一緒に考えましょう
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「一緒に考えましょう」

これは懐かしい言葉です。昔、私が窮して中小企業診断士のT先生にメールを書いたおり、いただいた返事の最後がこの言葉で結ばれていたからです。

「どうしようもない」「どうしたらいいかわからない」「やるだけやりつくした」

という言葉を相手が語ったとき、私はこう言います。

「でも、あなたが私にそれを話すのは、それでもなんとかしたい、と思っているからでしょう」

「・・・・・・」

「このまま現状を受け入れるのも立派な選択肢です。あなたがそうしたいなら、私は何も言うことはありません。でも他の選択肢もあるのではありませんか」

「・・・・・・」

「どうです、今一緒に考えてみませんか」

こう持って行くと、通常何かひとつぐらいは出るように思います。もちろん現実はきびしく、それを根本的に解決するようなものではありません。極端な話、部屋を片付けるとか、朝早く起きる、でもいいのです。それによって停滞に風を吹き込むことになるのですから。

注目すべきは、「一緒に考えてみませんか」という言葉のもつ力です。

単に「どうしたらいいと思いますか」では行き詰まった人のコーチングは難しいです。「一緒に考えてみませんか」、この言葉が竿頭の一歩を可能にすると思います。

クライアントに対して腰が引けてたら、「一緒に考えましょう」は言えません。その意味ではコミットメントの高い言葉で、だから勇気づけられるのでしょうね。

日曜喫茶室
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コーチングには

・ポイントの追及
・話しやすい雰囲気づくり

という相矛盾する要素が必要なように思います。前者だけでは、コーチングがストレスの種になってしまうことでしょう。後者だけではきびしさがなくてしまらない。結局両者のさじ加減が大切なのですけれど、引き出すという点では、「話しやすい雰囲気作り」は「ポイントの追及」に負けず劣らず重要です。

NHKFMに日曜喫茶室という長寿番組があります。1977年開始ということですから、おおかた30年近く続いており、私の学生時代からあることになります。番組はNHKラジオスタジオに設定した喫茶店が舞台です。マスター(総合司会)のはかま満緒(放送作家)に対して各界を代表する著名人が毎回ゲストとして来店し、3名程度(うち1名は「ご常連」)が、毎回季節の話題や最近の流行などのトークをコーヒーを飲み交わしながら展開する、というものです。

「話しやすい雰囲気作り」を語るのにこの番組は格好のモデルだと思います。

NHK的な番組作りはもともとあまり好きではないのですけれど、ホスト役のはかま満緒氏の聴き方、話のふり方、は長年やってるだけに、さすがプロです。タモリなんかもうまいのですけれど、どうしても笑いを取りに行きますので、はかま氏の方がコーチングの参考になるように思います。

たまに番組を受信するたび、はかま氏の座談に「ポイントの追及」というのをオンすれば、理想的なコーチングだな、と思うのです。ファシリテーションとしてもお手本となることでしょう。

いじめとアサーティブネス
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クライアントのAさんはものすごくいじめられやすいのだそうです。今までいろんな職場を経験してきたそうですが、いじめられなかったことはほとんどないそうです。

Aさんは容姿端麗で、これが他人の嫉妬を買い、それがいじめにつながるようなのですが、ここまではAさんの責任ではありません。相手が一方的に悪いのです。問題はそれが継続する、ということです。

なぜいじめが継続するのか、そしてそれを断ち切るにはどうしたらいいのか、いろいろ考えてみたのですが・・・

いじめられる人は例外なく「陰にこもった」人です。つまり心の中にストレスをためて、外に吐き出さない人です。なんらかの抵抗がいじめるたびに言葉で返ってくるのなら、加害者もわずらわしいからいずれやめるのでしょうが、それがないと、やめるどころかいじめがどんどんエスカレートしていくようです。

つまり、いじめられても無抵抗で、ストレスをためるというあり方がいよいよいじめを呼ぶ、のではないかと思います。ストレスをためた人はいじめられるオーラを出すようです。つまり類は類を呼ぶのです。

解決方法はずばりアサーティブネスを身につけることでしょう。

アサーティブネスというのはコーチング用語です。assertは「主張する」ということですから、「主張的であること」といった意味合いです。

ひと言で言うと、言いたいことを言って自分にストレスをためないことです。しかし、他人を傷つけてもいけない、というただし書きがつきます。

つまり、いじめられたら、

「このやり方は卑怯です」
「これはいじめだと思います」
「言っておられることはおかしいです」
「どうして、そんなことをするんですか」
「なにか私が悪いことでもしましたか」

と毅然と言うことです。相手の「良心」の部分は痛むでしょう。「邪心」の部分は厄介だなと思うはずです。それがいじめの抑止力となるように思います。

アサーティブネスは、言いたいことを言ってストレスをためないことですから、上記の発言はいじめを受けるたびに繰り返されることになります。ちなみに関西人の私はアサーティブネスは抵抗なく身につけており、絶対にいじめられない自信があるわけですが・・・

問題はいままで内気で、「陰にこもって」来た人が、蛮勇をふるえるのか、というポイントですが、これは勇気をもって徐々に慣れてくしかないでしょう。

水戸黄門の主題歌ではありませんが、「人生勇気が必要」だと思います。毅然としたところがなければあなどられるのは洋の東西を問わず、老若男女を問わず、なのです。単に心優しいだけではダメなのです。

齟齬の指摘
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人間関係の齟齬(かみ合わせの悪さ)で悩む人は多いです。カウンセリングでもそういった話は頻繁に聴きます。

あまりにも合わない人は論外ですから、出来るだけ接触を避け、接触しなければならない時は思い切って切り込んでいく、これが基本です。

問題は基本的に合うという人の場合です。それでもある程度の齟齬は必ず付きまといます。この齟齬はたしなめたりすべきでしょうか。結論からいうとよほどひどい時はやったらいいですが、9割はやめておくほうが賢明だと私は思います。

私は見過ごせる齟齬を指摘して、彼女にふられてしまった経験を持っております^^

見過ごせる齟齬を指摘するのはやめて、相手の善意を見て、齟齬はやり過ごす、これが肝心だと思います。齟齬があったら相手は外国人だ、くらいに思ったほうがいいです。不思議なことに、齟齬を指摘していると、齟齬は大きくなり、相手の善意を見て、齟齬はやり過ごしていくと、齟齬は小さくなっていくのです。

そのためにはどんな人とも適度な距離を取り、精神的に自分が自立していることも大切です。この状態であれば見過ごせる齟齬をつかんだりしないでしょう。

キーワードは「寛容」です。それが包容力となって新しい出会いを引き寄せるのではないでしょうか。カウンセリングでは齟齬には寛容さで対処するよう話を持っていきますが、難色を示した方はいません。やはりそれが人として正しいことだからでしょう。

答えはクライアントの自助努力の中にある
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「答えはクライアントの中にある」

コーチングやってる人は聞き飽きたフレーズですが、これは禅問答に近い象徴的な言葉です。ひと言でいうと「どうとでもとれる」わけです。

いずれにせよ、クライアントが気付いて行動するしかないわけですから、「答えはクライアントの中にある」に決まっているのです。けれど、「気付いて行動する」のは自助努力あってのことでしょうから、

「答えはクライアントの自助努力の中にある」

と言い換えられるのではありませんか。

さらに言えば、自助努力はその人の想い(想念の)結果ですから、

「答えはクライアントの想い(想念)の中にある」

わけです。しかし、想い(想念)は結局人として生まれてきた生命力の発露ですから、

「答えはクライアントの生命力の中にある」

自助努力、想念、生命力は要はクライアントが持つエネルギーです。クライアントのエネルギーこそ、コーチングの前提条件だと言えます。心に病を持つ人はコーチングできませんが、エンジンの故障した船(エネルギーのない船)は舵取りのしようがない、ということですね。

結局、コーチングとはクライアントのエネルギーの舵取りに介入すること、なのです。また、人間の場合、全ての方向に進めるエンジンはなく、その人の使命の方向に進んではじめてエンジン全開となるわけです。

「答えはクライアントの中にある」というのは、以上をまとめると、

@「答えはクライアントの自助努力の中にある」
A「答えはクライアントの想い(想念)の中にある」
B「答えはクライアントの生命力の中にある」

ということになります。@は常識的、Aは成功哲学的、Bは宗教的な表現です。

@ではあまりにも常識的で、コーチングは流行らないでしょう。ABはすでに哲学・宗教で膾炙した表現です。だから、

「答えはクライアントの中にある」

はコーチングのキャッチ・フレーズとして秀逸なのです。その代わり自助努力という泥臭さがイメージ的に欠落してしまっており、これが理想主義・商業主義の弊害を生んでいるのだと思います。だからバランスを取る意味で、

「答えはクライアントの自助努力の中にある」

とここでは言っておきたいと思います。何のことはない、コーチングのコンセプトの実体は思いのほか常識的なのです。

「自助努力のない人にはコーチングの効果はない」

ということになります。クライアントに自助努力がなければ、

「答えはクライアントの中にない」

わけです。
200 コーチングで食べるのは最後に
199 コーチングの金銭感覚
198 心の準備
197 少人数
196 人生のキーワード

*
195 真我を信じよう
194 ムラ社会
193 夢を壊す権利
192 究極のパラダイム
191 これはコーチングですから

*
190 一緒に考えましょう
189 日曜喫茶室
188 いじめとアサーティブネス
187 齟齬の指摘
186 答えはクライアントの自助努力の中にある
*
185 私は何をしてあげたらいいですか
184 Sコーチ
183 答えを教える
182 光明と暗黒
181 アイボール・ミーティング

*
180 パラダイム・シフト
179 結婚問題
178 にっちもさっちもいかなくなった相談事
177 すべて簡単な言葉で表現できる
176 祝福と呪詛

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175 アクセルを踏みながらブレーキ
174 コーチングは何が画期的なのか
173 コーチングの定義とは
172 コーチングは方便
171 適性はソリューション

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170 成果報酬
169 開き直り2
168 開き直り
167 助言を受ける側の度量
166 みんなアマチュア
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165 結婚の効用
164 面談の克服
163 失敗するかもしれないけれど・・・
162 心を明るく
161 鬱になるくらいなら周囲に迷惑をかけよう

*
160 ストレスをためない
159 組織人から個人へ
158 汲んで形にする
157 21世紀は個人の時代
156 実務はできなくても管理はできる

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155 わかっているけど相談しよう
154 グーグルの「コーチング」
153 気を使わず、頭を使う
152 コーチングは現状からか、ゴールからか?
151 一期一会


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