Я[大塩の乱 資料館]Я
2015.3.4

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『通俗洗心洞箚記』
その60

大塩中斎著 下中芳岳(1878-1961)訳

内外出版協会 1913

◇禁転載◇

上巻 (56) 五六 皷中の虚

管理人註

陸象山先生、嘗聞 皷声振動窓櫺、 亦豁然有覚、此 不其所以覚。 然考其義、皷中 即虚、故其響徹窓 紙、窓紙振動。若 先有物塞其中、 即非虚。非虚則 無其響矣。安振 動窓櫺之有。先生 之覚、蓋在此歟。

 (一)          ま ど  陸象山先生、嘗て皷声の窓櫺に振動するを聞いて豁然とし て大悟徹底したと言ふ。しかし、何故、皷声の窓櫺に振動す                        しる ることに由ッて大悟し得たのか、其の理由は少しも道して無       わし             、・・・・・・ い。けれども吾は其に就いて斯う考へて居る。皷中は虚であ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ る。虚であるから其の響が窓紙に徹して、そこで窓紙の振動 ・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ となるのである。若し先づ、皷中に物が塞ッてあッたならば、 ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・ 其の中は虚では無い。虚でないならば響は発ない。響が発な ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ いならば、どうして窓櫺を振動さすることが出来よう。皷中    やが の虚は即て太虚の虚、太虚の虚は即て皷中の虚、虚なればこ そ内外相通ずる、人心亦是と同じく、虚に帰れば、そは即て 天、天は即て人心、内外こゝに於てか相通ずるが故に、万物 一如、先生の大悟せられたる、恐らくは此の点にあッたらう と思ふ。

    皷中の虚、何ぞ比喩の巧なる。何ぞ象徴の奇抜なる。 (一)陸象山は宋末の大儒、朱子と相拮抗して其の二   元論に反対し、心即理の一元論を唱道す。王陽明   の学説主として陸象山に出づ、陽明学を時に陸王   の学と称するは其の為なり。


『洗心洞箚記』
(本文)その107
 


『通俗洗心洞箚記』目次/その59/その61

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