開眼俯仰天地以
観之、則壊石即吾
肉骨、草木即吾毛
髪、雨水川流、即
吾膏血精液、雲煙
風籟、即吾呼吸吹
嘘、日月星辰之光、
即吾両眼之光、春
夏秋冬之運、即吾
五常之運、而太虚
即吾心之蘊也。鳴
呼、人七尺之躯、
而与天地斉乃如
此。三才之称、豈
徒然哉。宜変化
気質、以復太虚
之体也。
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○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ つち ○ ○
眼を開け。而して天地に俯仰して、以て大観せよ。壌や石
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や、其は即て我が肉、我が骨では無いか。草や木や、即て我
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が毛髪ではないか。雨水や川流や、其は即て我が膏血我が精
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ いぶき ○ ○ ○ ○ ○
液では無いか。雲煙や風籟や、其は即て我が呼吸では無いか。
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ かゞやき ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
日月の光や、星辰の 輝 や、其は正しく我が両眼の光では無
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いか。春夏秋冬の運や、其は即て我が心に具はれる五常の運
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○おほおく ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
では無いか。而して太虚は、我が心の蘊、而も一切を葆含し
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て、遺すなきの実在である。あゝ我等人間七尺の躯、而も天
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地と其の性を斉しうする此の如きものがある。三才の称、決
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して無意味では無い。とは言へ、此のまゝにして何等の修養
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もなくば、其はたゞ一個七尺の小肉塊たるに過ぎない。苟も
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真に天地の化育に参せんとならば、我欲の気質を変化し、太
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虚の本体に帰るべく努力して、以て日に月に新にする所があ
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らんければならぬ。
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『洗心洞箚記』
(本文)その27
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