当 利欲紛拏之時 、
以 致 良知 為
学 、実庶 乎迂愚 。
然而舎 之以無 復
性為 人之道 。故
非 有 為 天地 立
心、為 万世 開 太
平 之志 者 、孰能
真 学之 也哉。
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あさ
名利権勢の為に人皆血眼になッて日もこれ足らず渉り求め
つゝある今の時に当ッて、其の本心に立ち帰れ、良知を致せ
まこと ちか
といふ一事を以て教学の中心を為すこと、実に以て迂愚に庶
お
い。けれども、之を舎いて、他に人たる道が無い。己が本然
の性を自覚する法が無い。されば天地の為に心を立て、万世
の為に太平を開かうの志堅固なる人でなくては、到底真に教
学の本旨を解することが出来ない。
ふんだ
原文に「紛拏」とあるは「みだれもつるゝ」意。即ち血
眼になッて居る状態。
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『洗心洞箚記』
(本文)その89
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