Я[大塩の乱 資料館]Я
2012.9.2

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩中斎空虚の哲理』

その11

高田集蔵

立正屋書房 1925

◇禁転載◇

二 哲学的思索
 (其一)(4)
管理人註
   

  【太虚一元図  (略)】  中斎学では天即ち太虚を躯殻外の虚と方寸の虚とに分ちます。方寸の 虚は形質上からは心臓を指しますが、同時に形而上なる人心(心霊)の 義であります。かういふ風に中斎学では『心』を何処までも『物』に結 び付けて考へるところが極めて科学的だと思ひます。さて躯外殻即ち身 外の虚を無限大と無限小との二観に約して説明致します。無限大とは大 宇宙を指すので『在上蒼々太虚』と書かれてあるのがそれであります。 無限小は宇宙の極微、形の以て認むべきなきものゝ謂で、『石間虚竹中 虚』と大ザツパに書かれてありますが、中斎先生にして若し近世科学の 智識を持つてゐられたならば、アトムとか電子とかの説を用ひられてゐ るに相違ありません。即ち数学上の無限大と無限小……或はマクロコズ ムとマイクロコズムに引きあてゝ考へてもよいと存します。中斎先生が、 たびたび中庸から引用されました『語大天下莫能容、語小天下莫能破』 といふもの、これ躯殻外の虚で、それは一応物質的であつて、じつは超 物質のもの、即ち幾何学上のスペースに似たものであります。それで大 は大宇宙よりして小はアトム、電子と、そして人の有する心霊と、この 三者に共通した観念を抽象して、私は至高至深極精極微の生命なりと解 し、即ち之を万有一貫の大生命と呼ぶのであります。この大生命、これ 中斎学の天(大虚)でありまして、その本体から云へば時空を超越した 第四次元の世界であるが、而かもやはり時空形質を通じて活動して已ま ぬ作用を有つてゐます。所謂その気の用が春夏秋冬となつて顕はれたと き、何人も見て之を識ることが出来る。しかしその体の理たる元亨利貞 に至つては心虚に帰せるの聖人のみが、黙して之を知り得べきものとさ れて居ります。







躯殻
(くかく)
からだ








高瀬武次郎
「大塩中斎」
その16

マクロコズム
(macrocosm)
大宇宙

マイクロコズム
(microcosm)
小宇宙

中庸章第十二章

『洗心洞箚記』
その217













元亨利貞
(げんこうりてい)
易経で乾の卦
を説明する語
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