潤 之以 風雨 、
故品物資 其潤
沢 而生長。然
人撤 壁去 屋、
露坐露寝、則
必為 之所 傷、
而病不 死者鮮。
読 書亦然。書
固入 道之具也。
然不 知 要而
泛観博覧、則
徳壊而悪殖、
吁、亦敗 己乱
世、可 不 慎
哉。
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天の万物を養育するや、風雨を以て之に臨むが故に、万物
たす
は、其の潤沢に資けられて生長する。然しながら、人若し、
をく ど う
壁を撤し、屋を去り、露坐露寝すれば、如何であらうか。必
ずや、万物の生長を資くる其の同じ風雨の為に、或は傷けら
れ、或は病を得て死なぬものは蓋し鮮なからう。読書の利弊
たとへ
も亦此の比喩によッて考ふべきである。書は固より修道の具
くら
である。智識の庫である。けれども、其の良、不良の要を弁
はんくわんはくらん やぶ
ぜず、手当り次第、泛観博覧するに於ては、反ッて徳壊れて
ふ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
悪殖うるに至る。書は修養の要具ではあるが、何等の選択も
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○みだ ○
なく乱読するに於ては、己を敗るのみならず為に世をも乱す
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に至らざるを得ない。慎むべきでは無いか。
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『洗心洞箚記』
(本文)その8
鮮(すく)なか
■(欠字)
「慎」か
■(欠字)
「少」か
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