Я[大塩の乱 資料館]Я
2002.7.3

玄関へ

大塩の乱関係史料集目次


『天 満 水 滸 伝』
その25

石原干城(出版)兎屋誠(発兌) 1885

◇禁転載◇

適宜、読点を入れ、改行しています。


○大塩兵を集めて軍を出す (6)

斯て逆徒の押来りし大筒、漸く直りしと見え、一人の火術者らしき者、前に廻りて火をさゝんとする時、口薬調ハず、彼是手間取其内に、坂本鉉之助、本多為助、列を離れて近く進み、左右に並び身構なし、彼の火術者を目当にし、十匁筒にて狙ひけるに、左の用水桶の影より、小筒を持たる逆徒壱人、密に鉉之助を狙ひて、既に火蓋をバ、切んとするの有様を、為助、眼早く是を見て、彼鉉之助に声を懸、危ふし\/と呼ハりしも、騒きに紛れて先へ通ぜず、且一心に彼火術者を狙ひ込たることなれバ、更に耳へハ入ざりしと、

此時為助、火術者を討んと、向し筒先を忽ち転じて、用水桶の方へ向て、(どう)と放せバ、桶をかすりて賊に当らず、彼賊、驚き手元狂ひて、同時に放つ鉄砲ハ、鉉之助が着したる、陣笠の左の端を打貫たり、此時毫毛の金合(かねあひ)にて、鉉之助より打たる鉄砲、目的(ねらひ)は少しも過たず、彼火術者の、左の脇より右の肩へと打抜たりしに、何かハ以て堪るへき、火縄を持ながら倒伏たり、

又是と同時に、同人の打たる鉄砲、車の脇の雑人の、腮(あぎと)を打抜たりけれバ、是も同く倒れたり、

スハヤ此図を脱(ぬか)すなと、一同手繁く打立\/、玉を込替て先へ\/と相進み、爰を先途と打出しけるにぞ、

烏合の集り勢、辟易して皆八方へ散乱しけるを見るより、畑佐秋之助ハ、与力同心へ下知なして、今こそ賊徒を皆殺しになすべき図なり、者共や、討よ進め、と云ふ下より、心得たり、と其手の面々、平一面に打出すに、逆徒等、手向ひもなさずして、右往左往に逃散たり、


坂本鉉之助「咬菜秘記」その12


『天満水滸伝』目次/その24/その26

大塩の乱関係史料集目次

玄関へ