Я[大塩の乱 資料館]Я
2003.8.21

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「浮世の有様 巻之八」

◇禁転載◇

御霊猫間川砂持 その2










されども浮かれ立ちぬる人気故、之を少も頓著せざる様子にて、何処彼処の差別なく、鉦・太鼓にて、負けなよ\/\/\/とて大騒ぎにて、地車・囃子等御霊社内へ持込みしに、初更の事なりしが、蝋燭の火倒れて寄進小家へ移り、其火芝居小屋へ移りて、夫より表へ出で、餅家其外出し店等悉く焼失す。

され共大勢群集せし最中故、寄進せし処の金銀・米銭一つも残さず之を取除け、火方と共に出精して火を防ぎしかば、外に餅屋一軒と出し店の類計り焼失せしのみにして、本社を始め末社に至るまで悉く別條なし。

 










社内観音堂の床の下に三年来隠れ住める盗人あり、両人は俗にて一人は坊主の由、火事騷動に依つて露顕し、忽ちに召捕られしと云ふ。御霊は社内に盗賊を構ひ、観音は盗賊の落し宿をなす、何れも不埒の事と云ふべし。男女・老幼、参詣・見物等大群集せし者共大に狼狽へ、総崩れに成つて逃行くことなれば、押倒され踏倒され、怪我人多く有りし事なるべし。翌日に至り御停止と御霊火事にて世間も穏になりぬ。此度人気の浮立ちぬる有様にては、如何なる大変も出来ぬる事もあらんかと思ひ、密に案じ煩ひしに、此位の火事にて事済みぬるは大幸と云ふべし。

 


「御霊猫間川砂持」その1/その3
「浮世の有様」大塩の乱関係目次3

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