衆知を集める
260



進化とは粗雑から精緻に移行することです。

企業経営を観察すると、高度成長期の指示・命令型マネジメントよりは低成長期のコーチング型マネジメントのほうが明らかに進化しています。対比して書くと次のようになります。

       
指示・命令型マネジメント    コーチング型マネジメント
時代     高度成長期          低成長期
基調     インフレ           デフレ
時代背景   つくれば売れた時代      周知を集めなくては
                      勝てない時代
主導     製造主導           営業主導
成功体験   成功体験の踏襲でOK     過去の成功体験は失敗の元
マネジメント 指示・命令・外的コントロール 質問による引出し
                      (コーチング)
部下     指示どおり動く        自発的に動く
ストレス   大(軍隊的)         小(クリエイティブ)
効率     低い             高い


つまり高度成長から低成長へ移行し、経営環境が厳しくなることによって、指示・命令型「十把一からげ」の粗雑な方法ではやっていけなくなったということです。この手法は、指示・命令どおり部下が動くわけですが、とてもそんなことでは市場のニーズをつかんで、顧客に満足してもらう、きめの細かい仕事は不可能です。

また、指示・命令型マネジメントでは、個々の部下の判断を排して、上司が判断するやり方ですから、画一的な指示を強制して、それを外的コントロールで「締め上げる」という形をとらざるを得ない。当然部下のストレスは大きく、効率も低い。つまり、指示・命令型マネジメントではあまり衆知を集めるということができないわけです。

できるだけ衆知を集めるためには、外的コントロールを排し、ストレスをなくして意思疎通を良くして、個々のメンバーは自律的・自発的に動くことによってのみ可能になります。

コーチングの研修で、

「外的コントロールが悪い」

ということを言うと、必ず

「いいところもあるんじゃないですか」

という声が聞かれます。しかし外的コントロールというのは「衆知を集める」ということに関しては、決定的に難があり、「粗雑」な方法であると言わざるをえません。衆知を集めた方が勝者となるのです。だから外的コントロールは敗者の手法です。

昨今コーチング式マネジメントが注目され、衆知を吸い上げる方向に来ているのは、それだけ世の中が「精緻」の方向に進化している証左であると考えられます。逆に言えば、精緻の方向に進化するためには、衆知を集めるしかないわけです。

争う
259



グラッサーの選択理論に「外的コントロール」という言葉があります。

ひとが満足できる人間関係を持っていないのは、どちらかあるいは両方が、関係を改善しようとして、外的コントロール心理学を用いているからである。そのような関係からは苦痛がもたらされるので、どちらかあるいは両方が、相手が用いている外的コントロールから逃れようとしている。外的コントロール心理学の表れ方は、致命的な7つの習慣となる。

1. 批判する、2.責める、3.文句を言う、4.ガミガミ言う、5.脅す、6.罰する、7.ほうびで釣る。

以上『選択理論』より

外的コントロールを使う人というのは、一番手ごわい相手です。世間にはまだまだこのタイプが掃いて捨てるほどいます。あなたは外的コントロールを使う相手に強いですか?

このタイプの相手にどう対処できるかで、人間の器量が出ます。人間力の試金石ですね。一言で言ってこのタイプにはやられっぱなしではなく、必ず「争う」という要素が必要です。

人間が生きていく以上、従順に従うだけではダメです。時には、たとえ上司や偉い人の意見であろうと、それに逆らい、堂々と自分の正しいと思う意見を主張する必要があるのです。ただ、その場合は言い方を丁寧にしなければなりません。

他人の心や顔色を気にし過ぎて、争いを避けていたのでは、この手の相手からあなどられるだけです。絶対相手の心をつかむことはできません。

決して激せず、こちらの気合や根性をチラリと見せる、これがコツです。あくまでチラリズムが正解なように思います。議論で完勝したりしては、あとあとしこりを残すからです。「一矢報る」くらいがちょうどいいのです。

外的コントロールに処するキーワードは「争う」です。しかし、断じて喧嘩ではなく、言葉を丁寧に、気合と根性を見せることです。これができる人は例外なくコミュニケーション力があるものです。

人間力は、「争う」ことのできる気合や根性やコミュニケーション力を持ち合わせているかどうかで大体見当がつく、と私は思っています。

アンコーチャブルな人の相手(最終)
258



アンコーチャブルな人向けに作った文面は早速使えて、具合がいいです^^

これまでは、コーチングを辞退して悪態をつかれるか、黙殺して後ろめたさを感じるか、のいずれかであったわけです。なぜこんな簡単なことが思いつかなかったか、と思いますが、何事もそんなものなのでしょう。

昨日も、再就職の応募で、どの職種にすべきかわからないので相談に乗って欲しい、というのがありました。同じ傾向の問いです。もちろんこの文面で処理したのは言うまでもありません。

この人の気持ちはわからないではありませんが、本人がこの程度の自覚では、他人が相談を受けるのは筋違いと言えるでしょう。もちろん、この手の相談はスポットで、初回無料で処理せざるを得ませんから、いくらでも押し寄せてきます。

これまではスポットで無料の相談を人助けと思って、なるべく選り好みをせずに受けてきましたが、考えたらよくやってきたものだ、と思います。「修行」だったと言えなくはないですが。

世の中には、悩んでいるが、自助努力が全然足りないという人が掃いて捨てるほどいるのです。モヤモヤしていて、とにかく誰かに聞いてほしいけれど、その相手がいないというわけです。当然寂しく、暗い人が多いです。気持ちはわからなくはないのですが、相手をしたからと言ってどうなるものでもないのです。人に相談してもだめだ、という理解を深めることには貢献するかもしれません。

私も人助けは積極的にしたいですが、自助努力の感じられる人のみ相手にする、というのは当然許されると思います。コーチングはクライアントに自助努力があること、これが前提ですね

アンコーチャブルな人の相手(続き)
257



「何をしたらよいかわからない」

というアンコーチャブルだと思われる人向けの文面をつくってみました^^

ご連絡いただきまして、ありがとうございます。
残念ながら、「何をしたらよいかわからないから、相談に乗って欲しい」
では話がほとんど深まらないのが実情です。
「Aはどうですか」
「Bはどうですか」
と私が言うだけにとどまります。気休めにもなりません。
「何をするか」は、いままでやってきたこと、好きなこと、得意なことを勘案
して本人が考え出すしかありません。

「○○したいが、どうすればいいか」
ここまで問題を整理されたうえで、再度連絡いただきますようお願いします。


これなら前向きで建設的ですね。これがきっかけで自分のやりたいことを真剣に考えるようになればいいかな、と思いますが、再度連絡を取ってくる人は少ないでしょうね。

アンコーチャブルな人の相手
256



「コーチングではゴールを見つけたい、というゴールもありです」

私は某所の講座でそのように教わりました。しかし、これは正しくないと思います。

コーチングをはじめて2年半立ちます。300人を楽に越える相手を「無料体験コーチング」でお相手してきて、今日ひとつの結論に達しました。

差し迫ったニーズがない上に、自分の人生、これから何をしたらよいかわからない、という人の相手をしても、まず何も出てこない、ということです。話を聴いてあげるだけです。失礼ながら、暗い人ばかりです。

この段階で連絡を取ってくる人は、依頼心が強く、あまりにも自分で何も考えていないのに愕然とすることが多いです。まずは他人に答えを求めようということなのでしょう。しかし、他人が答えを渡すことは絶対無理です。自分でわからないものが、他人にわかるはずがない。

「で、どうしたいですか」

と聴くと返答に窮してしまって答えられない。願望がはっきりしないうえに、差し迫ったニーズがあるわけでもないので当然です。こういう相手に対して、幼児に匙で食事を与える(スプーン・フィードする)ような提案をすべきなのでしょうか。どうもそうは思えません。

差し迫ったニーズがない上に、「何をしたらよいかわからない」は全くアンコーチャブルである、ということです。

今後は書類選考で、こういった相手をオミットするしかないな、と確信しました。アンコーチャブルな人の相手はいままでさんざんやってきました。傲慢なようですが、もう卒業しようと思います。

「○○したい。しかし、どうしたものか」

こういった依頼者のみ相手にすべきなのです。今後差し迫ったニーズのある方、人生に志のある方のみ相手にすることに決めました。

こんな簡単なことの結論を得るのにえらく時間がかかってしまいました。しかし、アンコーチャブルな人の相手をいままでさんざんやってきたことで、人間理解は進んだと思います。無駄ではなかったと確信しています。
300 カウンセリングは愚痴か
299 助言手法にこだわるな
298 閉塞感の中で一歩踏み出す
297 自分の人生は自分で評価
296 「答えはあなたの中にある」というコーチング哲学の功罪

*
295 カウンセリングを切り捨てたコーチング
294 目上は変えられない、自分が変わるしかない
293 つかまない
292 ニーズのない人
291 経営者・管理職は外的コントロール世代

*
290 臨床は財産だ
289 『巨人の星』は外的コントロール
288 コーチングはすぐれて論理的な対話
287 ヒマに耐えられる器
286 選択肢はどんどん捨てる

*
285 インターネットの普及とパーソナル・コーチング
284 プロのコミュニケーターのプレゼンスを学ぼう
283 私のコーチング事始
282 教育商品の限界
281 広義のコーチングとはカウンセリングを組み込んだもの

*
280 方向性をコンサルティングする
279 地獄から抜け出す
278 ネット・カウンセラー
277 自在性
276 沈黙

*
275 配合比率
274 盲目的な従順は人間失格
273 ウナギになろう
272 嫉妬
271 論理と柔軟性

*
270 『千と千尋の神隠し』
269 論理
268 良心に忠実であるということ
267 対話のパラドックス
266 ネット・カウンセラーの市場

*
265 コーチング・セミナーの意義
264 元「外的コントロール」の信奉者
263 外的コントロールなき家庭
262 骨付きの肉
261 外的コントロール

*
260 衆知を集める
259 争う
258 アンコーチャブルな人の相手(最終)
257 アンコーチャブルな人の相手(続き)
256 アンコーチャブルな人の相手
*
255 自分が探しあたらなければ
254 メール
253 ワクワク感の陥穽
252 今の仕事の否定形
251 気管支炎その後


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