Я[大塩の乱 資料館]Я
2009.2.5

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大塩の乱関係論文集目次


「大塩中斎」

その30

高瀬武次郎 (1868−1950)

『日本之陽明学』榊原文盛堂 改訂 1907 所収


◇禁転載◇


 学説(16)
  第三綱領―変化気質
管理人註

寒気の害

   第三綱領―変化気質 第二綱領として致良知の方法を説き、帰太虚の積極的方法を 示したれば、此には其消極的方法を説くものなり。而して変 化気質の一項は主として、張子より得たるが如し、所謂気質 とは本性を蔽遮する所の傲慢なる気質、即ち我を指して言ふ なり、孟子の言に依れば、物欲に陥溺せられたる状態を云ふ なり。此傲慢なる気質を変化して、我を挫くにあらずんば、 心の本体を見、至善に遽し中庸を得、太極を窺ふを得ざるな り。是れ根本主義たる太虚に帰するの方便にして、此功夫を 凝らすにあらはされば、其蘊奥に達するを得ず。換言すれば、 中斎の意は其小我を除去して、無我の大我に達せんとするに 在り、無我の大我は即ち世界を以て我心内の物なりと了得す るものなり。此に至れば太虚に帰したるものなり。此一項は 一手段に過ぎざれども、修徳の工夫に於て、極めて緊要なる ものとす。故に其工夫を示すこと甚詳密なれども、今只二三              ム     ツテ ヲ    ム      ルヲ   ヲ 節を適載せんとす。曰く、悪紫之奪朱也。悪鄭声之乱雅楽    ム       ス   ヲ ヲ            ムコト ヲ シ 也。悪利口之覆邦家。今有両眼而不明者。好 紫甚 ヨリ           ミ  ヲ フ  ヲ   リテ    シテ   カ 乎朱。有両耳而不聴者。好鄭厭雅。有道心而不開者。 シテ    ニ      ス      ヲ     ナ テ      ヲ  フ   ヲ於利口而屏遇忠告直言。此皆以習気情欲良知也。 フ  ケハ チ       ツ 葢者除則良知宛然出焉、」と。而して中斎は張子の言を引き て、為学の大益は、主として変化気質に在ることを云ひ。務 めて客気勝心を掃蕩すへきことを言ひ。其実例を挙げて曰く、       ハ シテ  ノ  ラ スルノ ヲ   チ リ  ノ   ハ      セリ 「呂東先生誦論語躬自厚 章。忽覚平時忿換然氷釈元揚   ハ ニシテ テ   ヲ   リ       ノ ニ      リ  ル  ノ  テ  ニ 武子 幼 読論語。至宰予昼寝章。慨然有志。由是終   レバ   ニ     テ   セ       ナ ク   スト  ノ 身非疾病。未嘗偃臥之類。可皆能変化気質矣」と。 中斎の説く所、悉く実用にあらざるはなし、往々大言に失す るものあるが如きも、要は日用応酬の間を出てす。終に曰く、    ハ      ニシテ     ヒトシキコト チ シ  ノ          ニ  ナラン 嗚呼人七尺之躯而与天地 斉。乃如此。三才之称豈徒然哉。 シク  シテ  ヲ   テ ス      ニ変化気質。以復太虚之礼也」と、恰も孟子が求放心を 説くが如し。


   
  


井上哲次郎「大塩中斎」その25 


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