コーチングは経済的豊かさの産物
410



スポ根(スポーツ根性もの)アニメの名作『巨人の星』『アタックNO.1』が放送されていたのは、1969年、私が小学校5年の頃でした。

当時は高度成長期の最後の時期で、インフレの時代です。人類が月に行き、大阪で万博が開催されました。世間はまだまだ物質的生活水準の向上を希求していた時代だったと思います。

スポ根アニメに共通するパターンは、

@罵倒・叱責といったストレスで危機感・闘争心を煽る

A恐怖感・危機感をバネにして試合に勝つ

ひと言で言ってスパルタ式です。スポ根アニメでは、試合で結果を出しさえすれば、いかなるストレスや苦痛も肯定されるというストーリー展開になっていました。そしてスパルタ的に厳しい、というのは良いことで、あるべき姿だという考え方が根底にあったように思います。

覚えている1シーンですが、『巨人の星』で主人公の星飛雄馬が巨人軍に入団したてのころ、もたもたしていたら、

「じゃまだ、じゃまだ」

と先輩から突き飛ばされそうになるシーンがありました。これなんかは意味のない厳しさです。そういう発言を後輩にすることによって、お互いにどんなメリットがあるのか疑問だというしかありません。

近年よく引き合いに出される言葉にEQというのがあります。

EQ(Emotional Intelligence Quotient)は、アメリカで理論化された概念で、日本では「感情(こころ)の知能指数」と訳されています。 EQが高いということは、次の3つの能力が高いとされています。

@自分で感情を調整する能力
A対人関係を上手に発達させる能力
B他者の心の機微を敏感に察知する能力

「じゃまだ、じゃまだ」のひと言はEQの観点からみればゼロ点です。

EQが高い人とは、次のような行動をとれる人のことです。

@自分を理解し、他者を理解する。
A状況に応じて臨機応変に目標を設定し、実行する。
B自分の感情と行動を調節し、目標達成へと導く。
C人間関係を上手に構築し、それを維持する。
D人間関係から得られる支援や援助を最大限に活用する。
E自分の力と周囲の力を統合し、目標を達成する。

その結果、今まで身につけたその人個人の能力を十分に発揮し、また、良好な人間関係を構築することで、周囲の人間からの援助や支援が得られやすくなります。EQが高い人物は、衆知を集めることに長けているわけです。その結果その人自身も人生において成功する可能性が高くなります。

ちょっと考えてみれば、円満な人間関係を築くEQの高いやり方というのは、EQの低いスパルタ的なやり方よりもよほど生産性が高いのがわかります。

はっきり言って当時は物質的な生活水準が向上に沿った結果をだすことが至上価値で、EQに対する理解が乏しかったわけです。だから「円満な人間関係よりも結果が全て」の時代だったわけです。

スポ根のような間断ないストレスを乗り越えるのには、驚くべき精神的エネルギーを浪費しなければならないのですが、当時はそういったことはさして意に介さないというのが社会通念だったのです。

しかし、科学技術が発達すると、供給能力がやがて需要を追い越してしまう時代がきます。これがデフレ時代です。つまり物余りの時代です。

物余りの時代は、物質的な生活水準の向上はある程度達成されています。その結果、EQに対する理解も向上しました。手段を選ばず結果さえ出せればよい、という考え方はかえって生産性が低い、ということがだんだん認識されはじめます。その結果、「結果を出すために罵倒・叱責といったストレスで危機感・闘争心を煽る」いったやり方はだんだん廃れて行き、職場で円満な人間関係を維持しつつ、社員の自発的な意欲・発想を引き出す方向に向かいました。

『おしん』の幼いころのような経済的に貧しい社会にあっては、EQどころではなかったわけです。しかし、経済的に豊かになるほど、EQに対する理解が向上し、社会全体としても、スパルタ的なやり方が徐々に廃れて、対話による円満な人間関係が重視されるやり方に移ってきたと言えます。

一言で言えば「粗くたいやり方」から「より精妙なやり方」に変わったわけです。そのほうが衆知を集められるばかりか、みんながハッピーになれるからです。そして対話による円満な人間関係を築いて衆知を集める「より精妙なやり方」がコーチングというわけです。

コーチングが注目されているのは、成熟した社会のEQに対する理解の高さの反映だと言えそうです。

プレ・コーチング
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某社の次長さんとお会いしたときのことです。

仕事の打ち合わせが一段落した後、ちょっとした雑談になりました。

この方は高校生の息子さんがいるのですが、様子を見ていると、日ごろどうもフワフワしていてつかみどころがない。そこである日、思い切って訊いてみたそうです。

「オマエ、将来どうしたいんだ?」

「経営者になりたい」

「経営者?経営者になってどうするんだ?」

「オレは人に使われるのがイヤなんだ」

「・・・・・・」

この方にとってはあまりにも思いがけない回答だったそうです。何か事業をするために経営者になりたい、というならわかる。しかし、とくにやりたいこともないくせに、人に使われたくないという理由だけで経営者になりたいと言う。

少なくとも自分の若いころにはこういった発想は絶対ありえなかった。ここまで世の中変わってしまったんだ、と絶句したそうです。

これが新人類なのです。

核家族で育って、大家族で揉まれたという経験がなく、部活の上下関係で揉まれてきた経験もあまりない。人間関係づくりは苦手です。物質的には、豊かな今の日本で育って、なに不自由なし。そうした環境下で個性重視を謳った民主化教育を施され、ひと言で言えば、勝手気ままで忍耐力に乏しい、と言えるでしょう。

欧米のようにキリスト教という宗教規範があるわけでないので、自己が確立できておらず、根性や気迫にも欠けます。だから自己主張や野心なんかと言っても全然たいしたことありません。一見欧米人的なようで、実は日本の農耕民族の気質も根強く残っています。

ひと言でいうと「欧米人の欠点と日本人の欠点を併せ持った、極めて扱いにくい人種」なのです。

次長さんはさらに続けます。

「実は最近は一流大学卒と言っても、多かれ少なかれこうした傾向があるんです。ちょっとしたことですぐ会社をやめてしまう。どこの会社も頭の痛い話なんですよ」

さて、昨今はマネジメント手法としてコーチングが注目され、数多くのコーチング書籍がコーチングの会話術を扱っています。ではコーチングの会話術はこうした新人類に効果あるのでしょうか。

効果がないことはないと思います。しかし、新人類はもっと手ごわいでしょう。口先だけで生煮えのコーチング・スキルなど跳ね飛ばされてしまうのは想像に難くありません。まして、こうした新人類をコーチング・スキルを使いながら教育して、やる気集団に変えていくのは並大抵のことではないはずです。とはいうものの、新人類をいかに使うかが今日の企業の喫緊の課題なのです。

新人類をコーチングしようとすれば、コーチング以前に周到な環境整備が必要なのは明白です。私はこの環境整備をプレ・コーチングと呼んでいます。では新人類のプレ・コーチングに何をすればよいのでしょうか。追って書き進めてみたいと思います。

予想外に健闘
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4月11日に店頭に並んだ拙著『ネット・コーチングで開業しよう!』ですが、当時はジュンク堂やブック1stで10冊ほど固め置きされていました。1ヶ月経過しますと、固め置きはなくなり(当然ですが^^;)、他の本同様に1冊置きに変わっていました。

しかしアマゾンでは予想外に健闘しているみたいです。「コーチング」で検索すると、5月21日現在7位で、『コーチング・バイブル』(11位)や『コーチング・マネジメント』(17位)といった有名どころを引き離しています。

ちなみに1位は『今日から怒らないママになれる本!―子育てがハッピーになる魔法のコーチング』という本で、この本が売れる理由は若い子持ちの女性が買うからであろう、と容易に想像がつきます。

本の優劣を順位だけで同列に論じることは明らかに不適当でしょうね。

拙著はコーチングで起業を考える人が買うものと思います。今のところコーチングの起業を扱った類書はありませんので、暫くこの調子で売れ続けるかもしれません。

正直なところ、ここまで健闘するとは思いませんでした。うれしい誤算です^^

3周年
407



今からちょうど3年前の2003年5月20日 7:42amに下記のメールを受信しています。

杉本良明 様

この度は、コーチ・トゥエンティワンのプログラムにお申込み・
お問い合わせ頂きまして、誠にありがとうございます。

各種プログラムの詳細につきましては、改めてcoach21担当者より、
メールにてお知らせいたします。

ご不明な点などありましたら、お気軽にお尋ねください。
メール<info@coach.co.jp>又はお電話<03-3237-9781>にて
受け付けております。

プログラムへのご参加を心よりお待ち申し上げております。

なお、コーチの適性がチェックできるテストを以下に添付いたしました。
ご参考になさってください。

また、営業日(月〜金、祝日除く)の関係で、返信が遅れる場合がござ
います。その際にはどうぞご了承ください。
                                 
             コーチ・トゥエンティワン スタッフ一同
---------------------------------------------------------------
株式会社コーチ・トゥエンティワン    mailto:info@coach.co.jp

 〒102-0075 東京都千代田区三番町8-1 三番町東急ビル6F
 TEL:03-3237-9781 FAX:03-5275-0737


この日の早朝ネット・サーフィンしていてたまたま「コーチング」という言葉が目にとまり、問い合わせの入力をしたと記憶しています。これが私のコーチングの濫觴(らんしょう)なのです。

当時インターネット・マーケティングで何か週末起業してみようということで商材を探していたのです。インターネット・マーケティングの教材も買って、その製作者にも相談してみたところ、結局返って来たのは次のようなメールでした。

(前略)

会員さんは、特に偏りはなくて、
例えばシロアリ駆除の会社や、下水管調査や、
健康食品などもありますね。

私のほうからこれを、というよりは、やはり商品や
サービスについてはやりたいものをやられる
ことをお勧めします。

ヒントとしては、

1.ご自身の経験豊富なもの
2.それを、誰もやっていないような切り口
  で売る

というところでしょうか。やはりやったことが
ないことをゼロからというのは
器用な方でもかなり大変だと思いますので、
経験、実績があるものを選択されるのが賢明でしょう。

メールだけで判断するのであれば、
翻訳、あるいは産業機械に関してコンサルタントみたいな
部分を見出せれば、ご経験がいかせるのではないかと
思います。

20世紀のものだとは思いますが、
お客様はいるはずで、何か困っていることが
あると思います。

そこを個人的にコンサルティングしてあげるという
ビジネス、道を、新しくつくることもいいでしょう。

そんなことやっている会社や人はいない、聞いたことがない
ということのほうが商売にはなりやすいものです。

お望みのお答えになったかどうかわかりませんが、
以上ご回答まで。      


当初翻訳業を考えてサイトをつくりかけたりしたのですが、このビジネス・モデルをネットで見つけて、とても刃が立たないと考え、断念しました。その結果、何をしたらよいのか途方に暮れていました。それで、コーチングに飛びついたわけです。

コーチングをインターネット・マーケティングで売るという発想は、誰でも考えると思いますが、徹底的に取り組んだのは私が本邦初、という結果になりました。

私の場合「はじめにインターネットありき」で、コーチングを始めるのもインターネットからでした。その意味では、私自身は「インターネット時代の申し子」みたいなところがあるのです。

あれから3年、『ネット・コーチングで開業しよう!』という本まで運良く出せ、今日に至っています。

ずいぶんと挫折や失敗もあり、泣かず飛ばずで足踏みをして来ましたが、反面実にいろいろな方にお世話にもなりました。しかし、まだ3年しか経たないのですね。過去を振り返るなら息長く10年やらなくては、と考える昨今です。

日本人のDNA
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さかのぼること30年ほど昔になりますが、私の通った高校は進学校でした。

数学の苦手な私は授業についていけず苦しんだものです。と言って一から十まで全くわからないというわけでもなかったのです。授業中にわからないポイントがある場合、当時はこんなことを訊いたりしたら笑われはしないだろうか、という恐怖感があり、手を上げられない。

その結果、わからないことがわからないままになってしまうので、劣等感や未完了感に悩むことになるわけです。これが毎回続くと相当なストレスや恐怖感となって襲いかかってくるのです。

今なら、わからないのは教師の説明が良くないとか、授業料払ってるんだからわかるまで質問しないとソンだ、と居直って食い下がると思うのですけれど、当時はクラスメートから嘲笑されるのが恐かったわけです。

「嘲笑を恐れる」、これは農耕民族としての日本人のDNAのなせるわざです。太古から田植えや稲刈りを集団で作業してきた習性が潜在意識に刷り込まれているのです。

が、ここでよく考える必要はあります。嘲笑された場合、嘲笑される本人は不快で、プライドが傷つくことではあります。ところが、嘲笑するほうは優越感・安心感に満たされていますので、嘲笑された側が迷惑をかけているのでは全然ないのです。それどころか、感謝してもらってもいいくらいです。

こう考えれば、嘲笑されること自体は恐いことでもなんでもないわけです。

さて私に連絡を取って来る人で、他人に嘲笑されることを極度に恐れる人は多いです。

「それは日本人のDNAですね」

私はこう言うことにしています。問題解決の糸口はたいてい、他人がどう思うかを捨象する(捨てる)こと、そして他人から嘲笑される恐怖感を超越するところに見出せるものであるからです。
450 問題意識
449 だからどうなの?
448 人が変わるのには承認が必要
447 95パーセントの承認と5パーセントの問題提起
446 人間は承認を食って生きている

*
445 話好きで世話好きな感じ
444 GROWモデル
443 コーチングの要約
442 ありのままの自分で「居直る」「開き直る」
441 オタクの趣味の延長

*
440 いのちの電話に非ず
439 人の心の機微を理解したサービス精神
438 ハイCP
437 いくら考えてもわからないこと
436 好きでやっている、ということ

*
435 二流でもいいから自分の芸風を確立する
434 無線の師匠
433 信用と誠
432 コーチングの小冊子
431 調子が良すぎないこと

*
430 まだ整理できていない
429 驚くばかりの多様性
428 こじれきった上下関係
427 普通の電話はもう古い
426 コミュニケーションを改善したい

*
425 意見の対立
424 アカウンタビリティ
423 新サイト
422 グランド・ピアノ
421 新ブログ

*
420 口内炎
419 成り行きまかせ
418 アマチュア無線
417 サクラサク
416 早めに真剣に定年後を

*
415 ほめない承認
414 その通り、失礼です^^
413 ムラ社会の価値観
412 どうあってもやりたいこと
411 遥かに民度が上がっている

*
410 コーチングは経済的豊かさの産物
409 プレ・コーチング
408 予想外に健闘
407 3周年
406 日本人のDNA
*
405 ビジネス・コーチングの極意
404 テレビカメラというメタ視点
403 承認が第1ステップ
402 社外の座標軸を
401 言葉の錬金術


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001〜050 051〜100 101〜150 151〜200 201〜250
251〜300 301〜350 351〜400 401〜450 451〜500
501〜550 551〜600 601〜650 651〜700 701〜750
751〜800 801〜850 851〜900 901〜950 951〜999
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