掘り起こしのコーチング
085



とある方のコメントです。

・・・特に、ちゃんとしたコーチングセッションではない日常の場(応用局面)では、クライアント側にさほど目的意識がない場合が多く、オープンクエスチョンばかり発していると、「試されている」感じも出てきてしまうようです。強いコーチングも必要だと思います。あくまでもコーチングマインドに立った上でですが。
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仰せですが、ちゃんとしたコーチングセッションでも強い問題意識が感じられない人はいます。もちろん当初○○したい、ということでコーチングをお受けするのですが、やっていくうちに何か違うんじゃないか、と本人さんも私も感じ始めた、なんてことはよくあります。なんと言うか強い願望が言外にただよって来ないのです。しかし代金は頂戴しています。どうしましょう?

そんなクライアントは相手にしないで断わる、というのもひとつの選択肢でしょう。しかし目標を見失ったときこそ、コーチの伴走の意義があると思います。ですから、私はクライアントからの辞退がない限り、コーチングは継続すべきだと思います。私はこんな場合以下のようにアプローチしています:

・「まず願望を持ちましょう。強い願望を持てば半分は願望が叶ったみたいなものですよ
 と説得する。

『ソース』を読んでもらう。と言って一挙にやりたいことが決まることはまずありません。

・来週1週間であなたは何を成し遂げたいですか。仕事は?プライベートは?
 と、問いかける。

こうして新たに願望を掘り起こして行きます。

テーマの仕切り直しはときどき発生します。掘り起こしは必要です。そしてこれをジャッキ・アップするわけです。ジャッキ・アップとは車の車体をジャッキでそろそろ持ち上げる、あれです。ジャッキ・アップにも同じ問いを使います。

・来週1週間であなたは何を成し遂げたいですか。仕事は?プライベートは?

掘り起こしたテーマが急激に進むことはありません。しかし、3ヶ月の1クールを振り返ったときに案外進んだな、と思っていただけるのなら、掘り起こしのコーチングは成功でしょう。

掘り起こしのコーチングは私が標榜する「強いコーチング」のバリエーションでもあります。意欲のある人はコーチングできて当然、意欲イマイチの人を軌道にのせることこそ、コーチングの本分ではないだろうか?

オートクライン
084



コーチング用語「オートクライン」(autocrine)はかなり特殊な言葉です。にもかかわらず、コーチングのセミナーでは自明のごとく使われているのには納得がいきません。もっと解説があって然るべきだと思います。

私の知識で解説しますと:

医学用語のホルモン分泌には2つの形態があって、それがパラ分泌(パラクライン)と自己分泌(オートクライン)です。1つの細胞が出したホルモンが他の細胞に作用することをパラ分泌(パラクライン)といいます。これに対し1つの細胞が出したホルモンがその細胞自体に作用することを自己分泌(オートクライン)といいます。ちょうどコーチングで、クライアントが自分で話して自分で気づくのに似ているのでこの医学用語がコーチングの専門語として取り入れられたというわけです。

とにかく自分が語った言葉はなにがしかの効果を自分自身にもたらします。

このメカニズムについてはトラインの名著が参考になります。
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私たちは心の磁石的力を称して「想念の力」(force of thought)と称するのであるが、この「想念の力」が作用する法則と、大自然の「類は類を呼ぶ」という法則とは、一体なのである。私たちは間断なく「可視的世界」と「不可視の世界」から、自分自身の想念に最も近似せる力および状態を自分自身に引き寄せつつあるのである。

一切のことは、それが可視的な形に「表現」または「実現」される以前に「不可視の世界」に存在するのである。その意味において「不可視のもの」こそ真実に存在するのであって、かえって「可視的な形相(けいそう)」は無常なる非実在とも言いうるのである。「不可視のもの」は原因であり、「可視のもの」は結果である。「不可視のもの」は永遠であるが、「可視のもの」は移り変わり、須臾(しゅゆ)にして変化するものである。

あなたが何を考えるにせよあなたの想念する言葉のひとつひとつは、あらゆる可能な方向に、あなたにとって言葉通りの価値を持っているのである。あなたの肉体の力、あなたの心の力、あなたの事業における成功、あなたの交友から来る悦びなど、すべてあなたの想念の性質いかんに依存しているのである。・・・あなたがいかなる気分の中に、あなたの心を置くにせよ、あなたの霊はその気分に相応するところの「不可視の要素」を引きつけつつあるのである。

(中略)

「言葉の力」というものは、文字通り科学的に力が存するのである。我々は想念の力をもって創造力を発揮することができるのである。発音されたる言葉は、「内部の言葉」の働きの外部的表現にほかならない。だからある意味においては、声に出した言葉は「内部の言葉」すなわち「想念」が一定の方向に向けられ、焦点を定めて狙い打ちするような作用を持っているのである。この集中作用によって、言葉は方向を与えられるのであって、言葉の力が外界に表現され、物質的に具体化するためには、まずこの集中作用を必要とするのである。

『無限者との協調』 ラルフ・ウォルドー・トライン 1896年 谷口雅春訳
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いずれにせよ、口にした言葉は「想念」が一定の方向に向けられ、焦点を定めて狙い打ちするような作用を持っています。口にした言葉はそれ自体が力を持つわけです。「想いを口にする」・・・これこそが自分の考えを整理し、実際の行動を起こす秘訣です。人間はそのようにできているのだと考えますが、いかがでしょう?

そしてこの働きを意識的にサポートする手法がコーチング、ということですね。

答えは上司のなかにあり
083



このタイトルを見て、キケン思想の持ち主だ、と思われた方もいるのでは?コーチングにかぶれている人ほど、「部下のやる気を引き出すのがコーチング」だから「答えは部下にあり」という刷り込みがキツイのです。

では答えは部下のなかにあるのでしょうか。

ビジネス・コーチングは大前提として

・組織の構成員は組織の方針・目標に忠実でなければならない

のです。だってそうでしょう。売上10パーセントアップが目標、と言い渡されて、いや反対です、せいぜい現状維持がいいところでしょう、ではハナシになりません。そんな無茶な、をなんとかするのがビジネス・コーチングです。じゃあ、10パーセントを達成するにはどうすればいいか、で始まるのです。

ここまでは答えはトップまたは上層部にあり、ではないですか。

さて、中間管理職のあなたはどうしますか?あなたがこの方針を下達しても、部下はそんなの無理です、というかもしれません。また声に出して反論しなくても、白けているかもしれない。

この状態で、答えは部下の中にあり、なのですか。違うでしょう。

「ねぇ、君はどうしたらいいと思うかね」ですって?そんなものアンタがまず考えて見せなさいよ、と部下は思うはずです。

上司は「自分はこうすべきだと思う」とか「こうするしかないと思う」とかいった、方針・目標をブレークダウンした戦術を提案できなければなりません。

どうですか?これでも「答えは部下のなかにある」のですか。

で、具体案の擦り合わせ、これは現場の担当者である部下の意見を大いに取り入れなければなりません。でも取捨選択の判断はあくまで上司ですよ。

つまり、モチベーションの低い組織であっても、モチベーションの高い権限委譲型の組織であっても、答えの大半は上司にあり、実際問題の擦り合わせに「コーチング・スキル」を使う、に過ぎないのですよ。

ビジネス・コーチングとはこうしたもので、つねに上司が明快なコンセプトを部下に提示し、コーチングスキルによって、このコンセプトを部下に浸透させなければなりません。そして部下に指示するのではなく、部下に質問しながら、部下に「いついつまでにやります」と言わせることによって、部下のコミットメントを取り付けるものなのです。

どうですか、「答えは上司のなかにあり」でしょう。上司は部下の言うことに耳を傾ける柔軟さ、すなわちコーチング・マインドを持つ必要がある、というだけのハナシです。

コーチング講座でやってるような「オートクラインを基本としたコーチング」なんかものの役にも立ちません。ビジネス・コーチングは本来のコーチングとは異なる、コーチングの亜流です。「コーチング・スキルを使った説得術」というのがその実体です。

ビジネス・コーチングに馬鹿高いセミナーがあります。こんなものに大枚はたく人の気が知れません。この程度のことは本を読んで自分で工夫できるハズです。

オートクラインだけじゃ弱い
082



「オートクライン」って知ってますか?昨今言葉だけは知っているという人は多いでしょう。要は自分で話して、自分で気づくことです。

コーチング講座で教えられるのは、コーチングはオートクラインに根ざしたコミュニケーションなので、質問こそコーチングの真髄と教えられます。そしてオープン・クエスチョンがいいのだそうです。

否定はしませんが、初心者はオートクラインのみをあてにしたコーチングをします。「私訊く人、あなた答える人」と言うわけです。この手のコーチングは往々にして弱々しく、馬鹿馬鹿しくて聞いてられないことが多いです。

喩えて言えば、オートクラインのみのコーチングはクライアントが独りで鋸を引いていて、引く力のみで切っているという感じです。コーチは掛け声だけであるわけです。

コーチングはレシプロ(相互)にテーマを増幅させ、深めるのが理想です。このためにはコーチも大いに意見を言えばいいのです。ただ、意見を言っただけでは押し付けになってしまうので、「・・・と思うが、あなたどう思いますか」とやればいいのです。クライントの意見はコーチの意見によって増幅されます。そしてクライアントは増幅された意見をさらに増幅させるわけです。

喩えて言えば、コーチとクライアントの2人で鋸を引いて、コーチの押す力とクライアントの引く力で同時に切る、というのが力強いコーチングであるわけです。

ということはコーチは何事にも「叩き台」になりえるような定見を持たなくてはならないのです。しかし、定見はあくまで「叩き台」であって、「解」ではありません。通常「解」はコーチの「叩き台」より優れたものであるはずですが、「解」=「叩き台」のこともあるでしょう。

クライアントの言うことは、これまた「叩き台」であって「解」ではありません。クライアントの出してきた「叩き台」がコーチの持っている「叩き台」よりもまずければ、コーチは自分の「叩き台」をすかさずぶつけるべきです。こうしてまた新しい「叩き台」をクライアント・コーチの共同作業でつくる、この繰り返しが力強いコーチングであると思います。

もちろん私はこの「力強いコーチング」を標榜するものです。弱々しいコーチングをコーチングだと思っている人がいたら、こんなのはコーチングではない、と言うことでしょう。たとえばコーチング講座の実習で、「力強いコーチング」をやったら必ず批判されること必定です。

つまり、「力強いコーチング」はコーチングの基本を超越している、というわけです。「コーチングの基本」は身につけたらすべからく忘れるもの、すなわち文法みたいなものと考える次第です。文法に拘泥していてもいい文章は書けません。要はいいコーチングをすればいいのではないでしょうか。

アドレス間違い
081



あ〜、エラーだ・・・

体験コーチングの依頼に返信をかけるとたまにこれがあります。私のサイトではCGIの入力フォームを使ってますので、アドレスはちゃんと入れてもらうしかないのです。そのため入力フォームのすぐ横には「間違っていると返信不能です。十分ご確認願います」と特に書いているのです。

それでも間違う人がいるのです。

毎度、エラーが出るとどうしようか思い悩みます。電話をかけて追いかけたらいいのです。しかし電話をかけて追いかけても、それがクライアントさんとなって以降お付き合いが続いているケースは皆無なのです。

・・・ということで自分のアドレスが正しく打てない人はクライアントとしては「むずかしい」ということが経験的には実証できているわけです。

したがって今はアドレス間違いでエラーが出た場合には、「放置・静観」で臨んでいます。どうしても私にコーチングが必要であればまた連絡があるだろう、ということで。これまた再び連絡あったためしがないのです。

ただ、やはりエラーがでるたびに「どうしようか」と思わないことはありません。けれど、どこかで割り切りがいるのは確かです。
100 価値観の調整
099 コーポレート・コーチング
098 私がコーチングを始めた頃
097 インターネット
096 5連続セッション

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095 ライフワーク
094 「ワカル」ことではなく「カワル」こと
093 コーチング・スキルとコーチング
092 不安は忘れるに限る
091 第3の場

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090 落下傘降下にはコーチング
089 ビジネス・コーチングは忍耐
088 落下傘降下
087 スカイプ
086 きっと、よくなる

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085 掘り起こしのコーチング
084 オートクライン
083 答えは上司のなかにあり
082 オートクラインだけじゃ弱い
081 アドレス間違い
*
080 消費者としての観点しか持たない人
079 ニーバーの祈り
078 予想外の展開
077 コーチングにならないケース
076 自己肯定と自己否定

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075 ビジネス・カウンセリング
074 切り返し
073 承認
072 「考え方を変える」「行動を起こす」
071 未完了感

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070 思い込みを解体する
069 民度
068 環境を一変する
067 パラダイム
066 補助線

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065 朝のコーチング
064 変わりたい、でも変われない
063 知らしむべし、拠らしむなかれ
062 岡目八目
061 迷いの払拭

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060 自己受容
059 自分探しのパターン
058 ビジネス・コーチングの要諦とは
057 和顔愛語
056 大善・小善

*
055 間のもたせ方
054 クライアントと友人
053 ビジョンを持って後ろ向きに
052 寛大にして過酷な請求をなし給わず
051 自分探し(続き)


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