Я[大塩の乱 資料館]Я
2013.12.7

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「大塩の乱関係論文集」目次


『大塩平八郎』

その90

香川蓬洲

精華堂書店 1912

◇禁転載◇

第十八席 (4)

管理人註
   

          さきぜい  扨また跡部山城守の先勢として立向ひましたる、彼の阪本源之助、本多 為助の両人は、今や大塩勢の一人江州彦根の浪人梅田源左衛門が、火術の          おほづゝ       きら 名人を見えまして、大砲の火蓋を切んとする有様を見るより、源之助。為 助の両人は囁き示して、両人一同に小筒の狙ひを定め、梅田源左衛門を討 たんとして居りました、フト為助が向ふの軒下を見ると、用水桶の小蔭に 大塩方の一人が、鉄砲の筒先を源之助の方に向けて狙つて居ります容子、 南無三、討たせてはと為助、小声になつて。             ゆんで             『阪本、コレ阪本氏、左手の方を見られよ、ソレ、彼の用水桶の小蔭 を』  と注意をしても、源之助は、一心不乱に梅田源左衛門を狙つて居ります                        うち から、為助の云ふ事が耳に這入りません、猶予する中に討せてはならんと                              とつさ  うち 思ひまして、為助は今まで源左衛門の方へ向けて居た筒先きを、咄嗟の中     に向け転へたる事にして、用水槽の小蔭に忍んで居る、曲者目懸けて打放 しましたのと、曲者が源之助目掛けて討つ鉄砲と、一時でございましたが、 どちら                              た ま 何方も狙ひが外れて、源之助の方は陣笠の右の端を、少しかすつて、弾丸 は向ふの家の格子に当りました、此時に源之助が打放した弾丸は、梅田源 左衛門の左の腰のつがひを討ちましたので、源左衛門は其場に倒れたが直 ぐ飛び起きて。    おのれ  『汝ツ』                         こなた  と云ひながら、刀を抜いて源之助に立向ひました、此方も鉄砲を投捨て、 同じく刀を抜いて暫らくは、火花を散して戦つて居る処へ、安田図書が駈                    こちら 附け来たり、源左衛門に加勢を致します、此方はまた為助が源之助に加勢      うち をする、其中に敵も味方も追々加勢が殖えて来て、大合戦と相成りました が、此時大塩方が十二三人ばかり討死をいたしました、又梅田源左衛門も 最初に受けたる傷の為めに、次第に太刀先も狂ひ出し、遂に山城守の手勢 の一人、名もなき者の為めに首を打たれました。  どうも此戦ひの処を余り詳しく申し上げて居りますと、却つて御退屈で もございませうし、また昔のやうな、太閣記とか、川中島とか、また源平                          の戦ひだと面白い処が沢山あるが、幾ら大塩が軍略に長けて居つても、も、        つはもの               やから また五人や十人強者があつても、味方の多くは烏合の輩だから、少しでも 大将に負け色が見えると、一同が浮足になつて、一人去り、二人逃げと云 つたやうな塩梅に逃げ出すなど、実に腑甲斐ない合戦でございますから、 モウ戦ひの有様は此位にいたしまして、面白い処を引続いて申し上げます。                 ま け  扨唯今も申上げましたる如く、敗北色が立つて来たので、大塩勢は四方 八方に散乱し、大将大塩平八郎、同じく格之助、其他重立たる処の者は何     ど う 処から如何して逃げたのか、行方が知れなく相成りました、そこで両町奉 行の同勢は、敵の取残したる処の武器其他の品々を、夫々取集めて引上げ、                        てくばり 一方は大塩親子を初め、其他の者の行方へ捜す事の手配をいたし、一方は    また未だ最中焼けて居る民家の消防に力を尽す事になりました、尤も此騒 動も、思つたよりは早く鎮まりましたやうなものゝ、まだ/\安心は出来 ない。


坂本鉉之助
「咬菜秘記」
その12

石崎東国
『大塩平八郎伝』
その120

幸田成友
『大塩平八郎』
その141 


大塩の乱銃撃戦
 発砲記録(幕府方)
 


『大塩平八郎』目次/その89/その91

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