Я[大塩の乱 資料館]Я
2015.3.16

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『通俗洗心洞箚記』
その68

大塩中斎著 下中芳岳(1878-1961)訳

内外出版協会 1913

◇禁転載◇

上巻 (64) 六四 寒たきは水の本性

管理人註

水性本寒矣。火 在其下、則沸 沸然化為湯了。 当其時水雖 有、寒絶無也。 人性本善矣。物 誘其外、則 然化為悪了。 当其時人雖存、 善或無也。然去 其火、則寒復依 然。拒其物、則      モシ 善亦現在。如去 火不早、則焦枯 而水与性倶滅矣。 拒物不厳、則壊 乱而人与性倶凶 矣。是当然之理也。 吾輩宜 性之工夫也已矣。

 つめ                      ふつふつ  寒たいのが水の本性である。火が其の下にあれば、沸沸と      して湯と化ッて了ふ。一旦、湯となッて了へば、水は全く其        すこし の本性を失ッて些も寒たくなくなる。  人の本性も本来は善である。けれども、物あッて之を外に    (一)きぐるひ 誘へば、して悪く化ッて了ふ。一旦、悪くなッて了へば、 人は全く其の本性を失ッて些も善い所を見ることが出来なく なる。  けれども、今、沸き騰ッて居る湯の下の火を去れば、やが     さ         つめ      かへ           あし ては、冷めて、本の寒たさに復る。人も、物に誘はれて悪く なッて居るのだから、其の物を取除いて了へば、其の本性た る善い性質が自づと現はれてくる。けれども、湯の下の火を いつまでも其の儘にしておいて、早くそれを去らなんだなら                       ば、湯は器に焦げついて、水も水の本性も倶に滅くなッて了 ふ。人に於ても、外物の誘惑を拒むこと厳重ならぬならば、                   そこな 終には、壊乱して、人も人の本性も倶に凶はれて了ふ。是れ 寔に当然の理である。故に吾輩、茲に意を用ひて、人の本性 を失はぬ工夫をするが肝要である。

    習慣は第二の天性である。故に一たび、習慣づければ、 善であれ、悪であれ、固定して改まらない。而して善 ならば、かゝる習慣の益々堅固ならんことを要する。 が、悪ならば、其の傾向の固定せぬ間に除かんければ ならぬ。 (一)は狂である。然は、狂ひ狂ひて行く処を   知らぬ意。


『洗心洞箚記』
(本文)その122
 


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