Я[大塩の乱 資料館]Я
2015.2.7

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『通俗洗心洞箚記』
その35

大塩中斎著 下中芳岳(1878-1961)訳

内外出版協会 1913

◇禁転載◇

上巻 (31) 三一 此の願あるのみ

管理人註

吾既辞職而甘隠、 脱険而就安、宜 高臥舎労苦、以 楽自性、然夙興 夜寝、研経籍、 授生徒者、何也。 此不是好事、不 是糊口、不詩 文、不博識、 又不大求声誉、        不再用於世ナラヒエシ 只扮得「学而不 厭誨人不倦」之 陳迹而已。世人莫 恠、又莫罪。鳴呼、 心帰乎太虚之願、 則誰知之乎。我独 自知焉耳。

 わし ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○  吾は今、職を辞して隠者の生活に甘んじて居る。世路の険 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ 難を脱れて安住の地に就き、高臥して労苦を舎て、以て自性 ○ ○ ○ ○ よ ○ ○ ○   ○ ○ ○  はや ○ ○ ○ おそ ○ ○ ○   ○ ○ ○ ○ ○ を楽んで宜いのだ。然るに、夙く起き夜く寝ね、偏に経籍を ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○  ・・・・・・・ 研究して生徒を教授するのはそも何の為か。事を好む為でも ・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ なければ、口を糊せんが為でも無い。詩文の為でも無ければ、 ・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・・・・・・・・・・ 博識を世に示さんが為でも無い。又、大に声誉を天下に求め ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ んが為でもなく、再び世に用られんことを願ふが為でも無い。 ・・ ・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・ たゞ、論語の所謂「学んで厭はず、人を誨へて倦まざる」の むね・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ 意を聊か体得し得たるが故に、衷心自づと斯くせざるを得ず ・・・・・・・・・・・・・ ・・・ ・・・・・・ ・ して斯くしつゝあるに過ぎぬ。世人よ、吾を恠しむな、又、 ・・とが・・・ 吾を罪むるな。   ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎   ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎  あゝ!心太虚に帰るの願ひ、此の唯一の願ひは恐らくは誰 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎   ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ も知るまい。たゞ吾自ら独り知る外は無い。

    修徳に志して世に理解せざるを憤るの意、此の一項に尽 く。「平八郎は、職をやめて、弟子を多く集め、あやし の学を鼓吹しつゝあり、注意せざるべからず」とは、実 に当時の幕府の彼に対する態度であッた。


『洗心洞箚記』
(本文)その44
 


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