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「浮世の有様 巻之八｣

『国史叢書 浮世の有様 ４』（矢野太郎編 国史研究会 1917）所収

飛 田 に 於 け る 処 刑 大 塩 平 八 郎 大 塩 格 之 助

同十八日於飛田御仕置の次第　 　　　　 大坂町奉行東組与力大塩格之助養父 　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　 大塩平八郎 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大塩格之助 　此者共儀、平八郎は表に謹厳の行状を飾り、文武忠孝の道を講じながら、 　内実養子格之助へ可嫁合約定にて、養置候摂州般若寺村忠兵衛娘みねと 　及姦通、殊に諸人の信用に随ひ慢心を生じ、軽き身分不顧御政道を批判い 　たし、其上浅はかなる儀にしても不容易謀斗を企て、師命を称し愚味の門 　弟等を感伏為致、追て米価高直諸民難渋の折を窺ひ、仁慈を行ふ存立に託 　し、又は同組与力・同心等の気合を量り、品々奸舌を以て不平のの志を募 　し、夫々一味連判に引入れ、猶人気靡候ため、所持の書籍其余摂州兵庫西 　出町長太夫等申掠出金為致、買調の書物類をも売払ひ、一己の慈善に申成 　し、右代金難渋人へ施遣し、或は叛賊の名聞を厭ひ諸民を惑乱可為ため、 　無思慮大言を綴り、不怪文言をも認載候檄文を村々へ為捨置、剰へ名家の 　末孫抔と申触、救民計議と偽唱へ計策を以て奉行を討取り、大坂御城を初 　め諸役所并に市中をも焼払ひ、豪家の金銀を窮民へ分与へ、一且同国甲山 　へ可楯籠旨申合せ、右企露顕の期に至り、逆意に不随門弟宇津木矩之允を 　為及殺害、一味荷担の者共一同兵具を帯し、鎗・長刀等携へ、恐多き文字 　を書記候旗押立、百姓共を申威し、多人数徒党を結び、大筒・石火矢等を 　打払ひ、所々放火及乱妨、捕方役人へ敵対致し、格之助儀も右体の企申合 　ひ愚民を誑惑致し、平八郎倶々叛賊の所業、及び捕方人数に被打立、銘々 　逃去候後、油掛町五郎兵衛を申威し同人方に忍び罷在候始末、不恐公議仕 　方、重々不届至極に付、両人共塩詰の死骸引廻しの上、磔に行ふ者也。

処刑図　『甲子夜話』 (松浦史料博物館蔵)より