方寸之虚、与太虚
不可刻不通也。如
隔而不通焉、則非
生人也。何者、今
以物塞乎口中、
即方寸之虚閉、而呼
吸絶矣、忽為死人。
故方寸之虚、不可
刻不通於太虚也。
是無他。以太即心
之本体故也。亦何
疑也哉。
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しばらく
人の方寸の虚は、刻も太虚と通ぜずに居ることは出来ぬ。
もし
如、隔てゝ通じさせぬならば、それは生きて居る人ではない。
何となれば、今、物を以て口中を塞げば、方寸の虚は閉ぢら
れて了ッて呼吸は絶えてしまふ。そして死人になッて了ふ。
しばらく
故に方寸の虚は、刻も太虚と通ぜずに居ることは出来ぬとい
やが
ふのである。是れ何が為か。太虚は即て我が心の本体だから
である。此の理頗る明にして、何等疑ふ余地もない。
我が精神はやがて宇宙である。此の語、科学的、物質的
には大なる意味をもなさぬが、精神の具体化的説明とし
ては頗る興味がある。
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『洗心洞箚記』
(本文)その186
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