承認の調整機能
465



親子・夫婦のような身内の人間関係にせよ、職場のような他人の人間関係にせよ、お互いの考え方が100パーセントの一致をみることはありえません。大筋の方針に同意していても、不一致点はずいぶんあるものです。またどんな相手にでも欠点は見出せるものです。

この不一致点や欠点は排除すべきものでしょうか。たとえば殺菌・消毒が発達し過ぎた結果、かえってアレルギー(たとえばアトピーなど)が蔓延しているのが現状です。許容範囲の不一致点と共存するほうがかえって自然の理に適っているのです。ばい菌を排除すればかえって害その身にいたる、ということなのです。

・水清ければ魚住まず
・清濁併せ呑む

といった格言はこのことを言っているわけです。許容範囲の不一致点や欠点をそのままにしておくと、自然に解消したり、意外な好ましい展開がしばしば待っているものです。

承認という行為は功徳であると以前書きました。功徳であるから不思議な力を持ち合わせているのです。つまり承認することで、不一致点や欠点は最も好ましい形で調整されていくのです

たとえば私の職場のKさんとは、私が着任当時いろいろなことでずいぶん対立したものです。

「反対です」

と面と向かって言われたこともありました。しかし、承認しつつやって来て、ある日こうした対立が全くなくなっていることに気がついたのです。

もし不一致点や欠点を槍玉に挙げてあげつらったとすれば、決してこうはならなかったでしょう。不一致点や欠点が許容範囲なら、敢えて語らず承認するのが人生の知恵というものです。

承認は不思議な調整機能を持っています。それが功徳たる所以なのです。

まだまだ責めたりとがめたりすることで不一致点や欠点を排除しようとする向きが多い。責めたりとがめたりは承認に逆行する行為です。お互いいやな思いをするだけで、効果もなきに等しいのが実情です。承認の精妙な調整機能を知れば、聡明さに欠ける行為だと言わざるをえないでしょう。

承認は功徳だ
464



人間は絶え間なく自問自答を繰り返しながら生きています。いろいろな自問自答がありますが、煎じ詰めれば、

・「これでいいだろうか?」「これでいい」

・「自分にできるだろうか?」「大丈夫、自分はできる」


ということでしょう。つまり、自己承認に尽きるというわけです。

これが実情ですから、他人から承認してもらって、自己承認を後押してもらうのは、生きて行くうえで必要なのです。

もちろん順調なときは自己承認だけでやっていけないことはありません。しかし逆境にあって、自信や信念が揺らぐ苦しい時期は必ずあるものです。いやむしろそれが普通だと言っていい。他人から承認してもらうことで、どうにか自己否定を跳ね飛ばし、頑張り抜くことができるわけです。

だから他人を承認してあげることは、まず間違いなく善行と考えていいと思います。

仏教には因果律という考え方があり、ひと言で言うと、

「善行は自分に返って来る」

とされます。だから承認という行為は功徳を積む行為なのです。他人を承認することで、結局有形無形の功徳が結果として自分に積み上がっていくわけです。その結果本人にいろいろいいことが起こります。「徳のある人」とはどんな人なのか、それは取りも直さず「他人を承認してきた人」でしょう。

「承認は功徳である」

寡聞にしてこういう主張は聴いたことがありませんが、一面の真理であることは間違いなかろうと思います。

配偶者の承認
463



「子は親の承認を必要とする」

これは教育現場でよく言われることです。しかし、この親子関係にも増して重要で重いのが夫婦関係です。意外に看過されているのが、

「配偶者の承認が得られるか得られないかで人生に大差がつく」

このポイントです。「あげまん」「さげまん」という言葉がありますが、妻が夫を承認してくれるかくれないかで、男性の意欲・気力にそれほど段違いの差が出るのです。夫婦喧嘩の後は夫の意欲・気力はとも後退し、惨めなものです。

これは奥さんとて同じことで、夫に承認されなければ、気が晴れず鬱々とした毎日を送ることになります。

つまり、結婚している限りはお互いがお互いを承認し合わないと損だ、ということになります。よく考えてみると、配偶者間の承認はお金がまったくかからないのです。このタダのファクターで人生に大差がつくのであれば、どうすれば得なのか、自ずから明白ですね。

つまり、配偶者にはサービス精神を目一杯発揮して承認すべきだということ。そうすれば承認という行為が有形無形の功徳になってお互いに返って来るというわけです。

プライド
462



「彼はプライドが高い」

これは通常ネガティブなコメントです。しかし、プライドが高いというのは悪いことなのでしょうか。プライドが高いということは、とりも直さず、自己が承認(肯定)できる、ということです。自己承認ができないでプライドが高いことはありえないでしょう。だからむしろプライド高くあるべきなのです。

このコメントで焦点が当たっているのは、

@考え方の柔軟さ
A謙虚さ
B素直さ
C思いやり

といった点が「欠ける」ということです。だから@〜Cが確保できたらよいだけの話です。間違っても、「プライドが高いのはよくない」とか「自己承認は悪である」といった理解をしてはダメです。プライドのない人間は存在意義に欠けるし、事実役に立ちません。

自分で自分が承認できないということは、意欲・気力が萎えているということだからです。自分で自分を承認できなくなることを「落ち込む」とか「凹む」とか言いますが、そうした状態に立ち至ったときは全力で自分のプライドを取り返す努力をすべきなのです。

プライドはいくら高くても高すぎることはないと思います。プライドこそ自己承認そのものであり、信念の源泉だからです。

@〜Cがないプライドの高さは、本当にプライドが高いわけではなく、劣等感の裏返しと取るべきなのです。自分のプライドが十分高まったとき、@〜Cの美徳が自然と手にできるのでしょう。だからホンモノほど@〜Cの美徳を十分持ち合わせているのです。

座右の書
461



座右の書という言葉があります。

つまり、困ったとき、悩んだときにひもとけば解決の指針が与えられる本です。たいてい真理の書であり、宗教的・哲学的な書です。たとえばビジネスマンで中村天風の本を座右の書とする人は結構います。

私は座右の書はトラインの『無限者との協調(In Tune with the Infinite)』ですが、これに行きついたのは30前で、結婚したかったのだがうまくいかず、失恋ばかり繰り返していたころです。

座右の書は平時に読んでも頭で読んでしまい、心から合点がいくわけではありません。しかし、困ったとき、悩んだときに求める心で読めば、乾いた大地に水が滲み込むように吸収できるものです。

パーソナル・コーチングではクライアントさんに積極的に座右の書を持つことを奨めるのがよいと思います。クライアントが適当な書籍を知らなければ、コーチが推薦するのです。コーチングでクライアントが座右の書に出会うように導ければ、コーチングは何倍何十倍も効果的になるものです。

パーソナル・コーチングでは座右の書を積極的に推薦するべし、こんなことはコーチングの教科書には書かれていませんが、大切なポイントです。ただ私自身は他人にオススメするときは自分の座右の書ではなく、中村天風『運命を拓く』とか五井昌久『神と人間』、場合によってはマクマナス『ソース』を相手の状況に応じて選んでいます。

ただ座右の書は人によって合う、合わないがあります。私が座右の書と思っても、相手がそれほどには思わないというのもよくあることです。この場合は絶対自分の価値観で相手を裁かないことです。各人各様でそれぞれの個性はみな異なるわけですから。

昔のクライアントさんからお便りをいただいて、オススメした座右の書をいまだに折にふれて開いている、と言っていただいたりすると、私も心からうれしく思います。
500 ADD
499 具体的で辛口の承認
498 承認は「ノリ」というプラス・アルファを生む
497 承認を少しでもいいから絡める
496 木に登らせる

*
495 ペーシングなんて
494 コーチングはスキルではない
493 コーチングの種類について
492 嫉妬と承認欲求
491 承認欲求

*
490 自己実現欲求と承認欲求は表裏一体
489 究極の自己承認
488 相槌・うなずき・オウム返し
487 成功哲学と自己承認
486 承認とは自己承認の増幅

*
485 インターネット・マーケティング
484 とにかくいい時代
483 四十肩(五十肩)
482 夏の思い出(パート2)
481 夏の思い出

*
480 日経経営セミナー(大阪)
479 次の志
478 志がなくては
477 立志の自己承認
476 相手がある問題

*
475 まず自己承認を確保せよ
474 窮地を乗り越えるとは
473 積極心とは、信念とは
472 承認は人生だ
471 すみやかな忘却

*
470 承認の世界は生ぬるい?
469 「叱責」は「愚か」
468 承認は承認を呼ぶ
467 承認の世界に生きよ
466 メールは真剣勝負

*
465 承認の調整機能
464 承認は功徳だ
463 配偶者の承認
462 プライド
461 座右の書
*
460 寛容さ
459 すべてを承認につなげよ
458 昼間何をするのか
457 値上げだと?
456 臭くあるな、らしくあれ

*
455 気安くほめるな
454 社会経験
453 ルールの違い
452 うまく辞めさせるのもビジネス・コーチングのうち
451 「げっそり感」はコスト


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