Я[大塩の乱 資料館]Я
2015.3.13

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『通俗洗心洞箚記』
その65

大塩中斎著 下中芳岳(1878-1961)訳

内外出版協会 1913

◇禁転載◇

上巻 (61) 六一 此の外別に実有あるなし

管理人註

黙坐瞑目、而追思 既往事、則是非善 悪、如記如忘、茫 茫乎捉雲捕風、非 実有。「過去思之 何益」之誡、於是 乎覚得。仰想俯惟、 以億度将来事、夭 寿禍福、不予期、 昧昧乎望夜中山、 非真見。「未来思 之何益」之訓、於是 乎醒了。然則於現在 上、正心以事君事 父、尽忠尽孝、而尽 余善之外、更無実有 真見之事矣、因可 聖教之倫常用乎世、 而釈老之幻妄無用乎 人也。

                            黙坐瞑目、既往の事を追思するに、是非、善悪、記する如   ぼう く、忘ずるが如く、茫々乎として雲を捉へ風を捕ふるにも似     (一) て、到底実有しとては考へられぬ。『過去は之を思ふも何の           いましめ 益かあらん』の古人の誡、是に於てか吾を欺かずと覚り得る。  かうさうふゐ  仰想俯惟、以て将来の事を億度するに、夭寿禍福、いかで か予め期することが出来よう。昧々乎として夜中の山を望む      (二) と一般到底真見としては考ふるよしも無い。『未来は之を思               をしへ ふも何の益かあらん』の古人の訓、是に於てか吾を欺かずと さと  え 醒り了た。  ・・・・・・ ・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・  されば吾等は、たゞ、現在の実生活に於て、心を正しうし ・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・ て以て君に事へ、父に事へ、忠を尽し孝を尽し、更に進んで ・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ は、自余の善に励むの外、更に別に実有真見のことゝては無 ・ い。是に因ッても、聖教の倫常は世に用ふべく、釈老の幻妄 は人に無用なるの理を知ることが出来る。

    現実生活を重んじ、空理空想を排するところ頗る珍重。 (一)実有とは、確信するに足る実際的事実といふ意。 (二)実見とは、確信するに足る合理的先見といふ意。


『洗心洞箚記』
(本文)その116
 


『通俗洗心洞箚記』目次/その64/その66

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