Я[大塩の乱 資料館]Я
2015.2.6

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『通俗洗心洞箚記』
その34

大塩中斎著 下中芳岳(1878-1961)訳

内外出版協会 1913

◇禁転載◇

上巻 (30) 三〇 常人と苟の失

管理人註

常人動作云為、只 苟而已矣。臨財 苟得、臨難苟免、 苟、苟笑、莫 一不苟也。而常 人有貌如君子 遅重者、其於細 故小変也、雖苟焉、臨利与 害必露其態矣。 是故君子敬以除 其病。除其病、 然後始免苟之軽 浮歟。

                         かるはづみ  常人―修養の足らぬ人達の言ふこと行ふこと、すべて 苟 すこし           かねまうけ     ・・・・・・・・・・・ で些も落付がない。理財となれば、それが身の破滅になる場 ・・・・・・                でくは 合であッても直ぐに手を出す。少し困難な事件に出遇すと、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ それが後の修養になる場合であッても、たゞもうとッとゝ逃     させう げ出す。些少の弱点を見れば、そして其の人が自分に気に入        そし らねば、直ぐにる。自分の好まぬ人が少し失敗でもすれば         ○ ○ ○ ○   ○   ○ ○かるはづみ○ ○ ○ ○ ○ ○ 訳もなく笑ふ。一として「苟」即ち軽浮ならぬは無い。           かほつき           どつしり  常人の中にも、其の貌が君子然として居て幾らか遅重した                        ちいさなできごと ところのあるやうに見える人がある。斯様な人は、細故小変 の場合には、容易に動かぬから、如何にも慎重で苟でないか           ・・・・・・・・・・・・・・・・・ のやうにも見えるが、一たび自己の利害に関する事件に遭遇 ・・・・・・・ぢがね・・・               すると必ず其の態を露はす。つまり、修養が足りない為に利 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 害の念に支配されるからである。                         つゝし  そこで、君子―修養に志す人達は、自ら反み、自ら敬んで、 此の利害の念に支配せられる病を除かうと努力する。人は此 の利害の念に支配せられる病を除き得て後、始めて苟の失敗 を免るゝことが出来るのだ。


『洗心洞箚記』
(本文)その37
 


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