Я[大塩の乱 資料館]Я
2012.9.12

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩中斎空虚の哲理』

その21

高田集蔵

立正屋書房 1925

◇禁転載◇

三、宗教的修練
 (其一)(4)
管理人註
   

   嬰児の如く  至人の徳は現はれず  その内含の深くして無心に似たる  之を嬰児の天真に喩ふべし  柔和無敵の身       毒虫も螫さす、猛獣も馴れむ  而して鷙鳥すら之を護らむ  見よ!嬰児は骨弱く節柔かなり  而もその手の握ること極めて固し  これ何が故ぞ  嬰児は未だ男女の道を知らず  一向に「道」の自然に在りてそだちぬればなり  蓋し、かくの如き無慾は「徳」の精神なり  見よ!嬰児は終日号泣すれども  その声終に嗄るゝことなし  これ何が故ぞ  嬰児は哀みて傷るものにあらず  彼の啼くはおのづからにして歌うなればなり  蓋し、かくの如き調和は「徳」の姿なり  学びて嬰児となるとは、結局自己の旧我に死することに外なりません。 それは新しく嬰児と生まれる為めには、何うしても一番の大死を要する からであります。曰く致良知、曰く変化気質、曰く一死生、曰く去虚偽、 之に帰大虚を加へて中斎学の五綱領と致しますが、前四者は究極すると ころ、帰大虚の方法でありまして、四者何れの門より進んでも、その徹 底するところ、大虚の至誠所に帰到し得べきであります。その何れに致 しましても、旧我に死して太虚国の嬰児と新生するの道を親切に指示さ れて居る訳なのであります。  それで五鋼領の説明に入るに先だち、もう一度嬰児の心がいかに空虚 にして、私共が帰大虚の工夫を修練するの模範となるかに就いて考へて 見ませう。















鷙鳥
(しちょう)
鷲、鷹のよう
な、猛禽


















(か)る


















『洗心洞箚記』
その6

高瀬武次郎
「大塩中斎」
その34
 


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