◇禁転載◇
三、末 路(2) |
---|
美 吉 屋 五 郎 兵 衛 |
|
平 八 郎 父 子 を 隠 匿 す | |||
与 力 内 山 彦 次 郎 平 八 郎 父 子 の |
是より先き官五郎兵衛が年来大塩邸に出入せるを知り、乱後捕へて訊問を下したれども其実を得ず、五郎兵衛を町預として釈放し、而も常に其挙動を注意せる際なりしかば、必然平八郎父子を隠匿せるものならんとし、立入西組与力内山彦次郎○城代屋敷に出入りして諸事を弁ずるを立入といふ、に命じ、密に五郎兵衛を糾明して其実を得たり。是に於て城代目付時田肇家中武芸に名ある者岡野小右衛門・菊地鉄平・遠山勇之助等八人を率ゐて捕縛方となり、抽籖を以て進入の順序を定め、出来得る限り父子を生擒すべきを約し、各々半棒を準備し、廿七日丑ノ刻彦次郎と捕縛の手続を協議せしに、 |
所 在 を 偵 察 す | |||
城 代 家 臣 等 彦 次 郎 | 彦次郎先づ同心四人と共に油掛町会所に赴き、情況を探り、之を報告するを以て、報告次第捕縛に著手すべきことを求めしかば、肇等之を諾し、部屋目付鳥巣亥四郎を彦次郎一行に加へ、注進の役に充てたり。寅ノ下刻過肇等亥四郎の報告を得て、本町五丁目会所に至り、更に信濃町 ○油掛町の南に接す、今の靱南通一二丁目是なり、会所に至るや、彦次郎五郎兵衛宅の略図を開きて、平八郎父子の潜伏せる隠居所を示し、彼等の剃髪せるを告げ、且つ曰く、庭口を追手とし、裏の抜路次を搦手とし、一行両手に分れ、先づ五郎兵衛の妻女をして密に平八郎に向ひ、五郎兵衛預の事につき、家財取調のため役人出張せり、暫く抜路次より脱出ありたしと言はしめ、其出づるを待ちて之を捕へんと。 |
変 と 捕 縛 の 手 続 を 議 す | |||
城 代 家 臣 彦 次 郎 等 美 吉 屋 を 囲 む |
鉄平勇之助之を難じ、平八郎若し五郎兵衛妻女の言を聞かば、捕吏来ると為し、或は自刄する恐あり、直に闖入して縛するに如かずといひしが、遂に彦次郎の説に從ひ、卯ノ下刻頃別れて五郎兵衛宅を囲み、小右衛門鉄平等四人及彦次郎同心二人は追手に進み、肇勇之助等五人及同心二人は搦手に向へり。 |
| 平 八 郎 父 子 自 殺 す
平八郎妻女の声を聞き庭の小路次を開きしが、捕吏の来るを見て直に之を鎖し、之と言語を交換すること再三、鉄平来り見て時の遷延するを恐れ、小路次を潜り、半棒を振つて隠居所の雨戸を破壊するや、火気忽ち破口より噴出せり。
| |