玄関へ/「浮世の有様」目次(抄)
五月奥州に一揆起り騒動せしと云ふ。 晦日曇、已の刻徴雨、夜に入大雨冷気甚し。肥後米一石百二十五匁、之は公儀より巌しく御取締有る故に、是より直段引上ぐる事なり難儀き故なり。さらば米一石を買はんといひぬれば、百三十五匁位価を出さゞれば手に入る事なし。稲に実のれる時節に到り、此の如き雨天続にて冷気甚しき時には、大に不熟なれども、当時にては少しも構ふ事なく、稲も程能く立延びて株も十分に張りて、さのみ稲の構ひになれる程の事には非ざれ共、種々様々の風説をなし、米価を引上げんとのみ計りぬる事悪むべき事なり。かゝる悪商共三五人程宛毎度召捕られぬれ共、頓と絶ゆる事なし。 七月朔日晴、之よりして天気定り暑気も烈しくなりて、二日・三日・四日とも晴天にて残暑益々甚し。こゝに於て姦商もせんすべなくて、米価十匁計下落するに至る。
七月二日御城代井上河内守殿著、四日御入城有り、近来盗賊五七人程づつ一組になりて頻に徘徊し、処々方々に押入をなし、土蔵の錠前を焼き切るなど甚しき事なりと云ふ。其外白昼に家々の昼寝油断等を考へ、密に物を盗める賊抔沢山の事なり。処に寄りては大抵戸毎に物を取られぬる事なりといへり。
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