![]() クライアントさんのなかには良くしゃべる人と、寡黙だが水を向けるとしゃべってくれる人がいます。後者にとってセッション冒頭のアイスブレークは特に大切です。 私の場合はまず近況を尋ねます。そして、返ってきた答えにまた質問をするわけです。アイスブレークの質問こそ、しゃべらない人をしゃべるように弾みをつける効果があるのです。 アイスブレークの悪い例を挙げてみます: クライアント 「週末映画を見てきました」 コーチ 「ほう、映画ですか。いいですね」 この受け答えだと、コーチは「映画をみるのはいいことだ」というステレオタイプしか持っていない薄っぺらな人物で、また大してクライアントに興味もないことを暴露しています。これではしゃべる気が失せてしまいます。必ず、 コーチ 「なんという映画ですか」 と訊かなくてはなりません。そして、 クライアント 「○○です」 と答えたならば、そのストーリーとか、感想とか聴いていきます。コーチも見た映画だったら、盛り上がることは言うまでもありません。その上で、 「私も感動しました」 というような内容をコーチがしゃべることができたら申し分ないと言えます。 セッションの糸口はアイスブレークにあります。とにかくアイスブレークでどれだけ相手の感情を肯定できるかがポイントです。相手の感情を肯定することが、相手をより饒舌にすることになり、相手から多くを引き出すことができるわけです。
多くのクライアントさんを最大の恐怖に陥れて、身動きできなくしているポイントは、 「他人にどう思われているか」 という心配です。サラリーマンは「評価」という言葉を頻繁に使います。その意図するところは、周囲から評価されることが人生の目的であるかのようです。 なるほど、他人はあなたのことを評価するに違いありません。しかし、だれでも自分のことが精一杯で、他人の評価なんかに熱心に関わっているヒマはないのです。だから他人からどう評価されるかなんて実にあてにならないものなのです。 私は、「他人にどう思われているか」という心配は、十分の一に割り引いてちょうど良いくらいですよ、とよく申し上げています。 それよりも、自分が自分のことをどう思っているかです。あなたが信念のレベルで心のなかで培っていることは、他人はいかにあなたを嫌おうと、一目置かざるを得ないはずです。 私の上長に、 「そんなことをしていたら他人から嫌われるよ」 と私を咎める人がいました。そういうあんたが嫌われるんだよ、と言いたいところです。その発想といい、ものの言い方といい、こういう手合いはまったく取るに足らない相手です。気にする必要はまるでありません。 何よりもまずポリシーを持った自分自身であること、そして他人を傷つけたりは決してしないこと、この2つを押さえれば、他人がどう思うかなんて心配は不要です。クライアントさんにはこう開き直ることを日ごろよくオススメしているのです。
![]() 私は挫折した結果、鬱の初期症状を呈していた時期がありました。しかし、この程度で会社を休んだりしても、かえって悶々と思い悩んでしまってよろしくありません。できれば、動きながら休むのが得策です。 組織力というのがあります。これの値打ちをわかっておいて損はないと思います。もし自分が組織力に乗っているなら、一時的に漕ぐのをやめても、他の人たちが漕いでくれる結果、船は大過なく進んでいきます。お神輿だって同じです。一時的にぶら下がったりしても、とくに問題は出ません。他の人たちが担いでいるからで、それが組織力というものです。 ここのところをわかっておけば、鬱だとカミング・アウトしなくてもやり過ごせます。カミング・アウトしなくてやり過ごせる場合は、敢えてしないのがベストの選択だと思います。それに未来永劫ぶらさがろうという訳でなし、調子が悪いときは少々他人の批判をあびても、無理をしないに限ります。鬱を走りながら治す場合は、敢えて組織のお荷物になろう、組織に養ってもらおう、と割り切ることです。 たとえば、みんなが残業していても具合が悪ければ早く帰る。そこで白い目で見られても、「スミマセン」でいいと思います。適当に用事をでっち上げておけばいいのです。 軽い鬱で、私のススメで通院を始められたクライアントさんにこう申し上げたところ、その人は、 「自分はレガッタの経験があるので、言われることは良くわかる」 とおっしゃっていました。レガッタでも無理に漕げば体を痛めるだけなんだそうです。 鬱はコーチングの守備範囲外のはずです。もちろん、鬱はある程度ひどくなると私の手に負えません。しかし、私自身も軽い鬱は経験しており、十分理屈が通じる軽い鬱なら、私にとっては守備範囲なのです。軽い鬱でさえ忌み嫌っているようでは助言者として役に立たないと思います。こうも申し上げておきました。 「鬱はなった人でないとわからないですよ。○○さんも将来誰かをケアしてあげてください」
![]() 今月は月初から順調に新規のクライアントさんを獲得、3週間で6人です。 6人のうち5人に共通しているのは、それぞれ深刻な悩みを持っているということ、そして、それぞれが十分充実した自己基盤を持っているので、その悩みとは十分に戦えて、しかも克服も早いだろうと予想できることです。 たとえば、失業している上に離婚もしている、という人が仮にいたとすれば、悩みと戦うには自己基盤がたいへん厳しいと言わざるをえません。クライアントになっていただいた方々は、悩みはあるものの、職もあり幸せな家庭もあって、悩みと十分戦えると言えるのです。 悩んでいる人はたいてい減点思考で、悩みしか見えていませんから、まずカウンセリングでお付き合いして、ものの見方を加点思考に変えて行きます。たとえば五体満足は減点主義で言えば当たり前ですが、加点主義でとらえれば素晴らしいことです。現状は確かにピンチだが、今いる地点は十分アドバンテージがあり、今持っているものも十分素晴らしいということをまず認識してもらうわけです。 その次に私の人生経験に基づいて、大体の方向性をコンサルティングします。相談に乗らせていただいて一緒に解決方法を考えるというスタイルをとります。 こうしてコーチングと称するサービスのなかでカウンセリングとコンサルティングを縦横に駆使するのが私のやり方です。 こんなのはコーチングじゃないって?そうかも知れませんが、それでいいと思っています。クライアントさんが必要とするサポートをすればいいのであって、それがコーチングであろうがなかろうが、そんなことはどうでもいいのです。しかし、決してコーチングはゼロではありません。コンサルティングをカスタマイズするためには、絶対コーチングが必要なのです。 私のやり方はこうした独自路線なので、世間でコーチと称している人たちのハナシは大して参考になりません。だから同業のコーチたちとはほとんど接点がないし、あまりいい思い出もありません。はっきり言って、コーチという人種に少々偏見があるのです。それよりは、異業種交流会に出かけていっていろいろな話を聞くほうがタメになると思っています。
![]() 赤福の偽装事件の報道を読むにつけ、 「出来心でやってしまった」 とは程遠い実態であるな、と思います。むしろ周到に計画し、長年にわたってシステム化されたもので、経営陣は知らなかったなどという言い訳は絶対通らないでしょう。とくに先代の会長は積極的に関与した確信犯であるはずです。 積不善の家には、必らず余殃あり 作業をしている人には絶対後ろめたい、楽しめない気持ちがあったはずで、それをカリスマという圧力で丸め込んで、長年やってきた。その悪業が噴出したと言わざるを得ません。私ごときが「悪業」という言葉を使うのは正直抵抗あります。しかし、長年ウソで固めてきたのは事実です。 谷口雅春先生の著作にぴったりな箇所がありました: もし諸君が少しでも自己の内なる「完全理想」の批判に訴えて、やましいような行ないをしていながら、社会からやんやと持上げられ、毎日の新聞に大見出しで書かれ、あるいは高位高官にあげられ、あるいは大富長者になるならば、諸君自身は内部の「完全理想」の声として魂の奥底から、自分自身は「ニセモノ」であるという批判をきくであろう。そのようなとき魂の奥底には必ず何か喜ばない暗いものがあるに違いないのである。その暗い影は結局魂が物質に屈従した部分を示すのである。物質の分量がいかに多くとも、もし魂がそれによって暗く陰影づけられるなら、それだけ諸君は自己の生命が敗北したのである。生命は物質を超えるか、物質に屈従するかいずれかである。生命が物質に屈従した時、そこに集められた物質の量がいかに多くとも、それは味方を敗北せしめた敵軍の数が多いということにすぎないのである。 かくの如きとき、我々の「内部理想」は、霹靂の如く大声叱呼して「汝は大なる失敗者である。汝の獲得したるものは生命ではなくして、累々たる屍にすぎないのである」と告げるであろう。その魂の宣告を諸君は内よりきく時、形の世界においては、世間から賞賛され、周囲から持ちあげながらも自分自身の敗北を認めずにはおれないのである。自分は実につまらないことをしたのである。魂の伸びる機会に魂をけがしたのである。物質を支配する代りに物質の奴隷となったのである。そういう感じが深く深く魂の奥から責めるであろう。 『青年の書』 谷口雅春 1964年 日本教文社 こうした思いを長年放置してきた結果が、ああいったカタストロフィーとして噴出したのでしょう。人間は清廉潔白だけではない存在です。時には法も犯す。守るに値しない法だってたくさんある。しかし生業の根底をウソで固めたら、やっぱりそれは因果応報として返ってくるということです。 「人の振り見て我が振り直せ」と言います。コーチングをやっていく上での誠とは何か。自分はこれでいいのか。赤福の事件はホントにいろいろ考えさせられます。 |
|||||||||||||||||||||
950 志は不遇の時期にこそ立てるもの 949 LASIK 948 親方スタイルと現場監督スタイル 947 森を十分俯瞰する 946 被害者ではなくクレーム処理係と考えよう * 945 指摘されなかった良いところに焦点を当てる 944 叱責のきつい相手と付き合う法 943 想いが強み 942 これからですよ、十分戦えますよ 941 想いを持つには自分の価値に気付くことが必要 * 940 武士道的組織論 939 水たまりの水 938 才能は欠落 937 挙手の求め方 936 受講態度の悪い人 * 935 本音を打ち明けたい人になるには 934 減点主義の毒消し 933 日創研の自己啓発セミナー 932 ボス・マネジメント(ボス・マネ) 931 イヤな相手はこう躱(かわ)そう * 930 会話術に拘泥せず、加点主義を身につけよう 929 引き寄せの法則の扱い方 928 シークレット 927 チャレンジという概念 926 自己承認に長けた人格 * 925 語ってもらってまず切実さを理解する 924 批判・叱責に強くなるためには 923 自分に自信が持てない人 922 人はどうして承認が必要なのか 921 聖人とか悟った人というのは * 920 大本営方針 919 雑誌SPA!のバイト特集 918 スピーチは心ここにあらずの聴衆を引き込むもの 917 志の欠落は否定形 916 死守しなければならない原則 * 915 アイスブレーク 914 他人にどう思われるか、という心配 913 敢えて組織のお荷物になろう 912 独自路線 911 人の振り見て我が振り直せ * 910 陰ながら応援してますよ 909 コーチングは切実な想いのみをサポートできる 908 ストレスを感じたらその時点でガス抜きをする 907 悩んでいる人が落ち込む陥穽 906 この際社会勉強のつもりで行ってみませんか * 905 3時間のセミナー 904 悩みと夢 903 『変なおじさん』というギャグ 902 新婚さん 901 積極心とは *** コーチングを受けてみませんか *** コーチングとは(私見) *** 社会人のためのカウンセリング *** カウンセリングとコーチング *** ビジネス・コーチング入門 *** ライフワーク・コーチングの奨め *** オーケストラ再生のオーディオ *** オーケストラ録音を聴く |
|||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||
All copyrights reserved | 2006 Yoshiaki Sugimoto |