会話術に拘泥せず、加点主義を身につけよう
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巷間たくさんのコーチング書籍が売られています。手にとって頁を繰れば、中味は上司・部下の会話例が満載です。そのため一般人は、

「そうか、コーチングとは職場の会話術なんだな」

と考えてしまうでしょう。私もはじめはそうでした。と同時に感じたのは、載っている会話例がなにかきれい事という感じが否めない、ということです。世間には一筋縄でいかない難しい相手が多い。そうした相手にこうしたきれい事の会話例は通用しないだろう、と思ったわけです。おそらく同じように感じる人は多いことでしょう。

基本的に巷間のコーチング書籍に載っている会話例は、コミュニケーションをする双方、たとえば上司と部下や同僚同士の人間関係が良好、という前提で書かれています。しかし、実際は批判・叱責されることだって日常茶飯事です。人間関係が良好な人ばかりとは限りません。関係のこじれた相手とどう対処するか、この点においては巷間のコーチング書籍の会話術は参考にはなっても、解そのものではないな、と感じたわけです。では何が解なのか。

職場のコミュニケーションに求められるのは、相手との人間関係がよくない修羅場のような状況下でも使い物になるということです。とくに苦手な相手、問題のある相手をいかに対処するか、というのがポイントであると考えます。苦手な相手、問題のある相手をどう対処し、どう人間関係を築いていくか、これができるのが風雪に耐えるホンモノのコミュニケーションでしょう。

ところで、世の中にはネイティブ・コーチと呼ばれる人々がいます。とくにコーチングを学んだことはないが、コーチングを自然に身につけている人のことです。こういった人はそこかしこの職場に少ないながら存在します。これらの人々を仔細に観察すると、ある種の人生観を持っているということがわかります。これを私は「加点主義」と呼んでいます。

理想からの減点で相手を理解するのが減点主義です。加点主義は、

「この相手はこうした人なのだ」

という健全な絶望感から出発し、ゼロからの加点で相手を理解するという考え方をします。意に沿わない相手でも、あえて相手のあり方を否定せず、長所すら見出せるのが加点主義なのです。こうした加点主義の人生観を持った人は、人を見る視線が温かです。その結果、人使いが上手で、かつ慕われるという共通点があるわけです。

ならば、コーチングを身につけるには加点主義を研究すればいいわけです。要はモデリングということです。そのためには細かなスキルの会話術としてコーチングをとらえるのではなく、考え方(コンセプト)としてコーチングを大づかみにするのが正解であると考えます。そのコンセプトはもちろん「加点主義」であるわけです。

コーチングの外面上の体裁を整えるのはすこぶる簡単です。

@批判・叱責をやめる
A意識的に相手を肯定(承認)する

これだけでOKです。この2つが確保できていれば、少なくとも外面上はコーチングとしてサマになります。しかし、単に付焼き刃で批判・叱責を我慢し、口先だけで相手を承認しても、それは必ず言葉の端々に出て、相手にわかってしまいます。だからこうした会話のテクニックだけでは相手に対して感化力がないわけです。コーチングが真に機能するためには、加点主義が身についていて、相手を感化できることが必要なのです。

加点主義が真に身についているかどうかは、問題のある相手にいかに対処できるか、で簡単に検証できます。減点主義なら、たとえば仕事のできない新入社員に対して、

「君の仕事ぶりはなってない。この調子だと、君、先がないよ」

とつい言ってしまうことでしょう。しかし、加点主義なら、

「仕事を指導するのは僕の責任だ。君が周囲の期待に応えられていないのを申し訳なく思っている。僕が今、君にできることはないかな」

という感化力のある言い方が可能になります。状況がここまで来ているのなら、この新入社員は十中八九見込みがないでしょう。しかし、あるいはこのひと言で彼は変わるかもしれません。

コーチングを身につけるには会話術に拘泥せず、加点主義を身につけよう、これは最近私がセミナーで提唱していることなのです。

引き寄せの法則の扱い方
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ベストセラーの『シークレット』に見られる「引き寄せの法則」ですが、

「あなたの境遇はあなたが引き寄せたもの」

という心の法則だけの説明では、障害のある人、不幸の絶えない人、そして不運な人には救いの言葉にはほど遠いでしょう。

「私がこうなのは私の責任だ」

「あの人がああなのはあの人の責任だ」

と自分を責め、他人を責めていたのでは、非情そのもの、何の救いも見当たらないと言うしかありません。

たとえば、コーチングで「引き寄せの法則」を盾にとって、コーチがクライアントさんに向かってこのように言ったとします:

「あなたがうまくいかないのは、あなたが原因なのですよ」

おおよそコーチングと呼ぶ価値はないと思います。

コーチが洞察力がなく、単に脳天気なだけの人ならこんなふうに言うかも知れません:

「深刻に考え過ぎですよ」
「そんなに気にすることはありませんよ」

単に楽天的な気休めを言ってもらっても、その程度のことでは、お金を払ってコーチングを受ける価値はないと思います。これではそこいらの世間話と大差ないではありませんか。

コーチは「引き寄せの法則」を正しく扱えなければならないのです。やっぱり、五井昌久先生が言ってるように、悪いことが起こったときは、

「過去世の、あるいは今生の業がまたひとつ消えて行ったんだ、また清まって進化したんだ」

と考えるのがベストです。そしてこの考え方を噛み砕いてクライアントさんにお伝えできなければならないのです。そして、この説き方は「引き寄せの法則」と決して矛盾しないですね。

クライアントさんの消極的な思考を積極的な思考に振り向けてこそ、コーチングの付加価値はあると私は信じる次第です。

シークレット
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以前クライアントだった知人から、シークレットのDVDを教えてもらいました。下記です。

http://jimaku.in/w/_b1GKGWJbE8/ae1POlJjQMK

この手の心の法則の扱いでよく陥る陥穽があります。それはうまく行かなかったり、ひどい目にあったりした場合、

「それは自分が引き寄せたものだ」

と自分を責め、そして

「自分は悪い結果を夢想するから、悪い結果を引き寄せるのだ」

と悩んでしまうことです。にあるゴールを達成したいのだが、何度かトライしてもうまくいかない。

「これは簡単なことではないな」

と考えざるを得ないわけです。正直なところ、再度トライしても、

「今回もちょっと難しいかもしれないな」

と思わざるを得ないでしょう。ではこうした想いが失敗を引き寄せるのか。失敗ためには「浮かれたような熱狂」が必要なのではないだろうか、と考えてしまいがちです。

しかし、ネガティブな想いが湧き上がってくるのは人間避けられないと思います。だからネガティブなイメージを微に入り、細に入り突き詰めたりせず、電車の車窓の景色みたいにやり過ごす。ネガティブな想いにとらわれず、ほかの事を考えて楽しい気分を維持する。実際問題、これしかやりようがないと私は思います。

結局、望みは時間がかかるかも知れないが、早晩叶うのだ、と楽天的に考えて、日々愉快な感情で生きる。そして、失敗しても気を取り直して努力する。これに尽きるのではないかと考える次第です。

チャレンジという概念
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「自分に自信が持てないのですが、どうすればよろしいか」

という話題はよくコーチング・セッションでもクライアントさんから出てきます。要は自分の現在の実力を自分で承認できない、ということですね。その結果、

「失敗したらどうしよう」

という恐怖感がある、これが「自分に自信が持てない」という発言の実態でしょう。私は、

「失敗するかもしれない、だがそれがチャレンジというものじゃないですか」

申し上げることにしています。これが開き直りということです。開き直るというのは、自信を代替するものなのです。

なぜかというと、チャレンジだと開き直ると、自分の能力は自分自身で肯定できなくても、自分の生き方は自分自身で肯定できます。つまりチャレンジという概念は、能力を生き方に擦り替える結果、自己承認の不足をうまく補ってしまうのです。そもそも天才が成功するのは当たり前です。そうではなく、凡才が一生懸命チャレンジする、これはどう考えても尊いではないか、と凡人の私は思うのです。

だから、自分に自信が持てないという人が手っ取り早く自信を補おうとすれば、チャレンジだと開き直ればいいわけです。

ただし、これは失敗しても再起できるような環境作りが不可欠です。だから、

「背水の陣を引く」
「退路を絶つ」

という選択は疑問です。リスク管理から言ってもリスクが極大になることで、賢明な選択とは言いかねるのです。再起できるような環境作りをして何度でもチャレンジする。そうした生きざまから自信が涵養されるのだと思っています。

自分の実力に対して自信をつけようというのなら、キビシイが出来るまでやるしかないわけです。

自己承認に長けた人格
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あなたが他人から不当に批判されたり、叱責されたとします。もちろん傷つきます。

で、人が他人から批判されたり、叱責したときに人が一番希求することは何か。それは別の人が批判されたり叱責されたりしたことを、

「あなたは間違っていない」

と承認(肯定)してくれることでしょう。しかし、現実にはそんな心強い人が都合よくいてくれるわけではないです。だから、代わりに自分で自分を承認(肯定)するしかないわけです。

だから、他人から批判・叱責されて立ち直りが速い人は、自己承認に長けた人ということができるでしょう。つまり、常に意識的に内面の真我と対話して、常に真我の承認を受けて日々生活している人が、すばやく立ち直るわけです。もっと修行を積めば、批判・叱責されても平気で受け流せるようになります。

いずれにしても、批判・叱責に対しては、自他の承認で毒消しをする必要があるのです。コーチングでは当然、クライアントさんを何らかの形で承認して、毒消しのお手伝いをします。しかし、目指す究極のところは、クライアントさんがコーチとの対話を通じて、ふだんから自己承認に長けた人格を創り上げて行っていただくことです。
950 志は不遇の時期にこそ立てるもの
949 LASIK
948 親方スタイルと現場監督スタイル
947 森を十分俯瞰する
946 被害者ではなくクレーム処理係と考えよう

*
945 指摘されなかった良いところに焦点を当てる
944 叱責のきつい相手と付き合う法
943 想いが強み
942 これからですよ、十分戦えますよ
941 想いを持つには自分の価値に気付くことが必要

*
940 武士道的組織論
939 水たまりの水
938 才能は欠落
937 挙手の求め方
936 受講態度の悪い人

*
935 本音を打ち明けたい人になるには
934 減点主義の毒消し
933 日創研の自己啓発セミナー
932 ボス・マネジメント(ボス・マネ)
931 イヤな相手はこう躱(かわ)そう

*
930 会話術に拘泥せず、加点主義を身につけよう
929 引き寄せの法則の扱い方
928 シークレット
927 チャレンジという概念
926 自己承認に長けた人格
*
925 語ってもらってまず切実さを理解する
924 批判・叱責に強くなるためには
923 自分に自信が持てない人
922 人はどうして承認が必要なのか
921 聖人とか悟った人というのは

*
920 大本営方針
919 雑誌SPA!のバイト特集
918 スピーチは心ここにあらずの聴衆を引き込むもの
917 志の欠落は否定形
916 死守しなければならない原則

*
915 アイスブレーク
914 他人にどう思われるか、という心配
913 敢えて組織のお荷物になろう
912 独自路線
911 人の振り見て我が振り直せ

*
910 陰ながら応援してますよ
909 コーチングは切実な想いのみをサポートできる
908 ストレスを感じたらその時点でガス抜きをする
907 悩んでいる人が落ち込む陥穽
906 この際社会勉強のつもりで行ってみませんか

*
905 3時間のセミナー
904 悩みと夢
903 『変なおじさん』というギャグ
902 新婚さん
901 積極心とは


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