アクセルを踏みながらブレーキ
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・転職したいが、今の職場でやっていく選択肢もある

・新規取引先開拓がしたいが、人付き合いは苦手(したくない)

・タバコを止めたいが、タバコは楽しみでもある

〜したい、という欲求を持っていても、それにブレーキをかける全く逆の欲求を持っているケースは世間に数多く存在するのです。〜したい、という欲求に沿ってコーチングして欲しい、と言われても、訊いていくうちに、こういったアンビバレンス(両面価値)がわかることがあります。これではコーチングは無理です。

やはりこれは本人がどちらかひとつを選ばなくてはならない。

「あなたはアクセルを踏みながら、ブレーキをかけてますね」

私がこの表現を使うことは割に多いです。本人がブレーキを踏まないように私が強要するわけにはいきません。自分でブレーキを踏んでいるという指摘を受けて、結局どうするのかは本人さんの選択です。しかし、指摘を受けた時点で、そう簡単に気持ちの整理が出来るものではありませんね。

この場合、時間を置いて仕切りなおした方がよいでしょう。

ただ、〜したい、という方向でコーチングするのは無理にしても、なぜブレーキをかけているのか、を聞いてあげることはできます。徹底してこの点を深めておくのは良いと思います。コーチングの方向を軌道修正する、ということですね。

コーチングは何が画期的なのか
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コーチングという言葉は比較的耳新しい言葉です。私は3年前にはこの言葉を知りませんでした。しかし老若男女を問わず、コーチングをやったことがない、という人はまずいないでしょう。要は質問して答えを引き出したら、コーチングです。

昔はそういう言葉を使わなかった、というだけのことですね。

コーチングという言葉を使わなくても、質問型のコミュニケーションが、意欲を引き出したり、発想を引き出したりするのに効果的である、というのは賢明な人なら昔から気付いていたことでしょう。コーチングの効果というのは昔も今も変わらないはずです。

では何が画期的なのか。

私に言わせると、週1回電話で話すというスタイルが「コーチング」という言葉の出現とともに定着したこと、です。

私のコーチング活動は100パーセント、インターネットに支えられています。すべてインターネットから連絡があってコーチングを開始します。実際にクライアントさんとお会いすることもありますが、ほとんどのクライアントさんとは面識がありません。そして面識がないまま数ヶ月間コーチングを繰り返し、顔を知らないままお別れするのです。

・・・これがお互い抵抗なくなったことが画期的だと思います。

社会に存在する相談者というリソースが、より円滑に活用できるようになりつつある、と言えないでしょうか。

私は若い頃、眼病を患って、孤独な境遇で引きこもっていたことがあります。日本に一人くらい自分の相談相手はいるだろうに、それにアクセスできたらどんなにいいだろうとよく思ったものです。

相談相手として、「命の電話」というのがありますが、名前からしてこれは敷居が高すぎるでしょう。110番みたいで、まず普通は使いたいとは思いません。

職場や家庭で用を足せない相談事は必ずあるのですが、昔は文字通り足を運んで、相談者の門を叩かなければならなかったのです。今後はインターネットも普及したため、電話・音声チャットで見ず知らずの人と相談することが、いよいよ抵抗なくなってゆくことでしょう。

これは社会全体にとって大変好ましいこと、社会の進歩だと思うのです。私はこうした時代に生まれ合わせたことを心から喜んでいます。

コーチングの定義とは
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コーチングのコンセプト(思想)は日本では以下の大きく2つが浸透しているようです。

・個人の自己実現をサポートするシステム(CTIジャパン)

・行動を引き出し目標を達成するコミュニケーション手法(コーチ21)

前者はパーソナル・コーチングにしかあてはまりませんが、後者はパーソナル・ビジネスともに適応可能です。ここではパーソナル・コーチングにしぼって話を進めます。

私の目線からは

・コーチングは悩みを解決する手法である

となります。自己実現ができていない状態、目標達成ができていない状態は、いずれもクライアントさんが悩みを抱えた状態だからです。

「なりたい自分になれていない」ひいては「なりたい自分がわからない」という人はたいてい相当悩んでいます。自信をなくしている人もいます。

悩んでなくて、前向きのチャレンジのためコーチを付けたい、というレベルの高い人もいるとは思います。ただ、チャレンジするという行動の裏には停滞という悩みがあるいうことでしょう。結局、悩みなくコーチングを求める人はほとんどいないのではないでしょうか。

通常は悩みをきっかけに自分本来のワクワク感に目覚めたり、悩みを乗り越える過程で自己実現につなげる方法を見出したりするわけです。悩みを乗り越えないところには喜びもない、ということですね。

思い悩んでいれば、切実に求める心があるはずですし、切実に求める心があるほど、コーチングは機能すると思います。私がコーチングに出会い、そして自分も始めるに至ったきっかけもはずかしながら、やはり「悩み」でした。当然ながら、コーチングにはクライアントの思いの強さが最も大切であるわけですが、悩みの強さは思いの強さ、と言っていいと思います。

私に連絡を取って来られた方々は、深刻さの程度こそは異なりますが、いずれも悩みを抱えておられました。

以上から、私は「コーチングは悩みを解決する手法」である、と定義したいと思います。

なぜこんなことをわざわざ言うのかというと、世間一般のコーチングは自己実現や目標達成を喧伝する割には、悩みの解決に無力で、役立たずである、というケースが多く見られるからです。

さらに言えば高額の料金を請求する割には大したことがない、商業主義と詐騙の匂いがするのです。本当に自己実現や目標達成に効果があるのなら、必ず「救済力」が感じられるはずです。コーチングというとどうも質問に逃げ込んでしまって弱々しい、と私は感じるのですが、偏見でしょうか?

コーチングは方便
172



90年代後半から、個人でコーチを雇って電話で対話するパーソナル・コーチングがアメリカで盛んになり、21世紀に入ってからは、日本でもパーソナル・コーチングが急速に普及し始めました。

そもそもなぜ金を払ってまでコーチングを受けたいと思うのでしょうか。それは切実な悩みがあるからです。だからパーソナル・コーチングは悩みが原点で、クライアントさんは絶えず「救済力」を求めているのが実情なのです。悩みが解決しなければコーチングの存在意義がないということになります。

逆に「悩みに対する救済力」がありさえすれば極端な話、コーチングでなくても、何だってかまわないわけです。ポイントはまず第一に「救済力があること」、これに尽きます。

コーチングの教科書にあるパーソナル・ファウンデーションはあまりにも常識的で救済力には遠いと考えます。救済力を持つためには、宗教的素養をぜひとも身につけるべきです。たとえば生長の家の説く所の「萬教帰一の黄金の糸」というのがそれです。自分が宇宙生命によって生かされている理を体得すべきです。そしてどうすれば安心立命の境地で日々生活できるか、助言できなければなりません。

このためには自分が何教かの教えにしたがって、試練を乗越えてきたという経験が必要なのです。しかし、何教を前面に出すようでは一般世間の人を相手にはできません。宗教臭さを全く感じさせない、という洗練も必要なのです。

以上のコンセプトから、私の助言スタイルは最初からコーチングをベースにコーチングにこだわらない、という形で一貫しています。だからどこそこの認定制度なんていうのはまったく気が進みません。なんでそんなところにわざわざ金を払ってまで、自分のスタイルにかせをはめる必要があるのか、と思うわけです。

ですから私はコーチングを標榜していますけれど、ホンネは何だっていいんです。しかし、自分の提供しているサービスをカウンセリング、コンサルティング、はたまた総合的助言、と言ったら従来のサービスに埋没してしまって、差別化がはかれません。

だから私は「コーチング」という言葉は方便で使っています。ただコーチングをベースにしているのは本当です。

適性はソリューション
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「あの人たちはソリューションがありませんからね・・・」

これは以前雑談していた時、中小企業診断士のY先生がコーチング業界を指して言われたことです。診断士の世界では試験科目に助言理論というのがあり、コンサルティングをはじめとしてカウンセリング・コーチングも勉強しなければなりません。

概して診断士の世界ではコーチング業界はこうした理解です。これは大いに言えてる指摘で、CTPを受講しても、コーチ同士の勉強会なんか行っても、できるな、と思う人はごく限られています。

ソリューションのあるかどうかは、本質の把握が即座にできるかどうか、大筋の方向性の提案や総括がこれまた即座にできるかどうか、で見れば良いと思います。これは総合的な理解力や咀嚼力の反映です。こればかりはトレーニングで短期に養成できるものではありません。私個人はソリューションのない人に自分の身の上を語りたいとは全く思いません。

では診断士ならソリューションがあるのでしょうか?私はそうとも思いません。ただしソリューションが鍛えられているぶんだけ、コーチングをやってる人よりはまだマシという感じがします。

このソリューションのあるなしがコーチの適性だと私は思います。ソリューションのない人はトレーニングでプロにはなれないでしょう。ソリューションのある人はトレーニングでプロになれると思います。

世間の多くの人が「認定コーチ」の資格を取れば、それでプロとしてやっていけるかのごとく錯覚してますが、あれは単にトレーニングの修了証であり、コーチの適性を証明するものではありません。コーチとしての適性は実際コーチングをさせてみないとわからない、このソリューションが一番モノを言うと私は思います。
200 コーチングで食べるのは最後に
199 コーチングの金銭感覚
198 心の準備
197 少人数
196 人生のキーワード

*
195 真我を信じよう
194 ムラ社会
193 夢を壊す権利
192 究極のパラダイム
191 これはコーチングですから

*
190 一緒に考えましょう
189 日曜喫茶室
188 いじめとアサーティブネス
187 齟齬の指摘
186 答えはクライアントの自助努力の中にある

*
185 私は何をしてあげたらいいですか
184 Sコーチ
183 答えを教える
182 光明と暗黒
181 アイボール・ミーティング

*
180 パラダイム・シフト
179 結婚問題
178 にっちもさっちもいかなくなった相談事
177 すべて簡単な言葉で表現できる
176 祝福と呪詛

*
175 アクセルを踏みながらブレーキ
174 コーチングは何が画期的なのか
173 コーチングの定義とは
172 コーチングは方便
171 適性はソリューション
*
170 成果報酬
169 開き直り2
168 開き直り
167 助言を受ける側の度量
166 みんなアマチュア
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165 結婚の効用
164 面談の克服
163 失敗するかもしれないけれど・・・
162 心を明るく
161 鬱になるくらいなら周囲に迷惑をかけよう

*
160 ストレスをためない
159 組織人から個人へ
158 汲んで形にする
157 21世紀は個人の時代
156 実務はできなくても管理はできる

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155 わかっているけど相談しよう
154 グーグルの「コーチング」
153 気を使わず、頭を使う
152 コーチングは現状からか、ゴールからか?
151 一期一会


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001〜050 051〜100 101〜150 151〜200 201〜250
251〜300 301〜350 351〜400 401〜450 451〜500
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751〜800 801〜850 851〜900 901〜950 951〜999
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