Я[大塩の乱 資料館]Я
2003.8.28

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「浮世の有様 巻之八」

◇禁転載◇

御霊猫間川砂持 その3















猫間川を玉造へ掘抜き、道頓堀へ船の往来成りぬる様になして、玉造の繁昌をなさしめんとの趣意なる由、こは定めて表向の事にして、内実の処は御城要害の為に外堀の構へになれる事ならんと思はる。

既に昨年大塩が乱妨の節、大川の橋を切落し、夫故直に御城へ向ふ事なかりしかば、是等の事より思付き、若し咋年の如き乱妨ありて、御城の南手より押来らば之れを防ぐの手術なく、御城迄も押寄せらるゝに至らば如何んとも為し難しと、其用心よりして之を申立てゝ、爰に至れる事と思はる。

され共銀の簪其外金物類に金銀を遣ふ事をば、厳しく御法度仰出さるゝ中にて、莫大の金銀を捨て費し、縮緬・天鷲絨・羅紗・猩々緋の類ひ切散じ、是を身に纏ひ、不法なる大騒をなす事は申に及ばず、高金を出さゞれば手に入難き鼈甲にて作るれ櫛・簪等の事は、聊か御頓著も之無き様子なり。

又近年凶年にて諸人大困窮せし上に、西御丸御炎上、夫に付いては種々無量の風説あり。其中にも「せいひつの破れかゝりし江戸合羽天が下には心許すな。」此の如き落首抔江戸にてなせし者有るなど、専ら善からぬ風評なれば、踊に紛らし人気を鎮めんとの手段の由云ひぬる者もあれども、困窮の国々多く、又所々に一揆・内乱等有りて、諸国穏ならぬ時節なるに、大坂計り飛上り踊り廻り、人気夢中になりて、うかうか目月を送りぬればとて、何の益にもなりかたきことならんと思はる。既に先年川口に波除山 天保山と云ふ 出来して、市中大騒きにて莫大の黄金費しゝ事也しが、是よりして入船の模様至て善からぬにぞ、又二百間海中へ坡塘を築出す、之より後は其坡塘へ船を打付、船多く打砕きしかば、忽ち之を取払ひとなる。され共海中へ多くの捨石をなしたる事なれば、水際より下の石をぱ取上る事なり難し、是何時迄も大なる川口の病と云べし。

 


「御霊猫間川砂持」その2/その4
「浮世の有様」大塩の乱関係目次3

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