◇禁転載◇
一、挙兵の決心と準備 (4) |
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檄 文 の 印 刷 |
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檄 文 の 趣 旨 |
檄文の趣旨は冒頭神君仁政を布きてより泰平持続すること二百四五十年、有司賄賂を授受し、百姓町人を虐げ、下民の怨気天に通じ、天変地異年として有らざる莫しといひ、次に前述の如く町奉行の秕政大阪町人の豪奢を指摘して剰す所なく、之に誅戮を加へ、其所蔵の金銀米銭を散布するを以て、摂・河・泉・播の窮民は大阪市中に騒動起ると聞かば、必ず奔来し、期に後れて悔を貽す勿れ、「我等一同心中ニ天下国家を簒盗いたし候慾念より起し候事には更無之、月日星辰之神鑑ニある事ニて、詰る所は湯武・漢高祖・明太祖民を弔、君を誅し、天討を執行候誠心而巳ニて、若し疑しく覚候ハヾ、我等之所業終ル処を爾等眼を開て看よと結べり。
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平 山 助 次 郎 の 密 告 | 東組同心平山助次郎は党中に加り、誓紙に署名血判せしが、後之を悔い、二月十七日夜 密に跡部良弼に面謁し、平八郎の陰謀と徒党の連名とを告げしが事余に唐突に出でしを以て、良弼軽々しく之を信ぜず、密使を江戸に急派し、尋いで助次郎を京師に出役せしむと称して江戸に下し、勘定奉行矢部定謙に訴へしめぬ。 | |
両 町 奉 行 平 八 郎 捕 縛 の 内 議 |
良弼密偵を出して平八郎の動静を探らしめ、翌十八日東町奉行所に於て堀利堅と鳩首密議し、両組より捕吏を出すに決し、之を東組与力荻野勘左衛門・其子四郎助・磯矢頼母・及西組与力吉田勝右衛門に命じたるに、勘左衛門等答へて隠謀の虚実未だ明ならず、平八郎近日大言放論すと聞く、助次郎之を聞きて事実と誤認したるやも知るベからず、先づ十九日の巡見を延引して無事を謀り、更に虚実を糺して捕縛すべしといひ、逡巡して命を奉せず。
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吉 見 九 郎 右 衛 門 の 密 告 |
東組同心吉見九郎右衛門も亦、徒党の一人として、砲車の注文に奔走せし程なりしが、已にして同盟に加れるを悔い、正月以来疾と称して出でず、河合郷左衛門平八郎の打擲を受けて出奔するに及び、愈々反忠の決心を固め、男英太郎に諭すに、同宿八十次郎と計り、叛跡を証するに足るものを奪出づべきを以てし、自ら筆を執り城代・両定番・両町奉行に宛て、平八郎の隠謀加盟の由来等を詳記せる訴状を作りぬ。 |
河 合 郷 左 衛 門 の 出 奔 |
両 町 奉 行 の 応 急 手 段 |
利堅旨を良弼に通じ、各々急に組下を召集して、暴徒捕縛に従はんとし、良弼は又書を代官池田岩之丞○谷町二丁目に居る、
同根本善左衛門○鈴木町に居る、に飛し、建国寺及天満橋を守らしめ、天滿組惣年寄今井官之助
○後名を克復と改む、
等に消防人足を率ゐて東番所に来るべきを命ぜしが、前夜宿直の瀬田済之助小泉淵次郎両名が平八即に党せること訴状中に判然たるを以て、先づ二人を召しゝに、二人事の露れたるを察して逃れんとせしかば、左右之を追ひ、淵次郎を斬り、済之助を逸しぬ。
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