山田準「大塩中斎」34

Я［大塩の乱資料館］Я
2013.7.8

「大塩の乱関係論文集」目次

『大塩中斎』

その３４

山田　準(１８６７－１９５２)　
北海出版社　1937　『日本教育家文庫　第３４巻』 ◇

◇禁転載◇

中篇　学説及教法
　第十三章　著書（４）管理人註

　　　

四、增補孝経彙註三巻　中斎、既に孝を以て人心に存する不学不慮の本性にして万善を貫くものとした。而かも従来の孝経註釈書は字訓文義を解釈するに止り、甚だ意に満たなつた。既にして明の江元祚が編した今文孝経彙註を得るに及んで、非常に之を喜んだ。此書は左の明末三子の註釈書より成つて居る。　朱氏鴻。字子漸　孫氏本。字初陽　虞氏淳熙。字澹然。号道園。　中斎は「孝を以て万善を貫き、良知を以て孝を貫き、太虚を以て良知を統ぶといふ信条の上に立つて居るが。此書を読むに及んで、天地聖人易簡の道、是に於て之を獲たりとなした。既にして其説の姚江王子、及楊慈湖、羅近渓等に本づくを知つた。また明末大儒黄道周の孝経集伝を得て之を喜び、之を彙註に増補し、前の王子、慈湖、近渓、三子の説若干を補入し、時に自己の按語を加へ、併せて之を家塾に刻せんとした。書肆は之を聞いて其の公刊を請ふたので、乃ち序文を作つて之を書肆に授け、公刊せしめたのが此書である。　右は天保五年十一月の刻である。之に洗心洞箚記、儒門空虚聚語、古本大学刮目を加へて中斎の四大著書といふのである。 五、洗心洞学名学則并答人論学書一巻　右学名学則は第十四章に載せた。此書は学名学則を巻首に置き、論学書十條を附載して、儒門空虚聚語の附録としたもので、天保五年十一月家塾の刻本である。 六、古本大学旁註一巻　此書は王陽明の著はせる古本大学旁註に、中斎が補註を加へたもので、明治二十九年東京鉄華書院より刊行せられた。 七、奉納書籍聚跋一巻　此書は中斎が幾多の書籍を伊勢山田神宮附属の豊宮崎、林崎の両文庫に奉納し、其には数篇の跋文を添へたが、之を輯めて刊行したものである。 八、洗心洞詩文 　此は上巻に中斎の詩百五十余首を収め、下巻には洗心洞入学盟誓を首とし、学堂東西掲学名学則等の文章が十数篇収めらる。編者は大阪の人、中尾捨吉といひ、明治十二年の刊行に係る。上巻の首に「論伝」と題して編者の筆に成れる中斎の伝が載せられて居る。其中に記する所に依れば、伊丹に稲川氏といふものがあり、十五歳の頃先生の門に遊ぶ、其家に洗心洞遺稿数篇を蔵す、借覧して之を写し、其の最も後学に益あるもの若干を梓行するといふてある。文は大部分著書其他に散見するも、詩は全く此書に依て世に伝はる。而かも此書の収録に漏れたるもの少からぬやうである。稲川氏の原本は今果してあるか無きか。　石崎東国氏の大塩平八郎伝に依れば、中斎は晩年地水録と云ひ、救荒十種刪略といふ経済書二部を著はせる如きも、今は略す。

石崎東国『大塩平八郎伝』その７６第十一章『大塩中斎』その２８石崎東国『大塩平八郎伝』その５９石崎東国『大塩平八郎伝』その６９

　

中篇　学説及教法　第十三章　著書（４）	管理人註
	四、增補孝経彙註三巻　中斎、既に孝を以て人心に存する不学不慮の本性にして万善を貫くものとした。而かも従来の孝経註釈書は字訓文義を解釈するに止り、甚だ意に満たなつた。既にして明の江元祚が編した今文孝経彙註を得るに及んで、非常に之を喜んだ。此書は左の明末三子の註釈書より成つて居る。　朱氏鴻。字子漸　孫氏本。字初陽　虞氏淳熙。字澹然。号道園。　中斎は「孝を以て万善を貫き、良知を以て孝を貫き、太虚を以て良知を統ぶといふ信条の上に立つて居るが。此書を読むに及んで、天地聖人易簡の道、是に於て之を獲たりとなした。既にして其説の姚江王子、及楊慈湖、羅近渓等に本づくを知つた。また明末大儒黄道周の孝経集伝を得て之を喜び、之を彙註に増補し、前の王子、慈湖、近渓、三子の説若干を補入し、時に自己の按語を加へ、併せて之を家塾に刻せんとした。書肆は之を聞いて其の公刊を請ふたので、乃ち序文を作つて之を書肆に授け、公刊せしめたのが此書である。　右は天保五年十一月の刻である。之に洗心洞箚記、儒門空虚聚語、古本大学刮目を加へて中斎の四大著書といふのである。五、洗心洞学名学則并答人論学書一巻　右学名学則は第十四章に載せた。此書は学名学則を巻首に置き、論学書十條を附載して、儒門空虚聚語の附録としたもので、天保五年十一月家塾の刻本である。六、古本大学旁註一巻　此書は王陽明の著はせる古本大学旁註に、中斎が補註を加へたもので、明治二十九年東京鉄華書院より刊行せられた。七、奉納書籍聚跋一巻　此書は中斎が幾多の書籍を伊勢山田神宮附属の豊宮崎、林崎の両文庫に奉納し、其には数篇の跋文を添へたが、之を輯めて刊行したものである。八、洗心洞詩文　此は上巻に中斎の詩百五十余首を収め、下巻には洗心洞入学盟誓を首とし、学堂東西掲学名学則等の文章が十数篇収めらる。編者は大阪の人、中尾捨吉といひ、明治十二年の刊行に係る。上巻の首に「論伝」と題して編者の筆に成れる中斎の伝が載せられて居る。其中に記する所に依れば、伊丹に稲川氏といふものがあり、十五歳の頃先生の門に遊ぶ、其家に洗心洞遺稿数篇を蔵す、借覧して之を写し、其の最も後学に益あるもの若干を梓行するといふてある。文は大部分著書其他に散見するも、詩は全く此書に依て世に伝はる。而かも此書の収録に漏れたるもの少からぬやうである。稲川氏の原本は今果してあるか無きか。　石崎東国氏の大塩平八郎伝に依れば、中斎は晩年地水録と云ひ、救荒十種刪略といふ経済書二部を著はせる如きも、今は略す。	石崎東国『大塩平八郎伝』その７６第十一章『大塩中斎』その２８石崎東国『大塩平八郎伝』その５９石崎東国『大塩平八郎伝』その６９

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『大塩中斎』その３４

山田 準(１８６７－１９５２) 北海出版社 1937 『日本教育家文庫 第３４巻』 ◇

『大塩中斎』

その３４

山田　準(１８６７－１９５２)　
北海出版社　1937　『日本教育家文庫　第３４巻』 ◇