| 水戸侯の触書 その2 |
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| 米 価 騰 貴 と 売 買 の 取 締 り |
米価の儀、当春已来追々引下り候処、土用前後不順の気候にて人気相動候故哉、又候直段引上げ候。去年作方宜しく、当年迚も気候見競候ては、存外出来方宜しく相聞え、新穀入津も相進み物沢山に有之候処、払底にも可至との人気にて、買持ち居候分は不売出、猶買持候様仕成候者有之候に付、糶売に相成り弥増直段引上候哉にも相聞え、以の外の事に候。堂島米方へも精々申渡置候事に候へ共、搗米屋を始め米売買に携候者共、素人にても一己の利徳に不抱、時節を弁へ直段引下げ候心得を以て売買可致候。此上にも高直に可相成と見越候て、占売又は多分の買方致し候者有之候はゞ、無用捨召捕急度可及沙汰候。右の通三郷市中不洩様可申聞候事。 其後も引続度々御触之有候へ共、米価次第上りにて無上(むしやう)に高く、肥後一石百三十八匁、小売米一升に付百四十八文より六十八文位、土用前より土用中雨天続きにて北国大しけ、米穀皆無なるべしなど相場方の者共風説をなして、大に人気を狂はし米価次第上りになりぬる程の事なるに、此節越後古千谷より本町呉服屋、中屋善兵衛方ヘ申来りし彼地の相場付を見るに、米四斗四升俵、代金二歩二百文。大豆・小豆六斗にて金三歩と云ふ事なり。大坂の直段に比すれば至つて安き事なり。只何事に寄らず一つとして善き噂をなす事とてはなく、専ら悪説を云ひ散らし、諸人を苦しめて己を利せんとす、姦商の所業憎むべし\/\/。
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