自覚と開き直り
245



上司に始終クビだと脅かされている → 結果が出せない → 追い込まれる → 鬱

このパターンは多いです。職を失うのではないかという恐怖感で精神的に極度に追い込まれ、もう危ない、といったところで私に連絡を取って来られるのです。とくに養うべき妻子がある人ほど深刻です。きっと世間ではもっともありふれたケースではないでしょうか。

ありふれたと言っても本人にとっては地獄の苦しみなのです。夜寝ていても目が覚めるし、気ばかり焦るが、かえって頭が働かない。私も経験あるので、よーくわかります。

こういったケースで共通しているのは、会社が物神化し、トーテムポールとなっているということです。会社というのは個人が自由意志で参加し、個人が自己の生活のために利用するものです。それなのにこれほどまでに会社に痛めつけられて、支配されているのです。完全な奴隷状態であると言わざるを得ません。にもかかわらず、会社にしがみつこうとするのは、考えたら本当におかしなことです。

メンタル・ヘルスに無知な人が多いのも共通しています。仕事して肉体的にけがをしたら労災で、労基がとんできて、おおごとになります。しかし、精神的な外傷の認識が欠けています。自分は根性が足りない、と思いこんで根性で切り抜けようとします。精神的な外傷というのは肉体の外傷以上にやっかいで直りにくいものです。本人が精神的な危険を感じるのなら、事情はどうあれ、それは本人にとって真実です。緊急避難的には休業です。まずは休んで立て直すことですね。

しかし、単なる逃避では問題は解決しません。根本的に克服したいのであれば、処方箋は基本的に2つ、「自覚と開き直り」です。精神科や心療内科では「自覚と開き直り」は教えてくれません。自分が病人と思う方にはおすすめしませんが、自分が健常者だと思うのなら、「自覚と開き直り」あるのみです。

・暗示にかかって自縄自縛していることに目覚める

サーカスのゾウというたとえがあります。子ゾウのときから杭につながれてきた。杭は子ゾウのときは力が足らず、抜けなかった。だから、杭は抜けないものと思いこんでしまった。おとなのゾウになって、杭を引き抜く体力があっても、杭につながれたままでいる、というものです。これほどまでに会社に支配されているというのは、サーカスのゾウそっくりだ、と言わなければなりません。

・会社を利用してやろう、利用されないぞ、と開き直る

大宇宙に養ってもらってるんです。なるようになって結構と思いましょう。命までくれと言わないでしょう。クビならクビでいいじゃないですか。クビになるまでいて給料はもらい続けましょう。決して自分から自分に引導を渡してはダメです。退職金は会社都合にして目一杯会社から取れるものは取りましょう。

仕事とは自分の個性を生かして、のびのびとやるものです。それができない会社なら未練はないではありませんか。「自分の個性を生かして、のびのびとやる」ことができない会社で、運が開けることも、幸福になることも絶対にないです。クビになるなら願ったり叶ったりです。

・・・とここまで開き直れたら、意外に事態はどんどん改善していくものです。まず自分に闘争本能が戻ってきます。上司にひどいことを言われても平気になります。そうするうちに、だんだん上司がひどいことを言わなくなり、愛想良くなってきます。不思議なことですが、自分の自覚と開き直りが環境を徐々に作り変えていくのです。

用件と情緒
244



まじめに仕事しているのに周囲の評価が最低、と言う人がたまにいます。先日連絡を取ってきた看護士さんはプリセプターとして新人を指導・教育しているのだそうですが、新人から嫌われ抜いている、とのこと。ご本人はどうしてよいかわからず、追いつめられている様子でした。

話を聴いてみてわかったのは、この人は仕事中に「用件」の話しかしない、ということです。話し方はわりとせわしなく、確かにこの口調で用件の話しかしなければ「挑発」しているに等しいな、と思いました。

職場の会話は2つの要素から成り立っています。つまり「用件」と「情緒」です。「情緒」というのは、

「暑いですね」
「お久しぶりですね」
「忙しそうですね」

と言った。直接仕事と関係のない話です。この人には、話をするときはこの「情緒」をちょっと前置きして用件に入るようにお勧めしました。

「なるほど、無駄話を混ぜるのですね」
「いや、無駄話じゃなくて、潤滑油ですよ、潤滑油」
「はぁ、アハハハ(笑)」

この笑いが出るならまだ見込みはあります。

情緒の前置きは上司相手でも使えます。こうなります・・・

「暑いですね」
「暑いねぇ」
「ところで例の件ですが・・・」

情緒を語るときはゆっくり時間を取って、体全体で親しみを表すのがコツです。

達人ほど情緒表現が魅力的で、情緒表現だけで大なる感化力があるものです。この感化力が無形の仕事をするのです。この理をわからなければいけません。

素性を明かす
243



初対面の相手に悩みをうち明ける場合、自分の素性を明かすのにはなにがしかの抵抗があるのは事実です。とくに社会的な地位のある人によっては「なにがしか」どころではなく、たいへん抵抗があるものです。

ごく少数ですが、今まであったパターンは、

@偽名、匿名でコンタクトをとってくる
A苗字(姓)だけでコンタクトをとってくる

というのを経験しました。

偽名・匿名でコンタクトを取ってきた人には、「それでは相手はできない」と告げたところ、すぐ実名でのやりとりになり、今もおつきあいが続いています。苗字だけの人も同じで、無事クライアントになっていただいています。

今回も、苗字だけでコンタクトを取ってきた方のコーチングをお引き受けすることになりました。名前をうかがったのですが、生憎漢字を聞き出すことを忘れました。それで、適当に字を当てて、その名前でインターネット検索をかけたところ、多くのページが検索でき、間違いなくご本人であることが確認できたのです。アグリーメントを作るにはフルネームが必要ですね。

ところが、「検索してお顔も拝見しました」と本人に伝えたところ、この人が「コーチングを辞退する」と言い出したのです。

「いろいろ胸襟を開いて話したのに、なぜ周辺を嗅ぎ回るようなことをするのか。漢字名がわからないなら直接聞いて欲しかった」

というのがこの人の言い分でした。

周辺を嗅ぎ回るなんてとんでもない。検索に使った時間はせいぜい1分ほどです。こちらは、

「あ、出てるな」

と思っただけだったのですから。しかしそんなことを説明しても、検索されて自分の顔も見られてしまったことに恐れを抱いたそうです。結局、フィーリングが合わないという理由で、この人はあくまで、辞退を貫きました。フィーリングが合わないと言われては、どうしようもありません。理屈以前の問題です。

今回自分の非はどうも思い当たりません。相手の問題です。理由にもならない理由で、こちらはやりきれなさ一杯ですが、相手のあり方を嘆いてみてもはじまらない。

だれも自分のことが手一杯で他人のことは気にしてないのです。しかし、ことほど左様に自分の素性を明かすことに抵抗感を感じる人もいるのです。助言者として立つ人は、十分このあたりをわきまえておく必要がありそうです。

キヨ
242



夏目漱石の『坊ちゃん』にキヨという下女が出てきます。

「・・・キヨは何を言っても褒めてくれる」とありましたが、私は若いころは、

「婆さんに褒められてもなぁ」

と思ったものです。今はかなり感じ方が変わってきました。人生折り返し点を過ぎますと、いつも「承認」してくれる存在は本当に貴重です。「ちょっと、褒めすぎだよ」と思っても、それは気落ちした時に基礎体力となって効いてくるのです。

逆にいつもけなされていたら、いかばかりか。気落ちした時はボディー・ブローとなって効いてくることでしょう。とくに男性の場合、女性から批判されると思いのほか気力が萎えるものです。「悪妻は一生の不作」というのは、こういうことを言うのでしょう。

私の知人でなにかというと褒めてくれる、応援団のような方がいらっしゃいます。ありがたいことです。あからさまな「承認」をしても「臭く」ならない、これが人徳というものでしょう。「承認」だけで問題解決力のないコーチングは空しいです。しかし、コーチングの最後の仕上げはやっぱり「承認」です。

感情のコントロール
241



私に連絡を取って来られる人のなかにときどき、

「自分の恐怖感をコントロールできない」

という人がいます。たとえば威圧的な上司に無茶苦茶に傷つけられてしまうとか、強烈な劣等感のため自分に自信が持てない、といった人です。こういった人は、

「沸き起こってくる恐怖感はどうしようもない」
「どうしようもないから苦しんでいる」

と意外に頑固に自分の感情を肯定する傾向があります。その割には、他人の評価を大変気にして、いさかいを避け、自己主張が下手です。一言で言って、内向的で相当難しい相手ですが、あなたならどう助言してあげますか?

確かに一時的に恐怖感が沸き起こって、憂鬱になるということは誰しもあります。たとえば誰かから自分を傷つけるようなことを言われた場合、ある程度のショックは避けられない。

しかし、受けたショックから立ち直るのに数日かかる人、半日ですむ人、さらには1時間ですむ人がいるのは事実です。結局「立ち直る」というのは、恐怖感をどれだけの期間、自分の感情として選択するかということに尽きるわけです。つまり心の持ち方ですね。

心の持ち方は努力と練習あるのみです。恐怖感が起こるから、恐怖感にとらわれるというのでは、子供と変わりません。

「あなたの言ってることは子供と変わらないよ」

こう言ってしまっては元も子もありませんから、やんわり気付いてもらうようにもって行きます。ポイントは自分の感情は自分で選択するものであるということ、そして自分の感情を自分で選択するためには知恵が必要だということです。

たとえば、相手が自分を傷つけるような暴言を吐いている場合、唯々諾々と無防備で聴いているというのでは、明らかに知恵が足らないと言うしかない。子供はそうです。

口ではハイハイと言っていても、

「あなた全くおかしなことを言ってますよ。哀れな気の毒な人ですね」

と思って聞いたとすれば、ダメージは著しく軽減するでしょう。しかし、こう思えるためには、それなりの理解力・判断力が要るのです。結局、感情を克服するのは知恵の力です。感情を克服できないのは、いくら言訳をしても「知恵が足らない」ということに帰結します。要は大人になって賢くならなければ、感情のコントロールはできないということですね。
250 拒絶か黙殺か
249 守破離
248 坊主
247 誹謗中傷
246 ベストを尽くすということ

*
245 自覚と開き直り
244 用件と情緒
243 素性を明かす
242 キヨ
241 感情のコントロール
*
240 横並びの習性
239 いい人と付き合い、悪い人を遠ざける
238 電話口の声
237 どうしたら迷わなくなるか
236 口先だけ

*
235 気管支炎
234 ヤフーの「カウンセリング」
233 よきこと来たる
232 群れられない人
231 愚痴

*
230 「答え」の所在
229 コーチング・モード
228 商業主義
227 起業ネタ
226 一張一弛

*
225 独身者の週末
224 停滞期
223 志を持つ
222 生かされて生きているシステム
221 質問するな、承認せよ

*
220 リコメンデーション
219 子育て
218 逆説のパラダイム
217 宗教的素養
216 前世

*
215 ライフワークをオンする
214 苦労
213 イネビタブル・コーズ
212 損得
211 鷹揚に担がれる

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210 屈託
209 打たれ強さ
208 リフレッシュ
207 長所を認める
206 停滞の時期

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205 アナライザー
204 天球
203 20点を取ろう
202 もっと悪かったかもしれない
201 ホームページは必需品


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