Я[大塩の乱 資料館]Я
2002.9.19

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「浮世の有様 巻之七」

◇禁転載◇

 大塩動乱の顛末竝に著者の管見 *1 その5

 
 





両御奉行共に御供廻り、御同様何れも著込み鉢巻上げ、火事羽織著し、抜 身槍・長刀の類持参し、帯剣に反を打ち御馬先へ進み、扨又賊徒の方は天満橋鉄炮にて被固、天神橋は切落無是非、難波橋に向ひ、又市中の者共は、 賊兵に追立られ焼立られ、這々逃廻りて、天神橋落たるも知らず、或は 水に落死するも有之由。

右往左往に逃走るものを、敵賊共是を捕へて、味方致さば免すべし、無左時は斬捨て候抔と無理に引入れ、車を押させ或は旗を持たせ候由、其内逃走る者は、切捨候も有之由。彼地車四挺へ大筒仕掛け、外に火矢道具・具足・太刀調度に、品々持運び候車も有之。是を荷担の百姓共百二三十人、其外降参の者共多勢に曳かせ、既に難波橋へ差掛かる。此橋も役人村々へ仰付け切掛り候処、段々敵近寄り火矢・大筒の類打掛け候事故、不得止事此番を開く。

 







夫れ彼賊徒終に越えて船場に到り、先づ第一番に鴻池屋善右衛門方家内追立乱入致すの次第、全く盗賊の処意、金銀を奪取り可申存寄にて、隈々相尋ね候得共、兼ねて要害宜しくや有りけむ立退候跡、一切金銀の有所難知、手を束ねて出る由。

夫より分家鴻池屋善左衛門 *2 方へ仕寄せ乱入に及び、此方にては金銀余程奪取り候様子に相聞く。












両方共に火矢にて焼拂ひ、夫より三井店に差懸り候節、戸締要害に相掛け、取片付等致し居候所、表の方掛矢にて打破り、其穴より槍を入れ、夫より八九人乱入。家内のものも恐怖して立騒ぎ候処、鉄炮打掛け手疵を負候者も有之由。夫より火矢を打込、剰へ戸前等致し候土蔵態々開く、火矢三挺程打込み焼立候由。

夫より岩城へ向ふ。是亦火矢数本打込み焼亡して、段々高麗橋へ差掛り候時、西御奉行には東御役所より島町筋・谷町辻より西へ追々押寄り、御祓筋辻にて賊徒の方見渡され候処、高麗橋西詰に押寄せ候と見え、白旗三流 此旗の事奥に委しく出す 押立、橋より東両替町の方へ渡らむと勢ひをなす。

依つて伊賀守殿被召連候玉造方鉄炮組へ早く打留め候様御差図有之。兼ねて仕込居り候事故、何か以て猶予可致哉、二十騎一同に火蓋押放し賊徒を目掛け、筒先揃へて打放込返し打つ。此音に驚き恐れけむ。高麗橋西詰を河岸通り南の方へ逃出で、又々平野橋江差向ふ。此時東御奉行と御祓筋辻にて御出合ひ、御談合の上二手に別かれ、山城守殿には浜通り南へ遠廻しに追詰め候手立にて、御別れ被成候。

 


管理人註
*1 三一書房版は「堀伊賀守家来筆記」
*2 鴻池屋善九郎宅か。


豪商等所在地図


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