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洗心洞入学盟誓には、初に聖賢の道を学んで、以て人と為らんと欲せ
ば、師弟の名は正さざる可からず、と説いて、次の八ケ條の学則を示し
て居る。
トシテ ヲ カラ フ ヲ シ ニ シ ヲ ミ
主 忠信 、不 可 失 聖学之意 矣、如為 俗習所 率制 、而廃 学荒
ニ テ ラバ ニ ジテ ニ ム ヒ グル ヲ テ
業、以陥 奸細淫邪 、則応 其家之貧富 、使 購 某所 告之経史 以出
ハ ク ス ヲ ニ シ ニ ニハ ヒテ ノ
焉、其所 出之経史、尽附 諸塾生 、若其本人而出藍之後、各従 其心
ニ スル ナリ
所 欲可。
ハ ル スルニ ノ ミ ニ カラ ム スル ヲ
学之要在 躬 行孝弟仁義 而己矣、故不 可 読 小説及異端眩 人之
ヲ シ サバ ヲ ク ト レ チ ガ ス ヲ ニシテ
雑書 、如犯 之則無 少長 、鞭朴若干、是即帝舜朴作 教刑 之遺意、
ル ノ ニ ムル
而非 某所 創也。
ハ ニシ ヲ シテ ニセヨ ヲ シ ニ サバ ヲ
毎日之業先 経業 、而 後 詩章 、如逆施 之、則鞭朴若干。
リ ニ テ ニ テ リ ニ ニスル ヲ ノ シ ヒ サバ ヲ
不 許 陰交 於俗輩悪人 、以登 楼縦 酒 等之放逸 、如一犯 之、
則与 廃学荒業之譴 同。
ラバ ズ セヨ テノ スル ヲ ルヲ ザル ガ スルヲ
家事有 変故 、則必諮詢焉、以 処 之有 道義 故也、非 某 欲
ント ヲ
聞 人之陰私 也。
ハ ズ ゲ ニ ニ クセヨ ヲ サバ ヲ モ
喪祭嫁娶及諸吉凶必 告 於某 、与同 其憂喜 。犯 公罪 、則雖 族
ト ハ スル グ ヲ ニ テ セヨ ニ ハクハ シ ス
親 不 能 掩護 、告 諸官 以任 其処置 、願 們小心翼々莫 貽 父
ヲ
母之憂
しきり
此中に鞭朴を加ふる事が頻に見え、而してそれは虚喝でなく、実際平八
郎は励行して居たといふが、是にも彼の気象を見るべきであらう。又彼
は子無く、相役西田青太夫の弟格之助を養つて子として居たが、父子の
間の礼義は甚だ厳重なもので、格之助は其出勤の時にも帰宅の時にも必
ず養父の室の敷居際迄来て、手を支へ、慇懃に出入を告げれば、来客に
も、自分が先づ養父の先に出て逢ふ時の外は、決して対座に就かず、敷
き
居外で挨拶するに定まつて居たともいふが如き、平八郎の、家庭を率う
る生帳面な姿が、明瞭に察せられる。
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山田 準
『洗心洞箚記』
その6
石崎東国
『大塩平八郎伝』
その35
鞭朴
むち打ちの刑
虚喝
虚勢をはって
おどかすこと
坂本鉉之助
「咬菜秘記」
その4
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