水孰令 流 之哉。石
孰令 堅 之哉。山孰
令 峙 之哉。海孰令
潮 之哉。雲雨孰令
翕 張之 哉。日月孰
令 往 来之 哉。視而
不 見、聴而不 聞。
一言以蔽 之、太虚之
徳、善孰令 息 之哉。
悪孰令 消 之哉。忠
孰令 勧 之哉。邪孰
令 懲 之哉。父子孰
令 親 愛之 哉。上下
孰令 泰 和之 哉。此
亦太虚之徳之所 致耶。
嗟夫、吾不 知 其何
如 也。
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たれ
水、孰か之を流さしむる。石、孰か之を堅からしむる。
そばた うしほ
山、孰か之を峙たしむる。海、孰か之を潮せしむる。雲や
かざ ゆきゝ
雨や、孰か之を翕し張らしむる。日や月や孰か之を往来せ
● ● ● ●
しむる。視れども見えず、聴けども聞えざる大自然の力、
● ● ● ● ● あらはれ ● ● ●
一言以て之を蔽へば実に太虚の徳の顕現である。
善、孰か之を息せしむる。悪、孰か之を消えしむる。忠、
孰か之を勧めしむる。邪、孰か之を懲らしむるる。父子、
孰か之を親愛せしむる。上下、孰か之を泰和せしむる。是
● ● ● ● おほひ ● ● ●
れ亦、太虚の徳の致す所か。あゝ斯の偉大なる力、吾はも
う此の上、何とも言ひ得ない。たゞ其の偉力を悟り得て驚
嘆するのみである。
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『洗心洞箚記』
(本文)その85
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