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是年六月、頼山陽は京都より来つて中斎を訪うた。中斎、喜んで之を
迎へ、少時歓談せしも、登庁の時刻逼るため、山陽を留めて自由に架上
の蔵書を見るに任せ、自分は謝して登庁した。山陽は静読半日の後、中
斎が出でゝ盗賊を誅 し、入つては子弟を教養する高風に感激し、左の
如き一詩を壁に貼つて去つた。
上 衙治 盗賊 。帰 家督 生徒 。獰卒候 門取 裁决 。左塾猶聞喧
唔 。家中不 納鬻 獄銭。唯有 々万巻書。」自恨不 暇 仔細読 。五
更已起理 案牘 。」知君学推 王文成 。方寸良知自昭霊。八面応 鼓有
余勇 。号 君当 呼 小陽明 。」吾来侵 晨及 未 出。交談未 半懐 鞭
撻 。留 我恣抽満架帙。坐聞蝉声在 簷 。」巧労拙逸不 足 異。但
恐磬折傷 利器 。祈 君善 刀時蔵 之。留 詩在 壁君且見。
右は、中斎が吏務鞅掌の状を叙し出して、之を王陽明の良知に帰し、
次に小陽明を以て之を呼んだ。真に中斎の知己と謂ふべし。更に其の磬
折を恐れ、刀を善うて之を蔵せんことを勧むる処、惻惻たる故人の慇情
を窺ふべきである。
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石崎東国
『大塩平八郎伝』
その38
逼(せま)る
鞅掌
(おうしょう)
忙しく働いて
暇のないこと
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