![]() ADD (Attention Deficit Disorder)やADHD (Attention Deficit Hyperactive Disorder)が最近社会的に認知されるようになってきました。後者はADDのやたら元気な状態と考えたら大体間違いないと思います。個人的にはどちらもコーチング経験があります。両方ともたまたま医者でした。 さて今日某メルマガで興味深い事実を知りました。ADDは狩猟民族の遺伝子を多く持った人だというのです。狩猟民族の特徴は、 □ 周りの環境をつねに観察するのを怠らない。 □ 知らせがあれば、瞬時に追跡体勢に入ることができる。 □ 頭が柔軟で、戦略を即時に変更できる。 □ 追い詰めているときは疲れを知らず、闘志を持続できる。 □ 結果志向で、ゴールに近づいているか、敏感に察知している。 □ 視覚的、具象的に物事を考え、具体的ゴールを明確に見ている。 □ 独立心が旺盛。 □ 平凡な仕事に退屈し、新しいアイデアや刺激を楽しむ。 □ 進んでリスクを負い、危険に直面する心構えがある。 □ 決断しなければならないときは優雅に気取っていない。 なんだそうですが、これが下記ADDの特徴と酷似しているというのです。 □ 注意力散漫。 □ 注意力は持続しないが、極度に長時間集中できることもある □ 短気。 □ 計画性はなく、混乱しており衝動的。急に決心したりする。 □ 時間の感覚に波があり、何かを行うのに要す時間がわからない。 □ 言葉を概念に、概念を言葉に変換できない。 □ 指示に従うことが困難。 □ しばしば白昼夢にふける。 □ 結果を考えずに行動する。 □ 社交上のたしなみに欠ける。 う〜ん、なるほどなぁ。 私個人は狩猟民族・農耕民族の両方の特徴をバランスよく持っているタイプなので、ADDの相手はまことに具合がよろしい。狩猟民族傾向が強過ぎれば、ミイラ取りがミイラになるだけだし、農耕民族傾向が強すぎればADDには付き合いきれないでしょう。 ADDの方々と交わった所感は「意外性があるので新鮮」ということです。農耕民族型の人は行動パターンがほぼ読めるが、ADDは発想がユニークで、意外な行動が意外なハプニングを招くので面白いです。
![]() 他者から承認されても、本当にうれしく勇気づけられる場合と、うれしくも何ともなくわずらわしいだけ、という場合があります。 この差はどこにあるのでしょうか。 @自分が尊敬する、あるいは一目置く相手から承認されるとうれしい。 A自分を良く知る相手に承認されるとうれしい。 とりあえず@またはAがOKなら、承認は成立するようです。両方OKなら上々の承認と言えます。 そして、自分が尊敬しているわけでもなく、自分を知ってくれているわけでもない相手から承認されても、さしてうれしくない。承認としては下でしょう。ただし、対人関係の潤滑油程度にはなると思われます。 以上のように理解すれば、同じくコーチングし、同じく承認しても、効果はコーチングする人によって大差がつくのは納得できます。 @から言えるのは、コーチングする人は常に自分の人格・能力を磨いて、相手から一目置かれるプレゼンスを身につける必要があるということです。これは日ごろの努力が不可欠ですね。 Aから言えるのは、コーチングする人は相手の言うことをよく聴いて、相手に対して十分な情報量を持った上で、具体的で辛口の承認をする必要があるということです。 たとえば難問に直面した人に向かって、 「あなたはできる人だから、大丈夫ですよ」 と言っても「いい気なもんだ」と思われるのが関の山です。しかし、 「難しいところですが、全力で取り組めば、やってやれないことはないと思います。あなたはこれくらいの問題はいつも解決してきたではありませんか」 のように具体的かつ辛口であれば、生きた承認になるということです。具体的かつ辛口であるということは、相手が自分の人格や置かれた状況を良く知ってくれている証拠だからです。 ただし、心の病を持っていて、日ごろ自分で自分を承認できないでいる場合、いかに正しい承認であろうと、他者からの承認は受け取ることができません。たとえて言うならば、火は風で煽られていよいよ燃え盛るわけですが、火が消えていれば煽りようがないというわけです。 承認が受け取れるのは日ごろ自分を承認できている健常者であるのが前提です。
![]() 以前で作曲家フォスターのメイドさんの話を書きました。フォスターはメイドさんに乗せられて、次々に名曲を書いたのでしたね。 仮に上司Aと上司Bという2名の上司がいて、同じ洞察力と提案力を持っているとしましょう。Aは承認が上手で、人を乗せるのがうまい。一方、Bは承認が少なく、きびしく辛らつなタイプだとします。たとえば部下が、 「果たしてできるか心配です」 と弱気の発言をしたとします。 A:「大丈夫。やる気でやれば何とかなるよ。君はできる男なんだから。 この間の企画書も素晴らしかったではないか」 B:「えらく逃げ腰なんだな。そんなことではこの先難しいぞ」 Aのほうがコーチングの成果が間違いなく大きくなります。なぜか。それはAがこの部下を承認で「乗せる」結果、多く引き出すことができるからです。「乗せられる」と、人間は調子に乗って本来想定していた以上のことをやってしまうものだからです。 とにかく、「できる、できる、君ならできる」という言霊のパワーは侮れない、と知るべきです。
![]() 昨今は驚くほど多くのコーチング本が出ており、アマゾンで検索したところ、200冊を超えて300冊に迫る勢いです。都心の大きな書店ではコーチング本のコーナーができています。 さて、ここで本を数冊手に取った人はコーチングをどう理解するでしょうか。 「コーチングはコミュニケーション・スキルか。要は会話術なんだな」 と思うことでしょう。私も最初はそうでした。書籍の形態はたいていスキル(会話術)の解説です。ところが実際やってみると、コーチングでスキルはさして重要でないということがわかります。 たとえば、職場の上司と全くうまくいかない、なんとか人間関係を改善したい、というテーマでコーチングを依頼されたとします。一通りヒアリングした後で、承認・沈黙といったスキルを使うとしましょう。 承認・沈黙は誰でもできる一番基本的なスキルと言っていいと思います。 【悪い例@】 「そうですか、大変ですね。お気持ちはわかります」 (承認のスキル) 「はい」 「では、どうしたらいいと思いますか」 (沈黙のスキル) それがわからないから話をしてるんだろうが!と相談した人は思うことでしょう。 【良い例@】 「そうですか、大変ですね。お気持ちはわかります」 (承認のスキル) 「はい」 「ところで話を聞いてますと、あなたは明らかに上司を避けているように思うのですが」 「・・・・・・」 「たとえばその上司が5メートル先を歩いていて、あなたに気が付かなかったとしましょう。あなたはこの上司を追いかけて行って、挨拶できますか」 「・・・・・・」 「そうした努力がないと、打開は難しいと私は感じましたけれど、どうでしょう?」 (沈黙のスキル) コーチする人が、ここまでの洞察力があれば、このコーチングでは何らかの答えが見つかるものと思われます。 【悪い例A】 「そうですか、大変ですね。お気持ちはわかります」 (承認のスキル) 「はい」 「現時点で、あなたは何から改善して行ったらいいと思いますか」 (沈黙のスキル) 「やっぱり、どうすればよいかわかりません。何かヒントをいただけないでしょうか?」 「・・・・・・」 コーチが問い返されて沈黙しています。やっぱりあなたじゃ役不足だ、と相手は思ったことでしょう。 【良い例A】 「そうですか、大変ですね。お気持ちはわかります」 (承認のスキル) 「はい」 「現時点で、あなたは何から改善して行ったらいいと思いますか」 (沈黙のスキル) 「やっぱり、どうすればよいかわかりません。何かヒントをいただけないでしょうか?」 「では、ヒントを差し上げましょう。今の上司のありようは受け容れるしかないですよ。 上司は絶対変わりっこないわけですから。あなたがどう変われるか、ってことですよ」 (再び沈黙のスキル) コーチする人が、こう持っていけば、このコーチングでも何らかの答えが見つかるはずです。 結局、スキルはあればいい、という程度で、コーチングの質を決定する要因ではないことが明らかです。要はコーチする人の洞察力と提案力の勝負です。さらに言えば、コーチする人が上司との人間関係といったテーマでどれくらいの場数を踏んでいるかも大きいでしょう。コーチする人にそうした能力や経験が欠けていれば、いかんともし難いのがおわかりいただけると思います。
![]() 仮にコーチAとコーチBという2名のコーチがいて、同じ洞察力と提案力を持っているとしましょう。しかしコーチAは承認が上手で、人を乗せるのがうまい。一方、コーチBは承認が少なく、きびしく辛らつなタイプ。その結果、クライアントはコーチAの大ファンですが、コーチBに対してはそうした感情を全く持っていないとします。 これで同じテーマで同じようにセッションした場合、コーチAのほうがコーチングの成果が間違いなく大きくなります。なぜか。それはコーチAがこのクライアントを「乗せる」結果、多く引き出すことができるからです。「乗せられる」と、クライアントは調子に乗って本来想定していた以上のことをやってしまいます。 19世紀にフォスターというアメリカの作曲家がいました。『草競馬』とか、『オールドブラックジョー』とか、小学校で教わるような親しみやすい名曲を数多く作った人です。このフォスターのメイドさんこそ、承認の達人、フォスターが名曲を何十、何百曲と書けたのは、このメイドさんがいたからであると言われています。 フォスターは今でこそ世界に知られた大作曲家ですがが、もちろん最初から有名だったわけではありません。才能があるから曲を作るのですが、自信がないからいつもまずメイドさんに聞かせてみるわけです。 そうしたらこのメイドさんは、「旦那様、こんなすばらしい曲は、世界の歴史の中でも他にないと思いますわ。なんて美しい曲なんでしょう!」とほめるわけです。 「そうかなあ。じゃ、これは?」とフォスターが別の曲を聞かせると、 「まあ、さっきのよりもっといいわ。私、毎日でも歌っていたいくらいです。」 乗りやすいフォスターは、気を良くしてドンドン作曲してメイドさんに聞かせます。メイドさんはいよいよほめまくってやる気にさせる。こうしてフォスターは名曲をつくりまくり、ついにアメリカ人みんなに愛唱される大作曲家になってしまったというわけです。つまりフォスターの名曲が生まれた背景には、このメイドさんのほめまくりがあったというのです。 この「乗る」という効果は明らかに承認の力でしょう。クライアントを十二分に承認することによってクライアントが「木に登る」ということだからです。 コーチの洞察力と提案力が同じなら、あとは承認力で結果に差がつく。洞察力や提案力は身につくのに時間がかかりますが、承認力は比較的簡単に身につく。だったら、まず承認力を身に付けることを考えるべきなのです。そのためには、承認欲求というものに十分な理解が必要だ、私はこう信じるのです。 さらに言うと、この黒人のメイドさんはそう高度な教育は受けていないはずで、洞察力と提案力はとくに高いとは言えないでしょう。しかし、このメイドさんがフォスターから好かれて信頼されていたことは確実です。メイドさんは学問はなくても、承認欲求を十分に理解できるだけの聡明さがあった、ということなのです。 |
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500 ADD
499 具体的で辛口の承認 498 承認は「ノリ」というプラス・アルファを生む 497 承認を少しでもいいから絡める 496 木に登らせる * 495 ペーシングなんて 494 コーチングはスキルではない 493 コーチングの種類について 492 嫉妬と承認欲求 491 承認欲求 * 490 自己実現欲求と承認欲求は表裏一体 489 究極の自己承認 488 相槌・うなずき・オウム返し 487 成功哲学と自己承認 486 承認とは自己承認の増幅 * 485 インターネット・マーケティング 484 とにかくいい時代 483 四十肩(五十肩) 482 夏の思い出(パート2) 481 夏の思い出 * 480 日経経営セミナー(大阪) 479 次の志 478 志がなくては 477 立志の自己承認 476 相手がある問題 * 475 まず自己承認を確保せよ 474 窮地を乗り越えるとは 473 積極心とは、信念とは 472 承認は人生だ 471 すみやかな忘却 * 470 承認の世界は生ぬるい? 469 「叱責」は「愚か」 468 承認は承認を呼ぶ 467 承認の世界に生きよ 466 メールは真剣勝負 * 465 承認の調整機能 464 承認は功徳だ 463 配偶者の承認 462 プライド 461 座右の書 * 460 寛容さ 459 すべてを承認につなげよ 458 昼間何をするのか 457 値上げだと? 456 臭くあるな、らしくあれ * 455 気安くほめるな 454 社会経験 453 ルールの違い 452 うまく辞めさせるのもビジネス・コーチングのうち 451 「げっそり感」はコスト *** コーチングを受けてみませんか
*** コーチングとは(私見) *** 社会人のためのカウンセリング *** カウンセリングとコーチング *** ビジネス・コーチング入門 *** ライフワーク・コーチングの奨め *** オーケストラ再生のオーディオ *** オーケストラ録音を聴く |
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