Я[大塩の乱 資料館]Я
2013.5.30

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩中斎』

その22

山田 準(1867−1952) 

北海出版社 1937 『日本教育家文庫 第34巻』 ◇

◇禁転載◇

中篇 学説及教法
 第五章 気質を変化す
管理人註
   

 気質変化の説は、張横渠に見ゆ、曰く「為学大益。在自求化気 質」と。朱子は性を本然と気質とに分ち、気質には悪ありと見る、故 に気質を変化することは朱子学に於ては、重要の教説となる。王子は気 質を悪と見ず、剛性の人は剛的に、柔性の人は柔的に修養せば可なり、 要は人欲を去るに在りと見る。故に殆ど気質変化に論及せず。中斎は気 質を見ること稍王子と異なり、王子の謂はゆる客気勝心を寧ろ気質と見 たやうである。其言に曰ふ、  吾輩は、心の本体、謂はゆる至善、謂はゆる中、謂はゆる太極なるも                ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○  のを見んことを要す。然らば障翳する所の気質は、宜しく先づ変化す   ○ ○  べし、然らずば徒学空談なり。  それ気質を本体の障翳と見るならば、猛然として之を変化せねばなら ぬ。此に至れば、中斎の気質は、即ち王子の人欲と同一に帰するのであ る。故に又曰ふ、  常人方寸の虚は、聖人方寸の虚と同一の虚なり、而して気質は則ち清  濁昏明、年を同じうして語る可らず。方寸の虚は、便ち是れ太虚の虚                              ○ ○ ○ ○  にして、太虚の虚は便ち是れ方寸の虚なり、本と二つなし、畢竟気質、   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○  之を牆壁するなり。故に人は学んで気質を変化せば、則ち聖人と同じ                                 きもの宛然として布照耀し、包涵せざるなく、貫徹せざるなし。嗚    ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○  ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○  呼気質を変化せずして学に従事する者は、其の学ぶ所、将た何事ぞ陋   ○ ○ ○ ○ ○  と謂ふべし。  気質変化の説は、中斎に在つては、既に太虚の條に於て言へる如く、 自己の性向よりして自己を完成すべく、緊切の手段であつたらう。従つ て又た中斎着力の処を窺ふべきである。



『洗心洞箚記』(抄)
その9
















障翳
(しょうえい)
覆いかざすこと












『洗心洞箚記』(本文)
その11
 


『大塩中斎』目次/その21/その23

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