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【太虚一元図 (略)】
中斎学では天即ち太虚を躯殻外の虚と方寸の虚とに分ちます。方寸の
虚は形質上からは心臓を指しますが、同時に形而上なる人心(心霊)の
義であります。かういふ風に中斎学では『心』を何処までも『物』に結
び付けて考へるところが極めて科学的だと思ひます。さて躯外殻即ち身
外の虚を無限大と無限小との二観に約して説明致します。無限大とは大
宇宙を指すので『在上蒼々太虚』と書かれてあるのがそれであります。
無限小は宇宙の極微、形の以て認むべきなきものゝ謂で、『石間虚竹中
虚』と大ザツパに書かれてありますが、中斎先生にして若し近世科学の
智識を持つてゐられたならば、アトムとか電子とかの説を用ひられてゐ
るに相違ありません。即ち数学上の無限大と無限小……或はマクロコズ
ムとマイクロコズムに引きあてゝ考へてもよいと存します。中斎先生が、
たびたび中庸から引用されました『語大天下莫能容、語小天下莫能破』
といふもの、これ躯殻外の虚で、それは一応物質的であつて、じつは超
物質のもの、即ち幾何学上のスペースに似たものであります。それで大
は大宇宙よりして小はアトム、電子と、そして人の有する心霊と、この
三者に共通した観念を抽象して、私は至高至深極精極微の生命なりと解
し、即ち之を万有一貫の大生命と呼ぶのであります。この大生命、これ
中斎学の天(大虚)でありまして、その本体から云へば時空を超越した
第四次元の世界であるが、而かもやはり時空形質を通じて活動して已ま
ぬ作用を有つてゐます。所謂その気の用が春夏秋冬となつて顕はれたと
き、何人も見て之を識ることが出来る。しかしその体の理たる元亨利貞
に至つては心虚に帰せるの聖人のみが、黙して之を知り得べきものとさ
れて居ります。
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躯殻
(くかく)
からだ
高瀬武次郎
「大塩中斎」
その16
マクロコズム
(macrocosm)
大宇宙
マイクロコズム
(microcosm)
小宇宙
中庸章第十二章
『洗心洞箚記』
その217
元亨利貞
(げんこうりてい)
易経で乾の卦
を説明する語
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