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十七日の深更、同盟の一人東組同心平山助次郎、俄に変心して、跡部
奉行の仮宅に駈け込み、挙兵加盟の実状を密訴した。奉行は惶愕の余、
訴人平山を江戸に遣り、事情を訴ふべく直に旅立たせ、一夜を空しうし
た。翌朝西町堀奉行登庁す、跡部奉行は前夜の密訴を告げて捕方手当の
方案を密議したが、堀奉行は着任の日浅くして、事情に通ぜず、跡部奉
行は狐疑して、僅に実状探査を命じたるのみにて又一日を空しうした。
十八日夜、結盟中の一人東組同心吉見九郎右衛門、又変心し、其子及河
合某の子をして訴状及檄文を携へて西町奉行に密訴せしむ、堀奉行は直
に之を跡部奉行に告げた。既にして十九日の天明けんとす、同盟の壮士
瀬田済之助、小泉淵次郎二人、前夜より当直して東町奉行所に在り、奉
行は先づ之を捕へんと手配して二人を招いた、二人之を覚つて逃る、捕
吏、之に迫り、淵次郎は斬られ、済之助は墻を踰へて遁れ、急を洗心洞
に告ぐ。斯くて当日活劇は切つて落された。
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石崎東国
『大塩平八郎伝』
その110
石崎東国
『大塩平八郎伝』
その111
石崎東国
『大塩平八郎伝』
その112
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