。
檄文は摂・河・泉・播 四国中大村の神殿へ張付置く旨、本文中にありと雖も、挙兵の日遺棄したる長持中に夥しくありしといヘば、遍く配賦を終らざりしものゝ如し。

    大塩平八郎檄文、咬菜秘記、
 

平
山
助
次
郎
の
密
告

東組同心平山助次郎は党中に加り、誓紙に署名血判せしが、後之を悔い、二月十七日夜 密に跡部良弼に面謁し、平八郎の陰謀と徒党の連名とを告げしが事余に唐突に出でしを以て、良弼軽々しく之を信ぜず、密使を江戸に急派し、尋いで助次郎を京師に出役せしむと称して江戸に下し、勘定奉行矢部定謙に訴へしめぬ。

 

両
町
奉
行
平
八
郎
捕
縛
の
内
議

良弼密偵を出して平八郎の動静を探らしめ、翌十八日東町奉行所に於て堀利堅と鳩首密議し、両組より捕吏を出すに決し、之を東組与力荻野勘左衛門・其子四郎助・磯矢頼母・及西組与力吉田勝右衛門に命じたるに、勘左衛門等答へて隠謀の虚実未だ明ならず、平八郎近日大言放論すと聞く、助次郎之を聞きて事実と誤認したるやも知るベからず、先づ十九日の巡見を延引して無事を謀り、更に虚実を糺して捕縛すべしといひ、逡巡して命を奉せず。
良弼之を利堅に通じ、事遂に寝めり。而して助次郎は是日払暁 従僕及嚮導各一名を伴ひて発足し、廿三日遠州今切に於て天満大火の報を聞き、大井川出水に会して道を木曽街道に取り、廿九日夜江戸に著し、直に定謙に出訴せり。

    評定所吟味伺書(平山助次郎ノ條)、両町奉行書取、
吉
見
九
郎
右
衛
門
の
密
告

東組同心吉見九郎右衛門も亦、徒党の一人として、砲車の注文に奔走せし程なりしが、已にして同盟に加れるを悔い、正月以来疾と称して出でず、河合郷左衛門平八郎の打擲を受けて出奔するに及び、愈々反忠の決心を固め、男英太郎に諭すに、同宿八十次郎と計り、叛跡を証するに足るものを奪出づべきを以てし、自ら筆を執り城代・両定番・両町奉行に宛て、平八郎の隠謀加盟の由来等を詳記せる訴状を作りぬ。
二月十八日英太郎八十次郎危機切迫せるを知り、深夜檄文一通を奪ひ、邸内の混雑に紛れ、脱れて九郎右衛門の家に至るに及び、九郎右衞門東町奉行所には一味中当番の者あるを以て、出訴するも或は達せざるを慮り、訴状を両人に附し、十九日寅ノ刻前西町奉行所に到り、檄文と併て之を堀利堅に上らしめたり。

河
合
郷
左
衛
門
の
出
奔
両
町
奉
行
の
応
急
手
段

利堅旨を良弼に通じ、各々急に組下を召集して、暴徒捕縛に従はんとし、良弼は又書を代官池田岩之丞○谷町二丁目に居る、 同根本善左衛門○鈴木町に居る、に飛し、建国寺及天満橋を守らしめ、天滿組惣年寄今井官之助 ○後名を克復と改む、 等に消防人足を率ゐて東番所に来るべきを命ぜしが、前夜宿直の瀬田済之助小泉淵次郎両名が平八即に党せること訴状中に判然たるを以て、先づ二人を召しゝに、二人事の露れたるを察して逃れんとせしかば、左右之を追ひ、淵次郎を斬り、済之助を逸しぬ。
良弼利堅を東番所に招きて事を議し、平八郎の叔父東組与力大西与五郎を召し、平八郎に利害を説きて自匁せしめ、若し聞かざれば刺すべきを命ぜしに、与五郎疾と称し、養子善之進と共に逃亡したり。

    両町奉行書取、吉見九郎右衞門密訴、評定所吟味伺書(吉見九郎右衛門・同英太郎・河合八十次郎ノ條)咬菜秘記、旧惣年寄今井克復氏談話(史談会揺速記録)、
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檄文
野里口伝


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